【QOL(生活の質)】薬膳的食生活のすすめ

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公開日:2014年1月31日

乱れたバランスを日々整える養生法

 がんとの闘病による気力、体力の消耗から、仕事上や家族、親類との人間関係、さらには季節の変化による寒暖の移り変わりなど、私たちの精神・肉体は、日々さまざまなストレスにさらされています。そんな現代社会では、すべての人が心身のバランスを崩しているといっても過言ではないでしょう。

 そうした状態を改善していくひとつの手段として、今回は日々の食事に「薬膳」の考え方を取り入れることをご提案したいと思います。

薬膳とは「毎日、美味しく、バランスをとる食事」

 薬膳とは中国独自の医学体系のひとつである「中医学」の考え方をベースに、5000年におよぶ歴史をとおして形作られて、受け継がれてきた「食による養生・治療法」のことです。簡単にいえば「証(※)に応じた食材・調理法で作られた、毎日おいしく食べられて、崩れた心身のバランスを整える食事」といえます。

 上記した薬膳の基本となる考え方に基づき、食の力で乱れた心身のバランスを整えていくためには、第一に個々の食材が持つ性質を知ることから始めます。人間がいろいろなタイプに分類されるように、食材も個々に性質があります。

 日常、私たちが食べている食材は、味によって5種類(五味;酸、苦、甘、辛、鹹)に、また、温める・冷やすといった性質からも5種類(五性:熱、温、平、涼、寒)に分類されます(五味五性)。さらに、食材が体に及ぼす作用によるカテゴライズもあります。

(※)個々人で異なる体質、体格、性格などを総合的に捉えた心身の状態を表す東洋医学的な分類基準

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 食材ごとの味や性質は、臓器や季節などとも関連し合っており、私たちの心身の状態にも密接に関わってきます。例えば、もともと胃弱で冷え性タイプの方であれば、「脾(ひ:胃腸の消化吸収機能を意味する)」を温めるカボチャ、山芋、ナツメなどの食材を積極的に摂るようにします。

 また、ストレスなどでイライラしている状態は、感情・情緒に関わる肝(肝臓)が熱を持ち、気の流れが滞っていると考えられますから、肝を冷やして気の巡りを正す、ゆず、みかんなどの柑橘類が効果的といえます。

まずは「旬の素材」を摂り入れることから

 さて、上でご紹介したほかにも、私たちの身の回りにあるほぼすべての食材には、同様な形の分類がなされています。ただ、いきなりそれをすべて覚える必要はありません。薬膳の第一歩を踏み出した皆さんにとって今の時点で一番大切なのは、

「栄養のバランスだけでなく、味や温寒のバランスも考えた食事でこそ健康になれる」
「日々、下手すれば時々刻々と変化する心身のバランス(主に温寒)を取る食材を選ぶ」
「バランスの基本は、熱ければ冷まし、寒ければ温める(プラスマイナスゼロが健康)」
「スーパー、コンビニで買える食材で問題なし! もっとも大事なのは毎日続けること」

という意識を持つこと。

 そこで入門編としてわかりやすく、かつ実践しやすく、効果も期待できるのが「季節ごとの旬の食材を意識して食べる」ことでしょう。一般に、旬の食材は味がよく、栄養価も高いとされていますが、この点は薬膳的にも同様で、食材が持っている性質が顕著に発揮されます。

 さらに、時季ごとの旬の素材は「まさにその時季に心身が必要とする食材」が多いのも特徴です。事実、暑い夏に旬を迎えるトマト、きゅうりなどは熱を冷やす性質を持った食材が、湿気が多く胃腸機能(脾)が低下する梅雨時には胃腸に働く食材が旬を迎えます。

 まずは近所のスーパーなどに旬の素材を買いに行くことから。その上で、さらに薬膳に興味を持たれたなら、書籍やインターネット検索などで、身近な食材から性質を覚えてみましょう。また、手軽に、リーズナブルに旬の素材を用いた薬膳を楽しめるレストラン「旬穀旬菜café」もお勧めです。素朴で、飾らない、日々食べる普段食という、本来あるべき薬膳のスタイルそのままの料理、ぜひ一度召し上がってみてください。

がんに対する薬膳の考え方

 基本的な考え方および入門編をご紹介してきましたが、最後に「がんの具体的な症例に対するメニューの一例」を挙げてみます。例えば胃がんの場合、中医学的によく見られる分類には以下のようなものがあります。

■胃がんの薬膳的分類 例1
【肝気犯胃(かんきはんい)証】
 精神的なストレスなどで、肝(かん)の持つ気の流れを調節する作用が失われ、胃の機能にも影響を与えるために発症するタイプ。

<具体的な症状・特徴>
 胃部の脹るような痛み、脇に放散するような痛み。憂うつ感、イライラ、怒りっぽい。精神的なストレスで痛みが増強する。食欲不振、げっぷ、ため息。舌質紅(舌が赤い)、舌苔黄色(舌の苔が黄色い)、脈弦(脈の触れ方の分類の名称のひとつ)。

<薬膳的治療ポイント>
 肝の気の流れを調節する機能(疏肝理気)を高め、胃の気の逆流を正す(胃気降逆)作用のある食材を選ぶ。

<具体的な食材>
だいこん、セロリ、にら、ジャスミン、菜苑子(だいこんの種)、陳皮(みかんの皮)、など。

<具体的な調理例>
・にんにく粥
材料:にんにくのおろし汁 大さじ1/2、陳皮末(みかんの皮を乾燥して粉末にしたもの)大さじ1/2、氷砂糖大さじ1、もち米50グラム
作り方:
1.もち米を適量の水で炊く。
2.にんにく汁、陳皮末、氷砂糖を加えて混ぜ合わせる。

■胃がんの薬膳的分類 例2
【脾胃陽虚(ひいようきょ)証】
 消化に関わる脾胃の機能低下によって活動力となる陽気が不足し、さまざまな症状のひとつとして発症するタイプ(脾胃の虚弱は全般的な抵抗力低下につながる)。

<具体的な症状・特徴>
 胃部のシクシクする痛み。げっぷ、嘔吐。朝に食べたものを夕方に、あるいは夕方に食べたものを朝に吐く。食後の脹った痛み。痛みは押さえたり温めるたりすると楽になる。寒がり、手足が冷える。顔色が白っぽい、大便がゆるい。舌質淡(淡い色合い)、舌苔白(舌の苔が白い)。脈沈細(脈の触れ方の分類の名称のひとつ)。

<薬膳的治療ポイント>
脾胃(消化吸収など)の機能を高め(健脾益胃)、陽(体を温めるエネルギー)を補う(補陽)作用のある食材を選ぶ。

<具体的な食材>
キャベツ、じゃがいも、にんじん、やまいも、マッシュルーム、いんげん豆、えんどう豆、落花生、大豆、なつめ、はすの実、冬虫夏草、鹿肉、どじょう、など。

<具体的な調理例>
・鶏肉と野菜の煮込み
材料:じゃがいも1/2個、にんじん1/2個、マッシュルーム・いんげん豆適量、鶏もも肉1/2枚
作り方:
1.かつおぶしでだしをとり、材料を適当な大きさに切って煮込む。
2.味噌など温める調味料で味付けする。

 入り口から具体的ながん治療への応用まで、駆け足でご紹介してまいりましたが、まずは薬膳に興味を持っていただくとともに、敷居の高いものではないという認識を持つことが第一でしょう。その上で、書籍やインターネットの活用、さらには信頼できる専門医へ相談するなど、薬膳ライフの幅を広げていかれるのがいいでしょう。