- 再発転移がん治療情報
- 家族と社会のがん闘病サポート
- がん患者さんの支援・サービス
- 【医療情勢】厚労省・患者満足度調査が始まる背景~治療の決定権と満足度の関係~
【医療情勢】厚労省・患者満足度調査が始まる背景~治療の決定権と満足度の関係~
目次
国内初の1万人規模調査が始まる
日本におけるがん治療は、原則として、住んでいる地域や治療にあたる医師による違いはないことになっています。しかし、実際には全ての患者さんが納得できているとは限りません。厚生労働省の研究班は、がんの患者さんが病院の対応に満足しているかどうかを探る調査を行うことを決定しました。すでにパイロット版の調査が行われていますが、今年後半には、大規模な本格調査が始まる予定です。全国約10カ所のがん診療拠点病院を通じ、1万人以上の患者を調査対象とすることが計画されています。
患者さんは、退院前後のタイミングで質問用紙を渡され、医師や看護師の対応に「納得できたか」「不安を話すことができたか」などを回答するよう協力を求められます。主に、下記10項目に沿って50問ほど質問される見込みです。
(1)受診までの経緯
(2)診断に至る検査等
(3)診断確定時の説明
(4)治療方針決定過程
(5)情報サポート
(6)入院中のケア
(7)入院中の治療
(8)退院前コミュニケーション
(9)外来・通院中のケア
(10)その他全般項目
厚労省がこうした調査を行うのは初めてです。日本のがん対策は、2007年にがん対策基本法が施行され、2012年に第2期がん対策推進基本計画が策定されるなど、着実に整備されてきましたが、がん対策そのものの評価は十分に行われていませんでした。治療は提供されているものの、果たして肝心の患者さんは満足しているのか。今回の調査で検証し、患者さんの満足度の高い対策につなげることが見込まれています。
諸外国を見ると、すでにがんの苦痛の軽減とQOLの向上に関わる成果測定が始められています。イギリスやカナダ、オーストラリアでは、患者目線によるがん診療体験の実態把握が行われています。今回の厚労省の調査では、そうした国々の調査を参考にしながら進められていきます。
製薬メーカーの調査に見える、がん診療の課題
国内のがんの患者さんの満足度については、個別の病院等でも調査が行われていますが、比較的新しいのは12年、大手製薬メーカー「ファイザー」が行ったものです。がん患者さんと、そのご家族(各1000人、計2000人)が対象で、検診から診断・治療まで、どのような思いを持ち、どのような行動をとったかなどについてインターネット上で質問したデータです。結果は、日本のがん診療の課題を浮き彫りにするものでした。
「治療方法はどのように決定されましたか?(治療時)」との質問に対し、最も多い回答は「医師から治療選択肢を与えられ、医師と相談の上、決定した」(73.3%、733人)でしたが、約2割(18.6%、186人)は「自分に相談なく医師が決定した」と回答。その割合を、満足度が50ポイント未満の患者さんに限って見ると、約3割に増加していました。また、「自分から医師に治療選択肢を提案し、医師と相談の上で決定した」はわずか5.7%(57人)と、ごく少数でした。
患者さんが自分で治療法を選択できたか否かが、治療満足度に影響している可能性が見て取れます。同時に、患者さんが提案した治療法が採用されるケースは極めてまれであることも分かります。
この結果についてファイザーは、「インターネットで回答できる、比較的病状が安定している患者さんやそのご家族が多かったことが影響している可能性がある」としながらも、「治療時や治療経過時の説明が分かりづらいと感じた人や、相談なく治療方法が決定された人は治療満足度が下がる傾向にある」と発表しています。
「見捨てられた」「もうだめだ」と悲観しないために
医療の進歩や、医療制度改革によって、ここ数年でがんの治療は大きく変わりました。身体への負担が少ない治療法が実用化されてきたことと並行して、外来による治療にシフトしてきたため、患者さんが思っているより早く退院を求められるケースが出てきています。医師や看護師の説明が十分でなければ、不安や不満が生じ、中には「見捨てられた」「もうだめだ」と悲観してしまう人もいます。当然、満足度も低くなってしまいます。
そうした際、「主治医以外の意見も聞いてみたい」と思われる方は少なくありません。ほかの医療機関の医師に、セカンドオピニオンを依頼するケースです。主治医とは違った視点から意見をもらうことで、満足できる治療法に出会える可能性は、ゼロではありません。 前出のファイザーの調査によると、9割近くの患者さんがセカンドオピニオンの存在を知っていました。患者さんのご家族は、8割近くがセカンドオピニオンを知っています。
ただ、どちらも利用した(あるいは家族に利用を勧めた)経験はわずか2割でした。多くの方が、セカンドオピニオンが気になりつつも、実行に移せていないのかもしれません。 しかし、ここ数年で「セカンドオピニオン外来」を設けている医療機関は増加し、地域の中核病院であれば、だいたいどこにでもあるようになりました。また、がん専門クリニックにおいても、セカンドオピニオンを受け付けています。もっと気軽に相談してみてはいかがでしょうか。まずは電話をかけて相談可能かどうか確認するか、入院(または通院)している病院の「医療連携室」に相談し、紹介してもらうとスムーズです。
自分は治療に満足しているかを振り返り、疑問や不満があるのならほかの医師の意見をもらう。そうしたフレキシブルな受診も可能であることは、ぜひ胸に留めておいてください。
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, がん患者さんの支援・サービス
タグ2013年8月
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。