【特集記事】肝臓・胆道・膵臓がん治療の最近の傾向

公開日:2012年10月01日

目次

消化器がん(肝胆膵)が再発・転移した場合の最新治療

肝胆膵領域のうち、肝臓の肝細胞がんに関しては外科治療のあり方に変化が生じてきています。これまでは、比較的多くの症例に手術が行われ,外科が術後経過観察することが普通でしたが、現在ではその後の発がん抑制や,再発した時再び積極的治療が可能になるよう内科や放射線科などと集学的に診療するようになってきました.その背景には、肝機能を向上させて発がんを防ぐ内科的治療が進歩してきたことが関係しています。例えば、B型・C型肝炎のウィルスの駆除などです。したがって当院では、肝がんを切除したあとは速やかに内科に紹介し、凝固療法やウィルス駆除、抗がん剤などの治療を行うようにしています。

一方、胆のう・膵臓の方は、今もって手術が第一選択肢です。しかし、明るいトピックスが2つあります。以前は、切除後に再発・転移が起こった場合の再手術は不可能であることが多く、有効な化学療法もありませんでしたが、状況が変わりつつあります。

まず、手術後の再発・転移を予防する術後化学療法について、膵がんで有意差が出ることが明らかになりました。機軸となる薬剤は「塩酸ゲムシタビン」と「S1」の2種類です。塩酸ゲムシタビンは一日に30分程度の点滴、それを三回、三週続けて一週休むサイクルで行います。ただ、胆・膵の手術は大掛かりな手術が多いので、なかなか手術後は予定通りにはできないんですね。当院では一週おきにやったり、二週やって一週休んだりといった工夫をしています。

大切なのは、なるべく長く継続するということです。副作用のために中断せざるをえない方は化学療法に対する精神的なアレルギーができてしまい、あとから他の薬を使用してもうまくいかないケースが多いからです。当院では、なるべく投与量を少なくしつつも、薬剤規定を保てるペースの治療を心がけています。

胆のう・膵臓のもう一つのトピックスは、今まで切除できなかった症例、またはとってもがんが残ってしまうような症例に対し、手術前の強力な化学療法や放射線療法で切除できるほど小さくできるようになりました。局所であれば放射線をあてながら少量の抗がん剤を投与します。当院では、だいたい手術前4〜8週間ぐらいに治療することを標準にしています。

 

取材にご協力いただいたドクター

慈恵医大 外科学講座 准教授 慈恵医大 附属第三病院 外科部長 岡本 友好(おかもと ともよし)先生 日本消化器外科学会認定医 消化器外科専門医 日本肝胆膵外科学会評議員日本消化器病学会認定医 日本体育協会公認スポーツドクター 日本外科学会指導医 日本臨床外科学会評議員 外科専門医 日本消化器病学会関東支部評議員 消化器病専門医 日本消化器病学会指導医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本がん治療認定医機構暫定教育医 日本外科学会代議員 日本がん治療認定医 日本胆道学会評議員 日本肝胆膵外科学会高度技能指導医 日本胆道学会認定指導医

1985年3月 東京慈恵会医科大学卒業 1985年4月 虎の門病院外科レジデント 1990年4月 東京慈恵会医科大学第二外科学教室診療医員 1991年1月 町田市民病院派遣 1992年1月 東京慈恵会医科大学第二外科学教室助手 1993年11月 ネブラスカ大学医学部外科にresearchfellowとして派遣 1996年7月 東京慈恵会医科大学外科学講座第二講師 同附属病院消化器一般外科医長 2001年6月 東京慈恵会医科大学付属病院肝胆膵外科診療医長 2001年9月 東京慈恵会医科大学付属第三病院外科診療医長 2007年4月 東京慈恵会医科大学付属第三病院外科診療部長代行 2008年4月 東京慈恵会医科大学付属第三病院外科診療部長 2008年12月 東京慈恵会医科大学外科学講座准教授 2010年4月 東京慈恵会医科大学付属第三病院副院長

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