乳がん 再発・転移の治療法

公開日:2011年02月26日

目次

医師とのコミュニケーションが納得の治療につながります

乳がんの再発があった場合には、主治医とよく相談することが非常に重要です。また、セカンドオピニオンなどの利用により再発した時点で違う病院へかかる場合は、前の病院での治療方針などを医師や看護師とよく相談しましょう。自らの治療にかかわることなので、前治療時のことを、きちんと説明し、医師とコミュニケーションをとることが大切です。これまでの検査や診断、治療の経過を詳しく話すことで同じ診断結果や治療方針だとしても安心することができると思います。医師や看護師は患者さんの様子をみながら治療方針を決めます。インフォームドコンセントの原則では患者さん本人の意思が優先されますが、闘病には家族の支えが欠かせません。患者さん本人と家族の意思が異なる場合は、家族間の話し合いも非常に重要です。QOLの維持・向上の具体案をどこに求めるのか、患者さん自身が向き合って考えることが、よい生活を送るのに必要なことです。

インフォームドコンセントとは主に、医師と患者さんの間での治療方針における合意のことです。

再発・転移乳がんの治療方針

乳がんの再発・転移に対しては、化学療法などの全身療法や、放射線療法、外科治療などを加えた集学的治療が行われます。乳がんの再発は手術で取りきれなかったためと考えられることもありましたが、最近では、がんが分かった時点で、微小転移が全身におこっていると考えています。

局所再発で、乳房切除を行っている場合には、放射線治療や薬物療法(抗がん剤・ホルモン剤)などの全身療法がおこなわれます。乳房を温存している場合や放射線治療を先に行っている場合は切除手術が検討され、全身療法に移っていきます。

乳がんの転移で多いのは、肺、骨、肝などです。これらに対しては薬物療法(抗がん剤・ホルモン剤)による全身治療が中心となります。治療の目的としては腫瘍縮小に伴う疼痛緩和などが一番に挙げられます。ホルモン療法は抗がん剤と比較すると患者さんに与える影響が少なく、効果のある期間が長い(約12か月と言われています。)と考えられているために、ホルモン感受性のある人(ホルモン療法が受けられる人)には、まずホルモン治療を行う場合が多いです。ホルモン感受性のある人は乳がん患者の約6割と言われ、女性ホルモンであるエストロゲンを取り込む受容体の量を調べることで適応があるか判断されます。

ホルモン感受性のない方や、ホルモン療法の効果がなくなった方には抗がん剤を用いて治療します。抗がん剤の腫瘍縮小効果は約50%程度と言われています。また腫瘍縮小効果にかかわらず、副作用がでてくると考えられるでしょう。抗がん剤治療による代表的な副作用は、はきけ、脱毛、無月経、口内炎、むくみ、手足のしびれなどがでてきます。身体にかかる負担や、費用負担も増えてきます。患者さん自身もしっかりと治療内容を理解して、必要な治療を医師と相談しながら進めて行くことが大切です。

乳がん治療の治療戦略

転移性乳がん治療 HER2陽性に有効なトラスツズマブ

乳がんの再発・転移におけるHER2陽性の新しい考え方の治療薬として、分子標的治療薬(ハーセプチン 一般名トラスツズマブ)が注目されています。トラスツズマブは、HER2タンパク質に結合するヒト型モノクローナル抗体で、分子標的治療薬で承認された第一号です。HER2は、乳がん、卵巣がん、肺がん、胃がんなどの腺がんで過剰につくられることが知られています。特に乳がんでは、予後因子の一つとして重要視されています。トラスツズマブは、HER2への結合により抗体依存性細胞障害効果や、HER2の消失・下流シグナルの伝達を減らすことで、がんの増殖を阻害します。HER2陽性の転移性乳がんの標準的治療として、併用療法で使用されています。乳がんの約2割程度の方は、がん細胞の表面にHER2というタンパク質の過剰があります。この過剰があるとホルモン剤が効きにくいことがわかっています。トラスツズマブは抗体の一種なので、タンパクの働きをブロックすることができ、がん細胞の増殖を抑える働きをします。いままでの抗がん剤と比べると、副作用も軽く、OQL維持・向上させる役割も担っています。日本では膵がんや胆がんなどで用いられているジェムザールという薬剤や、ラパチニブ、ベバシヅマブという薬も乳がんにも効果があるのではないかといわれています。今後の新薬開発や臨床試験によって新しい進歩がでてくる可能性も十分にあるでしょう。

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