【QOL(生活の質)】副作用・後遺症対策~便秘編~

公開日:2013年05月31日

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まずは便秘の種類を知ろう

201306_03がんの副作用は実に様々な症状があります。中でも便秘は多くの患者さんを悩ませる症状の1つ。おなかが張って苦しく、食欲も落ちてしまいがちで、療養生活に大きな影響を及ぼします。
ただ、便秘といっても、症状や原因によっていくつもの種類があります。じょうずに排便をコントロールするには、自分がどんなタイプの便秘なのかを知ることが大切です。 まず、腸などの消化管そのものに何らかの病気がある「器質性便秘」と、消化管の働きがスムーズでない「機能性便秘」に大別されます。器質性便秘は、腸管が狭くなったり、腸が炎症を起こしていたりする場合のことで、症状にあった個別の治療を行うことになります。
一般に、便秘の悩みとしてあげられるのは機能性便秘の方です。多くは腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍くなることが主な原因で、さらに細かくタイプ分類されます。一過性の「急性便秘」、何日間も続く「慢性便秘」、そして薬の副作用による「医原性便秘」です。

抗がん剤や制吐剤が便秘の原因に

このうち、がんの治療と直接的にかかわるのが、医原性便秘です。
治療中に使う鎮痛剤や吐き気止め(制吐剤:せいとざい)は、腸の動きを抑制し、腸液の分泌も減らすものがあります。鎮痛剤では、オピオイド系のものに見られる副作用です。また、抗がん剤の中にも、副作用として便秘を起こすものもあります。例えば、急性白血病や悪性リンパ腫などに用いられる「硫酸ビンクリスチン(オンコビン)」は、腸の働きを調節している自律神経を障害し、蠕動運動を弱めてしまうことがあります。悪化すると腸閉塞にいたることもあると言われています。
ほかに、下記のような薬剤が便秘を起こしやすいことが分かっています。

●抗がん剤
ビンクリスチン(オンコビン(R))
ビンデシン(フィルデシン(R))
ビンブラスチン(エクザール(R))
ビノレルビン(ナベルビン(R))
パクリタキセル(タキソール(R))

●吐き気止め
グラニセトロン(カイトリル(R))
オンダンセトロン(ゾフラン(R))
アザセトロン(セロトーン(R))
ラモセトロン(ナゼア(R))
※出典:国立がん研究センター がん情報サービス

便の状態を医師に報告するポイント

抗がん剤による便秘は、下剤だけではコントロールが難しいため、現在の症状をできるだけ詳しく医師に報告し、適切な治療を受けることが大切です。日々の排便ごとに、便の状態を観察する習慣をつけましょう。便の硬さを医師に伝える際には「ブリストル便形状スケール」が目安となります。便の状態を7つのタイプに分類している基準で、数字が小さいほど便が硬く便秘に近い状態。反対に、数字が大きいと下痢の状態を指します。継続して便を観察し、通常の便(レベル4)以外であれば医師との面談の時にたびに報告しましょう。

●「ブリストル便形状スケール」
1、木の実のようなコロコロした硬い塊の便
2、短いソーセージのような塊の便
3、表面にひび割れのあるソーセージのような便
4、表面がなめらかで柔らかいソーセージ、あるいは蛇のようなとぐろを巻く便
5、はっきりとした境界のある柔らかい半分固形の便
6、境界がほぐれて、ふわふわと柔らかいお粥のような便
7、塊のない水のような便

ほかにも、便を観察するポイントとして「色」があります。便が黒ずんだり、赤く見えたりした際は血液が混ざっている場合があるため、注意が必要です。がんによる血便の場合は、黒に近い赤に見えます。鮮やかな色の赤の場合は、痔などによる出血が考えられますが、どちらにしても医師に報告するようにしましょう。また、出血ではなく腸粘液の分泌がうまくいかないことで、便の色に異常が見られることもあります。灰色または白っぽく見えた便の場合は、やはり医師に報告しましょう。

薬の副作用以外の便秘は日ごろのケアが肝心

なお、薬とは関係のない便秘の急性便秘は、食物繊維の少ない食事が続いたり、水分が不足したりすることが原因になります。がんの療養で食事が制限されることもあり、人によっては便秘を招いてしまいます。また、運動不足も原因の1つ。療養でしばらく安静にしていたことも、便秘の一因になるのです。
また慢性便秘は、原因が様々で以下の3タイプに分類されます。

●「弛緩(しかん)性便秘」……筋力が低下して蠕動運動が衰え、便を押し出す力が弱まった状態で起こります。高齢者や出産回数の多い女性に多い。

●「痙攣(けいれん)性便秘」……ストレスが原因のことが多いと言われます。病気のこと、生活のことに悩み、それがストレスになって自律神経が乱れた結果、腸の運動が鈍くなる。人によっては、ストレスで蠕動運動(ぜんどううんどう:消化管などが食物をある一定方向に動かすこと)が過剰になり、便秘と下痢を交互に繰り返すことも。

●「直腸(ちょくちょう)性便秘」……便が直腸(肛門の一歩手前)まで降りてきているのに排泄されない状態。便意を我慢し過ぎたり、下剤や浣腸を使いすぎたりすることによって、便意が脳に伝わらなくなると起こる。

急性便秘または慢性便秘を解消するには、食事と水分、運動、そしてストレスケアが大切です。可能であれば、野菜や海藻、きのこ類など食物繊維の豊富なものを食べましょう。また、水分がとれる場合は、1日にコップ7~8杯を目安にしましょう。
加えて、便意があったら我慢をしないこと。あるいは朝食後に便意があってもなくてもトイレに行くなど、スムーズな排便のための習慣付けも意識したいものです。やさしく腹部を暖め、優しいマッサ-ジも効果的です。大腸は右側から左側に走行しているため、「の」の字を書くように右回りにマッサ-ジをしましょう。
医師による治療に加え、日ごろの生活を少し見直すことで、苦しい便秘から一歩抜け出せるかもしれません。

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