第4の治療法、がん免疫療法について知っておきたいこと

公開日:2019年03月11日
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第4の治療法、がん免疫療法について知っておきたいこと

がんと診断を受け治療を開始する際、提案される治療法は基本的には「手術」、「化学療法」、「放射線治療」であり、これがいわゆるがんの3大標準治療です。これまではこれらの治療方法の特徴を活かし、がんの種類や部位、症状に合わせて治療法を選択したり、組み合わせたりしながら、がんの完治や症状の緩和のための治療が行われてきました。近年では3大治療法を基本とした上で、新たに多種の治療方法も確立され始め、治療の選択肢がさらに増えています。中でも第4の治療方法として、注目を集めているのが、がん免疫療法です。当ページでは、がん免疫療法のしくみや種類、効果や副作用についてなど、詳しくご紹介します。

目次

そもそも免疫とは?

そもそも免疫とは?

日常生活を送っている周囲では、常に莫大な細菌やウイルスであふれていますが、それでも多くの人々が病気にならずに済んでいるのは、体内の免疫が24時間働いて侵入してくる異物を破壊してくれているからです。外から入ってくる細菌やウイルスだけでなく、正常だった細胞が変化してがん化してしまった場合も免疫機能が攻撃して、がんを発生させないよう守ってくれています。

免疫は2つに分けられる

人を含む哺乳類の免疫機構は、大きく2つに分けられます。1つは、もともと先天的に身体に備わっている「自然免疫」、もう1つは病原体や毒素などの異物と接触することで後天的に獲得した「獲得免疫(適応免疫)」があります。異物が現れると自然免疫が最初の攻撃を仕掛け、樹状細胞(免疫細胞の一つ)が近づき獲得免疫にその情報を伝えます。次にその異物が入った時には、異物の情報を覚えた獲得免疫が異物と認識して排除してくれます。このように免疫は、2段構えで私たちを細菌やウイルスから守ってくれています。

自然免疫 もともと身体に先天的に備わっている免疫
獲得免疫
(適応免疫)
異物と接触することで後天的に獲得した免疫

免疫細胞の数は減少する

しかし、残念なことに免疫はいつも正しく働いているわけではありません。睡眠不足やストレス、運動不足、偏った食事などが要因で免疫の働きは悪くなります。また、30代をピークに免疫細胞の数は減少し続けるといわれています。
免疫力が落ちてしまうと普段は取るに足らない弱い菌に感染してしまうこともあります。毎日大量に体内で生まれるがん細胞は、自然免疫の中のNK(ナチュラルキラー)細胞や獲得免疫のT細胞が攻撃し、増殖を抑えていますが、加齢や生活習慣の悪化などで免疫細胞の数が減少すると、免疫細胞ががん細胞の増殖を抑えきれずに、やがてがんを発症してしまいます。 がん細胞の増殖を抑え、がんの発症や発症後のさらなる広がりを防ぐためには、免疫細胞の力を活性化させることが求められます。

免疫とがんの発症には深い関係があり、免疫細胞を活性化させ、もともと備わっている免疫のしくみを利用してがんを治療するのが「がん免疫療法」です。

がん免疫療法とはどのような治療法なのか?

がん免疫療法とはどのような治療法なのか?

がん免疫療法は、もともとヒトの身体に備わっている免疫の力を強靭にしてがんを攻撃することを目的とした治療法です。 免疫療法には多くの種類があり、すでに有効性が認められて標準治療として保険適用となっている治療法、有効性を期待されながらも研究開発の過程のため自由診療として行なっているものがあります。治療方法は点滴や注射を用いて行われることが多いです。

がん免疫療法の種類

がん免疫療法には、がん細胞が免疫にブレーキをかける仕組みを解除して活性化を持続させる「免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体薬)」や、全体的な免疫を強める「サイトカイン療法」などがすでに一部のがん種で保険診療として行われている治療法です。免疫チェックポイント阻害剤の中には、ノーベル賞を受賞して話題になった「オプジーボ」も含まれているので耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。保険診療の範囲は一部のがん種に限られていますが、今後多くの患者さんが保険診療で受けることができるよう適用範囲の拡大が期待されています。

免疫療法はまだまだ発展途上の治療法で、標準治療外の治療も多く、さまざまな種類の免疫細胞の特徴を活かした治療が試みられています。例えば、樹状細胞の力を利用してがんを治療する「樹状細胞ワクチン療法」や「ペプチドワクチン療法」などがそのひとつです。これは異物を攻撃する免疫細胞(リンパ球)に異物の情報を与える樹状細胞の特徴を利用し、一度体外に出した樹状細胞にがん細胞の情報(目印)を覚えさせ体内に戻し、がん細胞をリンパ球に攻撃させるという治療法です。

■樹状細胞ががんを攻撃するしくみ

樹状細胞ががんを攻撃するしくみ

他にも、自然免疫であるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させる「NK細胞療法」、がんを攻撃するリンパ球を活性化させる「活性化リンパ球療法(LAK療法・CAT療法)」などもあります。

※保険適用外の治療は、まだまだ研究段階の治療法です。効果や副作用など不確かなものもあり、慎重な判断が必要です。

がん免疫療法の効果

免疫療法は、本来身体が持っている免疫の力を活かしてがんと闘います。そのため、他の標準治療と比べて効果に即効性はない場合が多いですが、治療終了後にも治療効果が長期間継続することなどが特徴のひとつとしてあげられます。免疫療法は化学療法(抗がん剤治療)と同様、全身に効果がおよぶ全身療法のひとつです。

ただし、抗がん剤と同様、すべての患者さんに効果があるわけではなく、効果が出ない患者さんもいます。副作用の面でも同じことが言えます。

がん免疫療法の副作用

副作用には個人差があり、軽度なものから重篤な症状が出る場合まであります。従来の化学療法に比べて副作用は比較的軽度だといわれていますが、これまでの薬とは異なる作用をすることから、どのような副作用が生じるか予測がつかないので注意が必要です。

これからのがん免疫療法

現在、保険診療として認められているがん免疫療法はごく一部ですが、さまざまな免疫療法で臨床試験が国内外で進められています。2019年3月に新しく血液がんで承認された免疫療法「CAR-T細胞療法(キムリア)」をはじめ、今後さらに適用が拡大していく可能性もあります。
また、標準治療と免疫療法の併用による相乗効果や、再発・転移予防での免疫療法など、さまざまな場面での免疫療法の活用が期待されています。

がん免疫療法は、まだまだ発展を続けている最中の治療法です。一言で免疫療法といってもその内容はさまざまであり、とくに、自由診療の免疫療法に関してはさらなる慎重さが求められます。標準治療が行えなくなり、自由診療でのがん免疫療法を選択肢として考える際には、費用面を含め、免疫療法を熟知している医師にあらかじめじっくりご相談の上、判断しましょう。

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