【医療情勢】専門家が連携するチーム医療で、患者中心の医療を実現する

公開日:2014年06月02日

目次

治療の高度化と患者指向の考え方から出発するチーム医療

 がんの治療を受ける際に、安心して治療を受けられること、納得のいく治療を選択できることは、患者さんにとってもっとも重要なことではないでしょうか。治療を必要とする患者さんの持つ事情や環境は、それぞれ異なりますから、喩えそれが定評ある治療でも全員に同じ治療を施すことがその患者さんにとって最良の治療になるとは限りません。患者さんの要望をしっかりと聞き、治療に反映させることが必要です。

 また、技術面でもこの5年、10年で医学の世界は大きく進歩し、個別化医療と言われるような個々の患者さんに合わせた高度で専門的な治療が行われるようになってきました。このような背景から、医師、薬剤師、看護師など各医療の専門職がチームを組んで治療に当たる、チーム医療が推進されています。担当医と患者さんだけではなく、看護師やソーシャルワーカーといったさまざまな専門スタッフが、患者さんのニーズに応えて心身のケアをしていきます。

患者さんを支える、様々な専門家

 こうしたチーム医療は担当医のほか、多くのスタッフの連携によって行われます。医師だけでも、がんの治療を専門とする腫瘍内科医、病気を診断・治療する放射線診断医・放射線治療医、病気の診断を行う病理医、心や身体の辛さを軽減する緩和ケア医、精神腫瘍医、麻酔科医などがいます。それぞれの持つ専門知識を分け合い、連携して患者さんにより良い治療法を提供していきます。

 また、がんを専門とする資格認定制度も増えつつあります。がん看護専門看護師は、専門知識を持って高度な看護を実践したり、患者さんやその家族の相談に乗ってくれるスタッフです。がん化学療法認定看護師は、薬物やその副作用についての深い知識を持ち、難解な化学療法を患者さんやご家族にわかりやすく説明してくれます。がん薬物療法認定薬剤師は、がんの薬物療法に必要な知識、技能や臨床経験を持った専門の薬剤師です。

 近年、注目されているのが、緩和ケア医です。治療に対する不安を聞いてくれたり、精神的ケアも行ってくれます。緩和ケアは、決して末期の苦痛を取り除くためだけの医療ではありません。不安や心配ごと、ちょっとした身体の不調、もちろん痛みも含め、小さなことでもケアしてくれますから、治療の時の心強い味方となってくれるでしょう。

がん治療の分野でもリハビリ専門職やソーシャルワーカーが活躍

 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリの専門職も、治療に関わってきます。理学療法士は、運動療法や電気刺激などによって、身体機能の回復をサポートしてくれます。作業療法士は、園芸や木工などの作業を行うことで、運動機能や精神心理機能の改善を目指す治療を行います。

 言語聴覚士は、言葉を発しようとしても出てこない失語症や、声帯を切除するなどして発声するのに訓練が必要な人、飲み込みの状態を改善するなどのリハビリを行います。これらのリハビリ専門のスタッフは「体力が落ちて移動が困難になった」「寝返りが打ちづらい」といった、身体を動かす動作についての相談にも乗ってくれるのです。

 病院を退院して、在宅医療に転換するための相談を受けるソーシャルワーカーの役割も拡大しています。彼らは、より安定した治療ができるよう、治療費や仕事の悩み、転院や在宅治療への移行の相談やサポートをしてくれます。治療、生活、仕事といった、より現実的な不安や悩みについて相談可能です。

 また、精神的な疲労や苦痛のケアをしてくれる心理士も心強い味方となってくれるでしょう。それから、がんによって離職をしなければならなくなった患者さんのために、社会復帰を支援する団体もあります。

 このように、さまざまな分野の専門スタッフが、患者さんをサポートしています。どんな小さなことでも構いません。チーム医療のスタッフに話をしてみてください。チーム医療は、より納得のできる、安心できる治療方法を見つけ、続けることができるシステムです。

専門性を理解して医療者と接してみましょう。

 治療に我慢しなければいけないことなどありません。辛ければ辛い、苦しいと言っていいのです。専門のスタッフが患者さんの要望に専門知識を持って応えてくれます。治療が高度化して複雑になれば、患者さんにとっては、自分の身になにが起こっているのかわからない状態になり、不安になることがあるかもしれません。

 しかし、医療機関はこういった不安に対応できるような体制を整えています。どんな小さなことやプライベートなことでも気軽に相談でき、納得のいく治療を受けられるように改善が行われています。

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