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【医療情勢】厚労省「がん対策に関する世論調査」に見る臨床試験のメリット・デメリット

公開日:2013年5月1日

「臨床試験」を詳しく知らない人が60%超

内閣府が3月に発表した「がん対策に関する世論調査」では、がんに対する知識やイメージ、不安にはどんなものがあるかが明らかになりました。いわば、多くの人の”がんリテラシー”を調査したわけですが、世代や性別、居住地などによって少しずつ差があることが浮き彫りになりました。

そのうち、「臨床試験」について知っていたか否かの質問では、「知っている」は77.5%にのぼりました。一見すると高い数字のように見えますが、そのうち39.7%は「言葉だけ知っている」でした。「知らない」が21.9%と合わせて61.6%は臨床試験の詳細を知らないと言えるでしょう。性別に見ると、男性のほうが「知っている」と回答した人が多く(40.7%)、女性は35.3%でした。年齢別には、30歳代から50歳代では「知っている」とする人の割合が高く、20歳代と70歳以上では「知らない」と答えた人の割合が高いことが分かりました。

ここでは、がんの患者さんにとって臨床試験はどのようなメリット・デメリットがあるのか、改めて解説します。

無作為化試験ではプラセボが当たる可能性も…

臨床試験については、当サイト2011年12月(https://www.akiramenai-gan.com/medical_support/clinical/8060/)でも取り上げていますが、一口に臨床試験といっても3つの段階に分けられています。第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験、あるいはフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3と呼ぶこともありますが、どちらにしても数字が大きいほど開発が進んでいる試験です。
臨床試験の3段階はそれぞれの試験内容や目的が異なります。抗がん剤の場合は、一般的に下記のようになっています。

●第I相(フェーズ1)
薬の候補となる物質(治験薬)の安全性を調べる試験。副作用の有無や、その影響度を明らかにすることが主な目的であることが多い。通常は健康な人に対して行われるが、抗がん剤の場合は、ほかに治療法のない患者が対象になる。

●第II相(フェーズ2)
フェーズ1で安全とされた治験薬の有効性を調べる試験。効果の高い投与量、投与方法などのデータを集めることを目的とする。治験薬が体内でどのように吸収、代謝、排泄されるかのほか、抗がん剤の場合は、腫瘍の縮小効果(奏功率)についてのデータを集める。この段階が有効性が認められた治験薬は、新規抗がん剤として承認される。

●第III相(フェーズ3)
フェーズ2で有効性が認められた治験薬が、既存の抗がん剤と比べて効果が高いか否かを調べる試験。同時に副作用が少ないかどうかも調べる。高いエビデンスを出すために、ランダム化(無作為化)試験と呼ばれる方法が取られることがある。その場合、実際の薬を投与される患者と、プラセボ(偽薬)を投与される患者の2グループに分かれ、それぞれの効果を比較する。

患者さんにとって臨床試験に参加することは、厚生労働省が承認する前の新しい治療法を受けられるメリットがあります。ただし、本当に治療のプラスになるかは未知数で、効果がなかったり、副作用が強かったりする場合もあります。s

特に、フェーズ3の試験では、その被検薬を飲んだ患者と、プラセボを飲んだ患者を比較することがある点は、よく理解しておく必要があります。自分が被検薬を飲んだか、プラセボを飲んだかは知ることができません。最新の治療を受けるつもりが、プラセボを飲むことになる可能性があるのです。がんの患者さんの中には、「少しでも可能性があるのなら」と臨床試験に関心を持つ方もいることでしょう。その際には、主治医によく相談して、試験を受けるかどうかを決めることが大切です。

臨床時化情報はネットで検索できる

なお、臨床試験の情報は、国立がん研究センターがん対策情報センターのホームページにある「がんの臨床試験一覧」(http://ganjoho.jp/professional/med_info/clinical_trial/index.html)から、がんの種類別、開発段階別に閲覧できるようになっています。がんに関しては、新しい抗がん剤の効果を調べる試験のほか、すでに臨床現場で使われている抗がん剤の副作用や効能を継続して調べる試験などがあります。また、樹状細胞ワクチン療法など、免疫療法に関する試験も少なくありません。

臨床試験は、正確なエビデンスを出すために、治療内容や治療スケジュールなどを定めた「試験実施計画書」(プロトコル)があります。基本的には、血液検査や尿検査、CT検査、心電図等、試験の参加規準を満たしているかどうかを確認する検査を経て、プロトコル通りの量・タイミングで服薬することになります。治験薬によって体調に変化があったり、これまでと違う症状が見られたりした場合など、なにか不利益があった場合はいつでも中断できます。

こうした臨床試験の内容は、患者さんが参加を決める前に、必ず医師または専門の看護師から詳しい説明があります(インフォームドコンセント)。標準治療ができなくなっても諦めずに、臨床試験を受けることで道が開ける可能性があることは知識として覚えておきたいものです。