【QOL(生活の質)】見えない辛さを伝える「うさポンバッジ」

公開日:2014年03月31日

目次

術後や治療中を伝える新たなマーク「うさポン」の考案

y0pbffvn

 「手術後の数ヵ月くらい、すごく辛くて、電車で優先席に座っていたとき、『いい若い者が何座ってるんだ、譲りなさい』という視線を受けることが多々ありました。そこでマタニティマークのような、何か手術後の人向けの目印があったらいいなと、漠然と思ったのがきっかけです」

 こう話すのは、うさポン製作委員会というプロジェクトの発案者であり、3年前に子宮体がんのため開腹手術を受けたというイラストレーターのusapon氏。術後10日で退院してからは、「電車通勤時や職場での仕事中、貧血でフラフラになったり、ときには倒れてしまったり。足の浮腫みも辛かったですね。それに開腹手術の傷は鞄の先がチョンと当たるだけでも激痛です。」と当時の厳しい状況を語ってくれました。

 こうした状況の中、以前一緒に闘病した女性や、がん患者のブログで知り合った人たちと接するうち、だんだん体も楽になってきたusapon氏は、かねてからの漠然とした思いを形にすべく「術後・治療中マーク うさポン製作委員会」を立ち上げます。こうしてうさポンバッジの製作がスタートしました。

 「うさぎをキャラクターにしたのは、人に傷をつけると痛々しくなることと、弱い動物のほうが伝わりやすいと思ったからです。また、バッジを一目見て、『この人は何らかの疾患を抱えていて辛いのかも?』ということが分かりやすく周囲に伝わるような文字の表記やデザインを考えて、このマークにしました。うさぽんバッジによって、辛い時に少しでも助けになったらよいと思っています。周囲に分かりやすく伝える手段として、バッジを付けるという、選択肢を1つ増やしたのです。」(usapon氏)

 手術後など治療中であることや見えない傷には誰も気がつかない。そうした自らの経験をもとにバッチは作成されました。

いつでも優先ではなく、辛いときに分かってほしい

 うさポンバッジの製作当初は「仲間内で300、400個くらい作れれば」程度で考えていたというusapon氏ですが、ブログやfacebookなどネットや口コミを通じてこの活動はどんどん広がりをみせていきました。現在、製作開始からおよそ一周年をむかえており、うさポンバッジの発送数は約4000個にもなっているそうです。

 バッジの利用者については、「がんの手術や抗がん剤治療を行っている方から、特に手術をしていない方でも、糖尿病の方とか、血液の病気の方などがいますね」(usapon氏)と、あくまでも、見えないけど辛いときのある方が対象だとか。またバッジはピンクリップタイプのものも用意されています。その理由は辛いときだけ着けられるようにという配慮からです。

 普段はつけなくても、通院時の帰路や優先席に座った時とか、辛いときだけ、その理由を分かってもらうことが、このバッジの持つ大切な意味となっています。こうしたことから、うさポンバッジには次のような注意事項が同封されています。

バッジ使用にあたって。
□治療中の方御本人がお使いください。
□席を譲ってもらえることを保証するものではありません。
□使用が終わったら破棄してください。

辛さのコミュニケーションが伝わり合う社会への期待

 全国津々浦々から日々オーダーが来るという。今では発送が間に合わず、近くに住むボランティアさん達も召集がかかる時があるとか。

バッジを購入された方からは、
「このバッジで救われる人はたくさんいると思っています。私もその一人です」
「胃がんの手術を受けた母にプレゼントしました」
「マタニティマーク同様もっと広まればいいなと益々のご発展をお祈りします」
「バッジをつけて外に出ようと思います! 困っている周りの人たちにも配ります!」
「退院後、回復の遅い母がうさポンバッチをバッグに着け、喜んで外出していくのを見て、こうしたサポートの重要性が改めて分かりました」
など、「少しづつですが、感想をいただいています」とusapon氏。

 こうしたリアルな声を通じ、今回あらためて、疾病治療や退院後の職場復帰・通院ほか外出に対して恐怖や苦痛を感じている人の存在を認識するとともに、それを解消するための手段の少なさが痛感されました。今後、こうした活動により、多くの人たちが一歩踏み出す勇気を持つとともに、周囲の人たちがやさしい気持ちで受け容れるような、そんな社会へと変わっていくことが期待されます。

術後・治療中マーク☆うさポン
http://usapon-nomorecancer.jimdo.com/

バッジのご購入はサイトをよく読み、注文する!からご購入ください。
発送・web製作・などusapon氏が全て一人で行っております。
対応スピードが遅い時があります。ご考慮ください。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。