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【最新医療】最新の遺伝子解析で、ゲノム異常から肝臓がんを6タイプに分類

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公開日:2016年5月31日

 国立がん研究センターや理化学研究所などの研究チームが、日本人の肝臓がん300例の全ゲノム(全遺伝情報)を解読した結果、ゲノムの異常から肝臓がんは6つのタイプに分けられ、タイプによって生存率が大きく異なることがわかりました。

世界最大規模の単独がん種の全ゲノムシーケンス解析

 国立がん研究センター、理化学研究所、東京大学、広島大学らの共同研究チームは、主にウイルス肝炎を背景として発症した日本人300例の肝臓がん組織と同一患者から採血した血液からDNAとRNAを抽出し、それらの全ゲノム情報を最新の装置(次世代シーケンサー:NGS)と東京大学ヒトゲノム解析センターの生命科学専用スーパーコンピューター「SHIROKANE」を利用して解読し、肝臓がんに起きているゲノム変異をすべて同定しました。

NGSを使って個人(約30億塩基)やがんの全ゲノム情報を解読し、配列の違いや変化を確かめることを全ゲノムシーケンス解析といい、データが膨大になるため、SHIROKANEなどのスーパーコンピューターを使って行います。

この研究は、単独のがん種の全ゲノムシーケンス解析数としては、世界最大規模となり、解析した塩基配列数は全部で約70兆塩基に上ります。

DNAやRNAは塩基、糖、リン酸という3種類の化学物質が1つずつ結合したものが最小単位となっています。DNAの塩基は、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの4種類(RNAはチミンの代わりにウラシル)で、塩基の配列順序が遺伝情報となります。

既知のがん関連遺伝子は周辺の遺伝子の発現に影響

 全ゲノムシーケンス解析の結果、1つの腫瘍あたりのゲノム異常は平均で約10,000カ所であり、塩基が1つ変わる「点突然変異」以外に、ゲノム構造異常などのさまざまな形態の変異を検出することができました。ゲノム構造異常とは、数百~数百万塩基の配列に変化が起きることをいいます。

特に、既知のがん関連遺伝子(p16、APC、TERT、CCND1、RB1など)に加えて、新規のがん関連遺伝子(ASH1L、NCOR1、MACROD2、TTC28など)の点突然変異やゲノム構造異常が多数発見されました。また、既知のがん関連遺伝子は周辺の遺伝子の発現を大きく変化させていることもわかりました。

B型肝炎ウイルス(HBV)とアデノ随伴ウイルス(AAV)のゲノムが肝臓がんゲノムに入り込むことで、その周辺の遺伝子の発現が変化していることも明らかになりました。これらのウイルスゲノムが特定の遺伝子のゲノムに入り込むことが肝臓のがん化に関係があると考えられています。

このようなゲノム異常は、全ゲノムシーケンス解析を多数のがんサンプルについて行わなければ発見できないものであり、肝臓がんの発症や進行に深く関与すると考えられます。また、この研究によって、肝臓がんが大きく6つのタイプに分類でき、中でもがん抑制遺伝子TP53に関わる遺伝子群に変異があると、肝臓がんは予後が不良である等、このタイプによって予後や生存率に大きな違いがあることがわかりました。

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23本ある染色体のうち5番染色体に存在する、がん関連遺伝子TERT では、遺伝子の一部が本来の位置から移動するほか、HBVゲノムの組み込みも多数観察され、TERTの発現が上昇していました。円は、TERT が移動した部位を示し、グラフの赤点は、3%以上の肝臓がんで検出された変異を示しています。

肝臓がんの個別化治療に発展する可能性

 日本における部位別がん死亡者数で、肝臓がんは男性3位、女性6位です。年間約4万人が肝臓がんと診断され、3万人以上が亡くなっています。特にアジア地域とアフリカ地域で発症頻度が高く、世界全体の部位別がん死亡率では第2位です。

主な原因は、肝炎ウイルスの持続感染であり、慢性肝炎から肝硬変に進み、高い確率で肝臓がんを発症します。発症要因は、HBVまたはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染、アルコール摂取などがありますが、発症頻度は世界各地域で異なっています。アジア・アフリカでは、HBV感染による肝臓がんが約70%を占め、日本人の肝臓がんではHCV感染が約60%となっています。

一方、欧米では、HCV感染に加えて、アルコール性肝障害や肥満でみられる脂肪性肝障害からの肝臓がんも多い傾向にあります。

今回の全ゲノムシーケンス解析結果は、がんのゲノム配列情報に基づいた肝臓がんの個別化治療に発展する可能性があります。さらに、これらのゲノム変異を標的とした肝臓がんの新しい治療法や診断法、予防法の開発にも貢献することが期待されています。