【特集記事】乳がん治療の研究によって、がん治療が進む

公開日:2012年06月01日

目次

乳がん(肺がん)における再発・転移になった場合の治療法は?

がん細胞が患者さんの体に発生して、数が増えて目に見えるようになった塊をがんと言います。がんが最初にできた場所にだけ存在する状態を早期がんといって、それが元ある場所から離れて広がる状態を進行がんと言います。これが多くのがんに共通するがんの呼び方です。早期がんには症状はほとんどなく発見が難しいのですが、乳がんは身体の表面にありますから比較的見つけやすい腫瘍です。逆に肺がんは、身体の深いところにあるために非常に見つけにくく、症状が出ているときはすでに進行していることが多い腫瘍でした。しかしながら近年、放射線診断の精度が上がり、とくに改良されたCTでは、肺の中にある腫瘍を症状がない時期から高感度に検出することができるようになりました。この発展が肺がん治療の進歩に繋がりました。

再発・転移に関しても、乳がんは比較的がん細胞の発育が緩く全体的に進行が遅いので、治療の有効性の判定に時間がかかります。一方肺がんは、進行も早く、治療は決して容易ではありません。このようにそれぞれのがんに応じた特徴があります(表1)。

  乳がん 肺がん
元のがんの位置 身体の表面 身体の深いところ
元のがんの発見 見つけやすい 見つけにくい
進行速度 遅い 早い
治療効果の判定 難しい 比較的容易

(表1 乳がんと肺がんの特徴)

このような各がん種に共通の特徴と、それぞれのがんに特有の特徴を理解しながら、次の治療を組み立て、それらの特徴を利用しながら新しい治療を開発していくということになります。

乳がんでは、第1期というのは相当数の患者さんが治ります。ところが転移が出現してくる3期、4期になると治療が非常に難しくなります。幸い初期に見つかる割合が比較的多いのが乳がんです。ところが肺がんは、転移を起こしてから見つかるケースが多いため、治療が困難なことが多いのです。乳がんは10年単位、肺がんは3〜5年単位で経過をみる必要があります。

取材にご協力いただいたドクター

東京慈恵会医科大学外科学講座教授(呼吸器,乳腺・内分泌外科学担当), 同附属病院呼吸器外科診療部長 森川 利昭 教授

1977年3月 長崎大学医学部卒業
1977年6月 国立長崎中央病院(現国立病院機構長崎医療センター)研修医
1979年6月 国立がんセンター病院(現国立がんセンター中央病院)外科レジデント
1982年6月 榊原記念病院心臓外科
1983年4月 国立療養所松戸病院外科(現国立がんセンター東病院)医員
1985年2月 北里研究所病院外科医長
1989年7月 北海道恵愛会南一条病院呼吸器外科主任医長
1997年4月 北海道大学医学部第二外科講師
2004年5月 北海道大学大学院腫瘍外科助教授
2005年7月 東京慈恵会医科大学教授

学位  :医学博士(北海道大学)

日本外科学会    評議員
日本呼吸器外科学会 評議員
日本胸部外科学会  評議員
日本内視鏡外科学会 評議員
日本内視鏡外科学会 理事
日本肺癌学会 評議員
日本気胸嚢胞性肺疾患学会 評議員

呼吸器胸腔鏡手術研究会 会長
日本肺癌学会関東部会 世話人
肺外科研究会 世話人
慈大呼吸器疾患研究会 世話人

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