2018年10月27日(土)14:00~ フクラシア八重洲(東京)にて開催 あきらめないがんセミナー

【患者会に行ってきました2】 乳がん体験から医療を考える市民グループ「イデアフォー」

最先端がん治療紹介の編集方針について

「再発転移がん治療情報」では、がん治療に精通した医師の方へのインタビューや学会、患者会ほか独自の取材を通して、新しいがん治療情報を随時ご提供しております。手術、抗がん剤、放射線治療と言った標準治療の中でも最新の治療法や、免疫療法や漢方など注目の治療法を取り上げていきます。また、このサイトでは特に進行がんやがんが再発・転移された方に有用と思われる情報を掲載していきたいと考えております。
がん治療に関するニュースや情報サイトは他にもたくさんありますが、再発・転移がんに特化したものは少なく、また、毎日更新される膨大な情報をチェックし、ご自身の治療に役立つものをピックアップしていくことは容易ではありません。
本サイトでは、再発・転移がんの治療を対象としたトピックをどなたにも分かりやすくお伝えし、治療を必要とされる患者様へ新しい選択肢をご提供したり、前向きに治療に取り組むお手伝いが出来るサイト作りを目指しております。

公開日:2011年7月27日

再発転移の患者さん同士が気兼ねなく「乳がん」を語り、学べる場

1989年に創設した「イデアフォー」(東京都江東区)は、乳がんに特化した患者会です。現在の会員数は約400人で、患者さんや家族、医療者などが所属しています。世話人を務める中澤幾子さん自身、93年に乳がんを患い入会した一人。設立の背景から会の特色、現在の活動まで、じっくり語っていただきました。

【患者会概要】
団 体 名:市民団体 イデアフォー
所 在 地・連 絡 先:東京都江東区亀戸2-30-6 1F
設 立:1989年11月
会 員 数:500名(2005年1月現在)
運 営: 複数の世話人による合議制
URL: http://www.ideafour.org/
渉外担当:中澤幾子(なかざわ いくこ)

Q 設立の経緯や目的をおしえてください。

A 乳房温存療法の情報収集がきっかけでした。 今でこそ、乳房温存療法の実施率は60%を超えていますが、イデアフォーが設立した1989年当時は、ほとんど知られていませんでした。“乳がん=乳房切除”が当たり前で、患者さんは外科医に「おっぱいが大切か、命が大切か」と言われるような時代でした。 そんな時、日本では乳房温存療法のパイオニアで、慶応大学病院放射線科の近藤誠先生が書かれた『がんは切ればなおるのか』という文章が雑誌に掲載されました。乳がんの生存率は、乳房切除術も温存療法も大きな差はない。切除したからといって必ず治るものではないということを、海外の研究データを踏まえて具体的に解説したものです。 それを目にした乳がんの患者さんやご家族によって、イデアフォーは結成されました。乳房温存療法は、すでに海外で当たり前に行われていたのに日本では情報がなく、患者側は選択の余地がなかった。当たり前のように乳房切除術が行われている状況を自分たちで何とかしようと、患者さんたちが立ち上がったのです。 イデアフォーの設立パーティは全国紙に取り上げられ、翌日には大勢の患者さんから問い合わせがありました。それだけ、当時は乳房温存療法に関する情報が足りず、待っている人が多かったのです。

Q 現在はどのような活動をされていますか?

A 乳がんに関する正しい情報の収集と提供です。 イデアフォーの活動は、次の3つの柱からなりたっています。 (1)インフォームド・コンセントの推進 (2)医療情報の収集と提供 (3)乳房温存療法に関する情報の収集と提供

医療情報や乳房温存療法の情報収集と提供の一つとして、患者さんやご家族が自由に語り合う「おしゃべりサロン」の時間があります。毎月第4土曜日、イデアフォーの事務所に集まり、ほかではなかなか話せない悩みや、患者さん同士の情報交換が行われています。 おしゃべりサロンは、基本的には参加者が自由に会話を交わす場ですが、民間療法やサプリメントなどの勧誘を防ぐために、必ず世話人が立ち会います。サプリメントを全否定するわけではありませんが、仮に飲むとしたらちゃんと医師に報告すること。抗がん剤への影響がゼロとは限らないことなどは、はっきりと伝えています。

また、週4回2時間ほどの無料電話相談では、患者さんやご家族からの相談を受け付けていますし、定期的に会報を発行しています。講演会やセミナーも開催しており、これまで、手術や抗がん剤の講演会のほか、臨床試験を受ける際の注意点を学ぶセミナーを開き、情報発信してきました。 全国の医療施設を対象としたアンケート調査も行っています。各医療施設における乳がんの治療法から使用薬剤、受診方法や患者支援体勢まで、乳がん治療で患者さんが知りたい情報を網羅的に調査したものです。2010年版では約200施設の回答を収録しました。

Q 再発転移の患者さんに向けたプログラムはありますか?

A 再発転移の患者さんだけの「おしゃべりサロン」を開催しています。 毎月第4土曜日のおしゃべりサロンは、初発の方を含め、どなたでも参加できるようにしています。それとは別に、奇数月の第4日曜日は、再発転移の患者さんと関係者だけのおしゃべりサロンを開催しています。 もともとは初発・再発転移を問わず、おしゃべりサロンを開催していましたが、初発の患者さんはどうしても再発転移の情報を知りたがります。その場にいた再発転移の患者さんは質問攻めに遭って、自分が聞きたいことを聞けないケースが少なくなかったのです。 会員のなかから、「再発転移の患者さん同士で気兼ねなく話せる場が欲しい」という要望があり、現在のスタイルに落ち着きました。参加者は少ない時で3人、多い日は12〜13人が集まります。再発転移の患者さんのなかには、長時間座っているのが辛い方もいますが、ここでは、どんな体勢でも構いません。床に直接座ったり横になったり、一番らくな体勢で参加してもらっています。

Q 「おしゃべりサロン」では、どんな内容の会話を交わされますか?

A 治療の体験を語り合い、先輩からのアドバイスも聞けます。 特に多いのは、「乳がんであることを子どもや親にどう伝えるか」という話題です。誰もが悩むことですが、同じ経験をした患者さんの話を聞くことから、自分の答えを見つけやすくなっていきます。 また、副作用に関する情報交換も盛んです。例えば、抗がん剤の副作用に、指や足の裏がはれて、物を握ることや、歩くことが大変になる「手足症候群」があります。これが本当に辛くて抗がん剤を止めたいという相談が患者さんからあったとき、他の参加者の方々より「私も同じだった。主治医もそうだねと言ってくれた」「私の主治医は、せっかく抗がん剤が効いているのにと言っていた」など様々な体験談が寄せられました。また、骨転移の痛みが辛いと打ち明けた人には、「私は放射線の照射で痛みが軽減したよ」とか「セカンドオピニオンをとったらどう?」といったアドバイスがありました。 副作用の表れ方はとても個人差がありますが、同じ治療を先に受けた方の話は、とても参考になるものです。

ほかに、症状が重かった方が元気になった話は、他の患者さんにとって勇気づけられることもあります。たとえば、乳がんで肺に転移した方が「イタリアに旅行してきたわ」という話や、骨の転移により首から下が麻痺状態だった方が、放射線治療とリハビリで3年後には歩けるようになった話。また脳転移のある方が「ガンマナイフを受けたら、全く症状がなくなったの」とあまりに元気な姿で話しているのを見てみんなが驚いたほどです。治療がうまくいけばこんな元気になる。そう思えることは、患者さんにとって大きな安心感につながります。 参加者の皆さんは、「ここに来ると何でも話せるから気がらく」とおっしゃいます。同じ立場の方同士、家族にも遠慮して言えないことを、ざっくばらんに話せると。ここで出会った患者さん同士が仲良くなり、一緒に温泉に出かけたという話も聞きました。

Q 他の活動として本の出版もされているのですか?

A がんの再発転移を、多くの方に知ってもらいたくて文章にしました。 がんの再発転移というと、世間では「とても可哀想な人」「もうすぐ亡くなってしまう人」という偏った目で見られがちです。でも、実際には再発や転移した方たちも、普通に日常生活を送っています。仕事もすれば恋もする。時々病院に通ったり、入院したりしながら日々を過ごしています。その事実がどうも伝わっていないのではという思いから作ったのが、03年に出版した『再発後を生きる』(三省堂)です。再発転移がんのある会員の方から原稿を募集し、19人の手記と3人の座談会を収録しました。皆さんが実名で体験を綴っています。 04年と05年には、この本の筆者を囲んで講演会も開催しました。がんに関する講演会はいたるところで開催されていますが、再発にしぼった講演はあまりありません。この時の講演内容はすべて文章に起こし、会場に来られなかった会員や、メディア関係者に配付しました。患者さんの思いを、自分たちが聞いて終わらせるのではなく、もっと色んな人たちに知ってもらいたいからです。

Q 今後の活動予定をお聞かせください。

A「病理のセカンドオピニオン」の講演会を開催します。 今年10月15日、東海大学病理学の堤寛先生をお招きして講演会を開催します。がん患者にとって、病理診断はいうまでもなく重要なものですが、以前は検査技師法に基づく“検査の一部”と定義されていたのをご存知でしょうか? それが、08年から医療法のもとでの医師による“診断行為”へと位置づけが変わり、「病理診断科」「臨床検査科」の標榜が可能となりました。 その背景には、病理の組織検査は「3人の病理医がいれば3つの意見が出る」というほど、経験がものをいう現状があります。がん細胞の顔つきや組織のつながり方など、微妙な違いによる診断は、病理医であっても難しいものなのです。 仮に病理診断が誤っていれば、その方の治療が根底から覆される可能性があります。そのため、最近では病理医のセカンドオピニオンが浸透し始めてきました。今回の講演では、実際にセカンドオピニオンも行う堤先生に、乳がんの病理診断の現状や課題など語っていただきます。乳がんは予後が長く、20年以上経ってからの再発もあります。最初の病理診断をしっかりするかどうかで、その後が大きく変わりますから、多くの方に講演を聞いていただきたいと思います。

Q 乳がんの患者さんやご家族にメッセージをお願いします。

A 自由でフラットな会です。ぜひ一緒に活動しましょう。 イデアフォーは、あえて代表者を決めず、10名ほどの世話人が協力し合って運営しています。世話人はフラットな関係にあり、私のように渉外担当も入れば経理担当、会員管理担当もいて、各々ができる範囲で役割分担をしています。もし、活動に感心がおありでしたら、ぜひ一緒に運営してほしいと思います。月に1度開く世話人会はオープンですから、どんどん意見を出してもらって、活動を盛り上げていきましょう。 また、イデアフォーは乳がんに関する書籍や、医学的な資料を揃えています。図書の貸し出しやコピーも行っていますから、お気軽にご連絡ください。私たちは患者さんの声を聞くことから活動できます。そこから乳がんの医療がよくなっていくことを願っています。