がんの転移 最新レポート3

最先端がん治療紹介の編集方針について

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公開日:2012年4月1日

がんの転移 最新の研究レポート2はこちら

肺の転移腫瘍で”自家移植”に成功

転移がんの治療については日進月歩で研究が進められ、すでに国内外の病院や研究機関が成果を上げています。
たとえば、岡山大学病院では、肺がんの転移に対し「自家移植」による治療を成功させています。自家移植とは、患部を切除して移植医療で用いる特殊な保存処理を施し、正常な部分を体に戻す手術のことを言います。同大学では、2010年に原発性肺がんの患者への自家移植手術に世界で初めて成功していますが、2011年に転移の症例でも成功させました。
患者は、原疾患の子宮肉腫が肺に転移した30代女性です。原疾患は完全に治療されていましたが、左肺の上中部に病巣が大きく広がり、通常は全摘が検討される症例でした。しかし、下葉の一部には転移していないことが分かり、自家移植に踏み切りました。
左肺を取り出し、移植用の特殊な保存液を注入して冷却保存。病理検査で転移のなかった左肺の半分程度を切り離し、気管支や血管とつなぎ合わせました。自家移植は自分の臓器を体内に戻すため、他者からの移植に比べて拒絶反応が起きにくいメリットがあります。術後の呼吸不全や肺活量の減少を最小限にとどめ、QOLを向上させる治療法として注目されています。

脊椎転移でも諦めなくていい次世代腫瘍脊椎骨全摘術

転移に関する新しい治療はほかにもあります。金沢大学病院では、脊椎転移を丸ごと切除する「次世代腫瘍脊椎骨全摘術」を行っています。多くの場合、がんが脊椎に転移すると末期状態と言われますが、同大学では余命3カ月~半年と見られた患者さんが15年以上生存する例があります。

この手術は国が認める先進医療です。腫瘍脊椎骨全摘術そのものは、従来から行われていましたが、次世代腫瘍脊椎骨全摘術は凍結免疫を応用している点が特色です。腫瘍脊椎骨全摘術は、脊椎のがんを切除した後、自分の骨盤の骨を使用したチタン製ケージを挿入して背骨の再建していました。それに対し、次世代腫瘍脊椎骨全摘術は、切除した脊椎のがんをマイナス200℃の液体窒素で凍結し、自分の骨盤の骨の代わりにチタン製ケージ内に詰め込んで背骨にはめ込みます。 液体窒素による凍結処理を行うと、がん細胞は死滅します。しかし、がんの抗原は保たれるため、がんを攻撃しようと体の免疫細胞が活発に増殖します。液体窒素処理骨を体に戻すことによって、体の免疫系が活性化されるのです。活性化された細胞は血液の流れに乗って体中に回り、ほかのがん細胞を攻撃します。従って、全身的な治療効果があることが期待されています。

転移を早く正確に診断する次世代PET-CT装置

転移がんの早期発見に役立つ検査機器の開発も進んでいます。 富山大学病院では、最先端のがん診断が可能な「次世代PET-CT装置」を導入しました。この装置はドイツ・シーメンス社の最新型。がんの活性度や悪性度などを見るPET(陽電子放射断層撮影)と、がんの形や大きさを調べるCT(コンピューター断層撮影)の両方の機能を併せ持っています。

画像撮影時間は10~15分程度で従来の半分。画像の感度が向上し、リンパ節転移のがんは従来の半分の5ミリの小ささでも発見できるようになりました。CTは体を40列にスライスして診断する方式で、放射線被曝の低減化も図られています。

転移を予防する研究も活発に

各大学や研究機関では、転移を予防する研究も盛んに行われています。 熊本大学では、がんの転移を促すたんぱく質「アンジオポエチン様たんぱく質2」を発見しました。このたんぱく質は、もともと肥満体の脂肪組織で慢性炎症を起こし、糖尿病などを引き起こすことで知られていました。今後は、アンジオポエチン様たんぱく質2の分泌を抑えたり、働きを阻害したりする物質が見つかれば、がんの転移などを防ぐ新治療薬の開発につながると予測されています。

東京大学は、神戸学院大学、順天堂大学との共同研究で、血液凝固能を制御するたんぱく質分解酵素「プラスミン」が、がんの転移を制御することに注目。プラスミンの阻害剤を白血病マウスに投与してみたところ、がんの増殖を抑制することに成功しています。 また、慶應大学では、「HERV-H」というがん細胞の遺伝子が転移に関係していることを明らかにしました。HERV-Hが働くと、がん細胞からたんぱく質などが出てくるようになり、他の臓器に転移するきっかけをつくるといいます。この研究成果は、リンパ節転移を予防する治療薬の開発に応用されることが期待できます。

国立がん研究センターでは、がん細胞が「マイクロRNA(リボ核酸)」という分子を出さなくなると、転移が抑制されることを突き止めました。ヒトの乳がん細胞を移植したマウスによる実験では、肺やリンパ節に3週間たってもがんができなかったといいます。
こうした研究の成果は、やがて転移の予防・治療に役立てられるはずです。転移が見つかったからといって、あきらめなくてもよい日が来るのも夢ではありません。

※掲載している情報は、記事公開時点(2012年4月1日)のものです。