【特集記事】乳がん治療の研究によって、がん治療が進む

公開日:2012年06月01日
先端がん治療紹介の編集方針について

「再発転移がん治療情報」では、がん治療に精通した医師の方へのインタビューや学会、患者会ほか独自の取材を通して、がん治療情報を随時ご提供しております。手術、抗がん剤、放射線治療といった標準治療についての情報はもちろん、免疫療法や漢方などさまざまな治療法を取り上げていきます。また、このサイトでは特に進行がんやがんが再発・転移された方に有用と思われる情報を掲載していきたいと考えております。
がん治療に関するニュースや情報サイトは他にもたくさんありますが、再発・転移がんに特化したものは少なく、また、毎日更新される膨大な情報をチェックし、ご自身の治療に役立つものをピックアップしていくことは容易ではありません。
本サイトでは、再発・転移がんの治療を対象としたトピックをどなたにも分かりやすくお伝えし、治療を必要とされる患者様へ新しい選択肢をご提供したり、前向きに治療に取り組むお手伝いが出来るサイト作りを目指しております。

目次

外科手術と化学療法の考え方

がんの治療法のなかで、最も効果がある治療が外科手術です。これはがん細胞を周囲の組織と共に切除することです。これは言葉を変えると、人間の身体では治せないがんを、治せる傷に置き換える治療法ともいえます。がんに対するほかの治療法とも共通しますが、外科手術も病気を人間の治せる形までアシストします。

そこで問題になるのは、目に見えるところだけにがんがあるわけではないということです。実際に血液中の細胞を調べてみると、かなり早い時期から血液の中にがん細胞が検出されます。目に見えないがん細胞があることを念頭に置いて、目に見える部分の治療を行います。そしてがん細胞の数を、患者さんの身体の中で抑えられる程度に減らしてしまうのが、外科の治療です。

このように外科治療で重要なことは、抑える能力を壊さないということです。低侵襲手術は、身体の抗腫瘍の免疫力をできる限り壊さないで病巣を切除することで、患者さんのがんを押さえ込む力を維持させるという仮説に基づいています。私はその仮説に従って20年近く肺がんの治療をしてきて、再発が少ないという実感があります。このことは、診断の能力が高まったことと一部関連するので、必ずしもそれがすべてとは言えません。しかし少なくとも患者さんのQOLを向上させ、体力を高く保った結果、再発を少しでも抑えられたのではないかと思います。

ちなみに、最近外科治療成績が改善された理由の一部はステージマイグレーションによります。これはある人が1期だと思っていたけれど、よく調べたら他にも転移があって実は3期だったとします。従来だと1期として扱われるので、1期の患者さんが高率に再発を起こすことになります。もし正しく3期と診断されるようになると、この人は3期として取り扱われ、残った本当の1期の患者さんたちは長生きします。診断の精度が向上したために、治療成績が良くなったように見えるという仕組みです。

がん細胞は全身に散らばる可能性があり、実際にがんの再発は、手術をした場所よりもそれ以外の場所に病巣をつくることが圧倒的に多いのです。それに対してどういう合理的な対策をするのかということは重要な問題です。抗がん剤というお薬による化学療法とはその代表的な方法です。

化学療法の根本的な原理は、正常な細胞に比べて、がんの細胞は活性度が高く増殖能力が高い、その高いところをターゲットとしてがん細胞を殺すという理論です。実は化学療法は、毒ガスから始まりました。分子構造を変え、その毒性を減らしたのが、最初の抗がん剤です。

抗がん剤をコントロールしながらうまく使うことによってがん細胞の数をかなり減らすことができます。残念なことにがん細胞を100%やっつけられるわけではありません。その理由の1つはその抗がん剤が全てのがん細胞に有効なわけではないという問題です。2つめは、抗がん剤は正常な細胞にとっても有毒なために、いつもまでも使用するわけにはいかないということです。がん細胞は、もともと遺伝子的に不安定な細胞ですから細胞の性格が変わりやすく、そのとき耐性を獲得しやすいので、前回使った薬が使えなくなることはしばしばです。そうなると、これまで行ってきた抗がん剤治療は限界です。

化学療法で最初に使うお薬をファーストライン(第一次使用薬)といって、多最も効く可能性の高い抗がん剤を2〜3種類組み合わせて使用します。何百種類もある抗がん剤から、比較的毒性が少なくて、効果の高い抗がん剤の組み合わせが調べられています。その後再発してくるがんに対しては、セカンドライン(二番目に効く薬の組み合わせ)を使用します。その後一回目よりも二回目の方が効果は下がるのが普通です。このような治療で効果がない人には、新しい薬の効果が期待されるので、希望する人には新薬の臨床研究が行われます。

取材にご協力いただいたドクター

東京慈恵会医科大学外科学講座教授(呼吸器,乳腺・内分泌外科学担当), 同附属病院呼吸器外科診療部長 森川 利昭 教授

1977年3月 長崎大学医学部卒業
1977年6月 国立長崎中央病院(現国立病院機構長崎医療センター)研修医
1979年6月 国立がんセンター病院(現国立がんセンター中央病院)外科レジデント
1982年6月 榊原記念病院心臓外科
1983年4月 国立療養所松戸病院外科(現国立がんセンター東病院)医員
1985年2月 北里研究所病院外科医長
1989年7月 北海道恵愛会南一条病院呼吸器外科主任医長
1997年4月 北海道大学医学部第二外科講師
2004年5月 北海道大学大学院腫瘍外科助教授
2005年7月 東京慈恵会医科大学教授

学位  :医学博士(北海道大学)

日本外科学会    評議員
日本呼吸器外科学会 評議員
日本胸部外科学会  評議員
日本内視鏡外科学会 評議員
日本内視鏡外科学会 理事
日本肺癌学会 評議員
日本気胸嚢胞性肺疾患学会 評議員

呼吸器胸腔鏡手術研究会 会長
日本肺癌学会関東部会 世話人
肺外科研究会 世話人
慈大呼吸器疾患研究会 世話人

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