【最新医療】がん治療の可能性を広げる免疫チェックポイント阻害薬 ニボルマブの効能・効果「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」で追加承認

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公開日:2016年1月29日

 がんの原発巣、転移巣を外科的に切除する手術療法、X線やγ線でがんの細胞分裂を阻止して増殖を抑制する放射線療法、抗がん剤でがん細胞の増殖を抑え、再発・転移を防ぐ化学療法は、いずれもがん細胞を標的にする治療法です。これに対して、免疫療法は生体の免疫系に働きかけてがん細胞を攻撃する治療法です。

免疫の働きにブレーキをかける役割が明らかに

 ヒトの免疫は、外部から侵入した細菌や、生体内に発生したがんなどの異物を第一段階の免疫防御である自然免疫と、最初に接触した抗原を記憶して2回目以降に迅速に攻撃できる第二段階の免疫防御である獲得免疫によって排除するしくみになっています。

免疫システムにおいて、がん細胞は、抗原提示細胞を介して活性化したT細胞による攻撃を受けて細胞死(アポトーシス)へと誘導されます。しかし、なかには攻撃をかいくぐって生き残るがん細胞もあります。免疫監視機構の認識・排除から逃れたがん細胞は無制限に増殖を始めることになります。

最近、がん細胞が免疫システムの働きを抑えることで免疫細胞からの攻撃をかわしていることがわかってきました。その過程で重要なカギとなるのがT細胞の表面に現れる免疫チェックポイント受容体のPD-1(programmed cell death-1)、抑制性細胞膜タンパク質のCTLA-4(cytotoxic t-lymphocyte antigen-4)などのT細胞活性化調節因子をはじめとする抗腫瘍免疫応答です。免疫チェックポイントとは、免疫の働きにブレーキをかける役割のことです。

PD-1はT細胞の活性化抑制の役割を持っており、がん細胞は自分の表面にあるリガンド(PD-L1)をT細胞のPD-1受容体に結合させ、T細胞の活性を邪魔して免疫監視機構から逃れようとします。同様に、CTLA-4はT細胞の活性化に伴って発現が誘導され、がん細胞は自分のリガンド(B-7)をCTLA-4受容体に結合させてT細胞の増殖・活性を抑制します。リガンドとは、特定のタンパク質や細胞膜の各種受容体などと特異的に結合する物質のことです。

坑PD-1抗体の仕組み

免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1モノクローナル抗体、抗CTLA-4モノクローナル抗体はこうしたメカニズムを逆手に取った治療薬といえます。海外の研究で、悪性黒色腫(メラノーマ)に対して抗PD-1モノクローナル抗体のニボルマブと抗CTLA-4モノクローナル抗体のイピリムマブの併用によって劇的な効果が得られたと報告されています。

厚生労働省はさる12月17日、ニボルマブ(製品名「オプジーボ」)の使用を肺がんにも認めました。メラノーマに次ぐもので、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果が追加承認となりました。非小細胞肺がんは肺がん患者の約85%を占め、有効な治療法が望まれていました。なお、12月11日付で、根治切除不能または転移性の腎細胞がんについても承認申請を行っています。

国内や海外で胃がん、食道がんなどさまざまながん種に対する免疫チェックポイント阻害剤の開発が進められています。従来の3大治療法に免疫療法が加わることによってがん治療の構図は大きく変わろうとしています。

ニボルマブは「夢の新薬」ではありません

 ニボルマブの肺癌への適応拡大が承認された翌18日、日本肺癌学会は肺がんの患者さん、ご家族、関係者に向け、「抗PD-1抗体ニボルマブについてのお願い」を発表しました。そのなかで、次の3項目を指摘しています。

  • 1.ニボルマブはすべての患者さんに有効な「夢の新薬」ではありません
    肺の扁平上皮がんと腺がんを対象に行われた試験でのニボルマブの奏効率(各腫瘍の直径の合計が30%以上縮小する割合)はそれぞれ20%、19%でした(逆にいえば約8割では効果が乏しいともいえます)。
  • 2.ニボルマブにも副作用があり重篤になる場合もあります
    上記の試験で何らかの副作用があった患者さんは扁平上皮がん群では58%、腺がん群では69%に見られました。ニボルマブは新しい作用機序を持つ薬で、肺がんの専門医でも使用経験が少なく、注意が必要です。
  • 3.ニボルマブが使えない患者さんがいます
    ニボルマブは免疫系に作用することから、膠原病、リウマチ、間質性肺炎の患者さんには使用できません。また、他の薬剤との併用についても安全性が確認されていません。

かつて肺がん治療薬の「ゲフィチニブ」が発売された直後に副作用として間質性肺炎が多発しました。これを教訓として、同学会は「薬は諸刃の剣であることを忘れず、肺がん治療に精通した医療機関で利益と危険性のバランスを冷静に検討した後に初めて使用されるべきものです」と呼びかけています。

※掲載している情報は、記事公開時点(2016年1月29日)のものです。