QOL(生活の質)がんになっても食事を楽しみたい~胃がん編~

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公開日:2012年12月3日

食後の「ダンピング症候群」に注意

がんの患者さんにとっての食事は、体力をつけて治療を乗り切ったり、再発を防いだりするための大切な時間です。また、家族や仲間とのコミュニケーションを楽しむという、食事は大きな意味を持ちます。がんと食事については先月からシリーズでお伝えしています。今月は胃がんにスポットを当てて、上手な食べ方等をご紹介します。

胃がんの手術を受けた患者さんは、手術前に比べると消化・吸収の働きが下がっているため、食べ方や食材の選び方に注意しなければなりません。通常通りの食事をすると、「ダンピング症候群」が起こることがあります。ダンピング症候群は、胃がんの手術後によく起こる合併症です。胃から小腸に食べ物が一気に流れ込み、急激に血糖値が上がって、突然意識を失ったり、強い倦怠感、手や指の震えなどが生じます。

また、抗がん剤や放射線治療をしているときも、注意が必要です。治療の副作用として、倦怠感や下痢、吐き気などが起きて食欲が落ちてしまいがちですが、体の免疫力を高めるためにも食事は非常に大切です。調理法を工夫するなどして、栄養補給に努めましょう。

少しずつ、よく噛んで食べることの大切さ

一度に食べられる量は、術式や症状によって多少異なりますが、まず共通して気をつけるべきは「ゆっくりよく噛むこと」。そして、「消化の良い食品を選ぶこと」の2点です。
よく噛むことは、胃で行っていた消化機能をカバーするためです。唾液は消化液の1つですから、飲み込む前に口の中で食物と唾液が混ぜ合わさることで胃の負担を軽減します。噛んでいるうちに、熱いものや冷たいものが人肌程度に温度調整され、消化を促進してくれる作用もあります。また、ゆっくり食べることは、腸に食物が流れるスピードを穏やかにし、ダンピング症候群を防止します。手術で胃を広範囲に切除した場合は、時々箸を置いて休みながら食べるといいでしょう。

一方、消化の良い食品とは、胃の停留時間が短く、分解・吸収にかかる時間を短いものを指します。脂質や食物繊維が少ない物がいいとされています。
主食でしたら、おかゆや煮込みうどん、そうめんなど。玄米、寿司、ラーメンなどは消化が悪いので注意しましょう。また、タンパク質は白身魚や鮭、はんぺん、鶏ささみなどが比較的消化のよい食べ物です。野菜は白菜やかぶ、にんじん、レタスなどを選びましょう。ほうれん草などの葉物野菜は茎の部分が硬いので、調理の際に取り除いくと安心です。りんごなどの果物も、皮をむいて消化の悪い部分を避けて下さい。

基本的に、炭水化物>タンパク質>脂質の順番で消化がよく、気をつけなければ炭水化物ばかりの食事になりがちです。しかし、それでは栄養が偏ってしまうので、意識してバランスのよい食事をとるようにしましょう。

肉類がおいしく感じない場合の一工夫

がんの治療中は、体調の変化に合わせた食事管理も大切になります。例えば、抗がん剤治療は、味を感じ取る舌のセンサー「味蕾(みらい)」の感度を低下させ、味を感じなくなったり、何を食べてもおいしくなくなることがあります。また、放射線治療の影響で唾液が出なくなったり、嗅覚が鈍くなることもあります。

そうした味覚障害があるときは、亜鉛を多く含み、唾液の分泌を促進するメニューを選ぶとよいとされています。バナナと豆乳をミキサーにかけた「バナナ豆乳」は、亜鉛と良質のタンパク質を一度にとれるためおすすめです。また、納豆巻きや、チーズを具にしたおにぎりなどもいいでしょう。治療中は、肉類の味が苦みや金属味と感じることが多いため、大豆や乳製品を使った料理が適しているのです。

また、吐き気や嘔吐があるときは、においの感じにくいメニューを選ぶといいでしょう。炊きたてのご飯や煮物、魚料理は控えて、冷たいそうめんや、冷やした茶碗蒸しなどがおすすめです。大根おろしとカニ(缶詰)の甘酢あえなど、さっぱりした味付けのものも適しています。

食べることをあきらめずに

なお、消化がよく、胃がんの患者さんに適している食べ物であっても、「食べ方」と「食べる量」を間違えてはなりません。卵は、消化のよい食品と言われていますが、調理法によって消化時間が変わります。半熟や生卵はすぐ消化できても、卵焼き(100g)にすると3時間前後がかかるようになります。牛乳もおすすめの食品ではありますが、量に注意です。75mℓでは胃の滞留時間が1時間程度ですが、200mℓ(コップ1杯)飲むと2時間もかかります。

逆に、消化の悪いと言われるレンコンやゴボウなどでも、時間をかけて少しだけ食べる分には問題がない場合があります。あくまでもよく噛み、一度に食べ過ぎないようにしましょう。

胃がんの患者さんは、一度でもダンピング症候群などを経験すると、食べること自体が怖くなってしまうことがあります。周囲の人に気を遣って、一人だけ違うメニューは食べる気力がわかないという人もいます。しかし、食事はすべての治療効果を高める基本です。食べることをあきらめずに、主治医に相談しながら、無理のない範囲で食事を楽しみましょう。