【最新医療】肺がん治療に新たな展望ALK阻害剤

公開日:2012年06月01日

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国際学会にて注目を浴びるALK阻害剤

毎年6月に米国イリノイ州シカゴにおいて、がんの学会としては世界最大規模となる米国臨床腫瘍学会(ASCO)という国際学会が開催されています。昨年のASCOの中心となった話題は新しい分子標的治療薬のALK阻害剤の効果でありました。日本では、年間32万人のがんによる死亡者数のうち、肺がんはもっとも多い6万人を占めています。(厚生労働省人口動態統計2005年)。ALK阻害剤はクリゾチニブという薬剤がALK陽性非小細胞肺癌に高い効果を示すことが明らかとなり、画期的な治療薬になると期待されています。

EML4-ALK融合遺伝子は、骨格のタンパク質をつくるEML4遺伝子(echinoderm microtubule associated protein-like4)とALKという酵素の遺伝子(anaplastic lymphoma kinase)がそれぞれ千切れてひっくり返って結合した融合遺伝子で、がんの増殖を促す特殊ながん遺伝子です。ALKは受容体型チロシンキナーゼをコードとしますが、染色体転座によりEML4のアミノ末端と融合することが知られています。これらを有している肺がん患者さんは非小細胞肺がんの5%程度に認められると言われています。クリゾチニブはALKおよびc-Met/肝細胞増殖因子受容体(HGFR)の受容体キナーゼに対する効果を持っていて、両方のがん遺伝子の抑制に効果があると期待されています。

現在ではALK陽性の非小細胞肺癌患者さん(シスプラチンやカルボプラチンなどのプラチナ系の抗がん剤を含んだ化学療法の後に進行が認められる)を対象とした臨床試験や、未治療のALK陽性の非小細胞肺癌患者さんを対象とした臨床試験も進められています。実際にアメリカではファイザー社が2010年5月に米国食品医薬品局(FDA)に承認されました。臨床の現場でも使われるようになり、より治療の精度向上が期待されています。日本でも厚生労働省に申請を行っている最中で、2月29日に厚生労働省の医薬品第2部会でクリゾチニブの製造販売の承認が内定しました。また商品名の日本語表記も「ザーコリ」となりました。ALK検査も同時に承認されると思われます。但し臨床の現場での使用開始にはまだしばらく日数がかかるでしょう。









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