【学会レポート I】第54回日本癌治療学会学術集会 「がん免疫療法:特に免疫チェックポイント阻害薬」

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公開日:2016年11月30日

 第54回日本癌治療学会学術集会(2016年10月20~22日)で行われた教育シンポジウム「がん免疫療法:特に免疫チェックポイント阻害薬」では、悪性黒色腫や肺がん、腎がんなど、一部が保険適用となっているがん種だけでなく、そのほかの臓器への免疫チェックポイント阻害薬の適応に関する最新の知見が報告されました。

私たちの体は、免疫の働きによって体内の異物は排除されます。一方でがん細胞は、免疫細胞の攻撃から免れるために、がんを攻撃しようとする免疫細胞系にブレーキをかける仕組みをもっていることが分かっています。

「免疫チェックポイント阻害薬」は、がん細胞にこのブレーキを踏ませないように邪魔することで、免疫機能が本来もっているがんへの攻撃を促す薬です。現在は、そのターゲットとして、PD-1抗体とPD-L1抗体、CTLA-4抗体が用いられています。

免疫チェックポイント阻害薬については、2016年2月号の最新医療の記事も併せてご参照ください。

「卵巣癌の微小免疫環境と免疫チェックポイント阻害剤の役割」

 卵巣がんは早期発見が困難で、その半数以上がⅢ~Ⅳ期の進行がんのため、産婦人科領域でも予後不良のがんといわれています。化学療法が有効な症例が多く、さまざまな抗がん剤の開発と手術療法の進歩によって短期、中期の生存率はこの10年間で大幅に改善しました。

しかし、再発率が高く、薬剤抵抗性を獲得するため、長期の生存率はあまり改善していません。近畿大学医学部産婦人科の万代昌紀氏は、「免疫療法の特徴は、効果があった際に長期生存が望めること」としています。

万代氏らの研究グループは、抗PD-1抗体であるニボルマブをプラチナ耐性再発卵巣がん(卵巣がんには標準治療としてプラチナ製剤が用いられますが、プラチナ製剤による治療から6カ月以内に再発したがん)に対して使用したところ、20例中2例で効果が認められ、長期間にわたり再発などがない状態で生存していることを確認したといいます。

今後、バイオマーカーや、既存の治療法との併用などについての検討が求められます。

現在、国内外で卵巣がんを含む婦人科腫瘍に対して抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体を用いた臨床試験が進行しています。万代氏は「基礎的な免疫機構のさらなる解明、免疫に特化したバイオマーカーの開発などで、免疫治療法はがん治療の大きな柱を担う存在になるでしょう」とまとめました。

「頭頸部がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の現状」

 頭頸部がんの中でも中咽頭がんはHPVというウイルスに関連して起こるがんとして知られています。頭頸部がんの50~60%にPD-L1抗体の発現がみられ、HPVに感染しているとさらに発現が高くなります。また、PD-L1抗体の発現が高いほど予後が悪いことも知られています。

神戸大学医学部附属病院腫瘍・血液内科の清田尚臣氏は「頭頸部がんはPD-L1抗体の発現が高く、免疫チェックポイント阻害薬が効果を発揮することが期待されます」と述べました。実際に複数の臨床試験が行われており、扁平上皮頭頸部がん(再発・転移)において抗PD-L1抗体が生存率を改善する結果も示され、臨床への応用が期待されています。

「ほかのがんと同様に、どのような頭頸部がんに効いて、どのような頭頸部がんに効果がないのかを絞り込み、再発・転移だけではなく、治癒を目指した戦略の中に抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体をどう組み込むかがこれからの課題」と清田氏は指摘しました。

「消化管癌(食道・胃・大腸癌)における免疫チェックポイント阻害薬の可能性」

 食道がん、胃がん、大腸がんは、悪性黒色腫とともに、遺伝子変異の量が多く、免疫感受性の高いがんとして知られています。愛知県がんセンター中央病院薬物療法部の室(むろ)圭(けい)氏は、免疫チェックポイント阻害薬のイピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブの臨床試験について解説しました。

食道がんでは、少数規模臨床試験の結果、ペンブロリズマブは30%、ニボルマブは17%の奏効率(がんが縮小あるいは消滅した患者割合)を示しました。副作用に関しては、肝機能異常や副腎不全などが報告されています。これらの結果を踏まえ、現在ペンブロリズマブとニボルマブの第Ⅲ相試験が行われています。

胃がんを対象にした少数規模の臨床試験の結果、ペンブロリズマブは22%、ニボルマブは14%の奏効率を示しました。効果のある人がいる一方で、半数以上は効果が見られなかったといいます。ペンブロリズマブによる平均生存期間は11.4カ月であり、室氏は「抗がん剤の初回治療(ファーストライン)並みの効果」と評価しました。

大腸がんに関しては、ペンブロリズマブを用いた臨床試験が行われ、遺伝子の修復に関わるMMR遺伝子に欠損がある症例の奏効率は62%、欠損がない症例の奏効率は0%でした。この結果から室氏は、「MMRはペンブロリズマブ効果予測因子になりうる」と述べました。

消化器がん領域ではさまざまな臨床試験が進行中です。「免疫チェックポイント阻害薬の効果を判定するためには典型的な反応やバイオマーカーの解析法などの開発が求められています。また、免疫関連の有害事象の理解と対策が必要です」と室氏は締めくくりました。

※掲載している情報は、記事公開時点(2016年11月30日)のものです。