【最新医療】切除不能進行・再発胃がんに対するオキサリプラチンの適応拡大

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公開日:2014年12月1日

 従来、主に大腸がんに対する化学療法で使われてきた抗がん剤のオキサリプラチンが、今年9月から切除不能進行・再発胃がんにも使用されるようになりました。

粘膜下層から血管、リンパ管に入ったがん細胞は全身に拡散

 がんの進行の程度は、がん組織の胃壁への深達度、リンパ節やほかの臓器への転移の有無によって病期(ステージⅠA~Ⅳ)で表されます。がんの深達度は5段階に分類されます。T1は早期がん、T2以上が進行がんです。

胃がんの深達度図

胃がんの深達度
出典:国立がん研究センターがん対策情報センター

 

胃がんや大腸がんは臓器の内側の粘膜上皮細胞から発生しますが、最初は粘膜に留まっています。この段階であれば転移の可能性は低いと考えられますが、がんが粘膜の外側の粘膜下層に浸潤すると、そこから血管やリンパ管に入り込みます。そしてがん細胞が血液やリンパ液の流れに乗って胃の外へ広がります。

胃がんの治療はステージに基づいて決定されます。ステージIAの胃がんは、まず内視鏡治療の適応の有無を検討し、適応があれば内視鏡的治療を行い、なければ手術を検討します。ステージⅡ、Ⅲの胃がんに対してはまず手術を行い、その後化学療法を追加します。ステージIVの胃がんは手術で治る可能性は低く、一般的には化学療法が行われます。

 

オキサリプラチンの有効性、安全性は進行した大腸がんですでに実証

 内視鏡治療や手術、抗がん剤などによる治療後に、再びがんが現れることを再発といいます。再発の原因で多いのが他の臓器への転移です。胃がんは胃の周辺にあるリンパ節に転移しやすく、放置すると次々に転移して体中に広がっていきます。胃がんの再発は3年以内に起こることが多く、ほかのがんと比べても再発率が高いといわれます。

また、がんが発見されたときのステージが高ければ高いほどリンパ節や血管、腹膜への浸潤も進行しているため、再発の可能性が高くなると考えられています。

切除不能進行・再発胃がんに対する化学療法では、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)、フルオロウラシル、シスプラチン、イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセルなどが用いられます。抗がん剤を単独で使う場合と複数の薬剤を併用する場合があります。

これまで切除不能進行・再発胃がんに対する標準治療の1つとしてS-1とシスプラチンを組み合わせた併用療法(SP療法)が第1選択とされてきましたが、シスプラチンには強い吐き気、腎障害などの副作用があり、入院治療が必要となるなどのデメリットが指摘されてきました。

一方、大腸がんの化学療法では長年フルオロウラシルが使われてきましたが、その後、イリノテカンやオキサリプラチンも有効であることが判明し、フルオロウラシルとイリノテカン、またはフルオロウラシルとオキサリプラチンといった組み合わせで使われるようになりました。

最も進行したステージIVの大腸がんに対する化学療法については、多くの臨床試験でフルオロウラシルとロイコボリンとオキサリプラチンにベバシズマブを加えた治療法の有効性や安全性が報告されています。

 

カペシタビン+オキサリプラチン、S-1+オキサリプラチンを推奨

 オキサリプラチンは、切除不能進行・再発大腸がんの治療薬としてすでに承認され、その効果も数多く報告されています。今年9月から、切除不能進行・再発胃がんに保健適応が拡大されました。

これを受けて、日本胃癌学会は安全性に配慮した適正使用を推進することを目的としたステートメントを公表しました。それによると、「これまで、本邦における切除不能進行・再発胃癌に対する標準治療はS-1+シスプラチン併用(SP)療法であり、プラチナ製剤としてシスプラチンが日常診療において汎用されてきたが、今後はシスプラチンに加えてオキサリプラチンが新たに選択肢に加わる。

ただし、これまでの国内でのオキサリプラチンの使用は結腸・直腸癌が中心であり、胃癌に対する使用経験は限定されている。オキサリプラチンは大量輸液が不要で外来での治療が可能であるなどの利点もあるが、胃癌に対して用いた場合には、血小板減少症や好中球減少症、発熱性好中球減少症、感覚性神経障害などの有害事象が発生する危険性があるため、併用薬や用法・用量だけでなく、休薬や原料などに留意した適正使用が望まれる」などとして、オキサリプラチン130mg/m2(3週毎投与)を経口フッ化ピリミジン系薬剤と併用することを推奨しています。

また、安全性の面から、カペシタビンとオキサリプラチンの併用(CapeOX)療法、S-1とオキサリプラチンの併用(SOX)療法などのレジメンを選択することが望ましいとの見解を示しています。

進行・再発胃がんに対する治療薬の選択で世界の潮流は、シスプラチンからオキサリプラチンへと変わりつつあるといった見方もあります。日本人の胃がんの罹患率は相変わらず高く、オキサリプラチンの登場によって切除不能進行・再発胃がんに対する薬物治療の選択肢が増えたことで、一人でも多くの患者さんがその恩恵を受け、生存率の向上につながることが期待されます。

※掲載している情報は、記事公開時点(2014年12月1日)のものです。