免疫抑制細胞を減らしてがんと立ち向かう 医薬品・食品成分の最新研究

公開日:2012年02月01日
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目次

はじめに

免疫力の低下が、がんの発生や再発に関係していることが知られている。近年の研究で、この免疫力が低下した状況を作りだす免疫抑制細胞の存在が明らかになってきた。今回は免疫学の権威で、がんに関して基礎から臨床まで幅広く研究をされてきた永山先生に、特に免疫抑制細胞の話を中心にがんと免疫の関係についてお話を伺いました。

がん細胞を叩く”免疫システム”の本当の働き

がん細胞は、健康な人の体内でも毎日のように発生している。それが”がん”と呼ばれる病気の状態にまで成長しないのは、本来、人の体に生まれながらに備わっている”免疫”が、がん細胞を攻撃し、排除してくれているからだ。
この免疫は体内に発生するがん細胞に限らず、体内に侵入するさまざまな病原体に対しても働き、日々、わたしたちの体を病気から守ってくれている。

当然、免疫力が低下すれば病気に罹りやすく、がん細胞もどんどん成長してしまう。逆に、免疫力を上げれば毎日発生するがん細胞を小さいうちに退治できる。このような考えから、多くの人がこれまで免疫力を上げるためにサプリメントの摂取や生活習慣の改善などを行ってきたわけだ。

ところが最近の研究で『単に免疫力を上げるだけでは、がん細胞を攻撃・排除するのには不十分である』ことが分かってきたという。では、免疫力を高めてがん細胞を叩くにはどのようなことが重要になってくるのか。
近年、解明されてきた”免疫とがん細胞の攻防”について、永山在明・福岡大学名誉教授はこう解説する。

「成長するがん細胞に対して、免疫力を上げるだけでは十分な効果を得られない要因のひとつとして、免疫抑制細胞の異常増殖があることが明らかになってきたのです。
免疫抑制細胞には、制御性T細胞(Treg)やMDSC(ミエロイド由来免疫抑制細胞)などが存在し、これらが異常に増殖するとがん細胞の周りをブロックしてしまい、いくら免疫力を高めてもがん細胞に対する攻撃力が弱められてしまうのです」












































がん細胞の排除には従来行ってきた”免疫力を高める”ことは、もちろん大事。だが、「免疫抑制細胞に対処し、がん細胞に対する免疫力を上げることが今後の課題となっている」と話す。

がん細胞を叩く!免疫システムの2つのポイント

・免疫の活性化(攻撃力を高める)⇒従来、こればかり重視していた
・免疫抑制細胞を減らす(ブロックの解除)⇒今後、重視される課題

開発が進む免疫抑制を解除する医薬品

がん細胞をブロックしている免疫抑制細胞の働きを抑えて、がん細胞に対する免疫の働きを強化させる課題に注目が集まっている。
国内外の企業や研究機関では、その解決に向けて最先端の研究が急ピッチで進められており、実際、米国では「免疫抑制を解除させる新薬」が開発され、今年3月にFDA(米国食品医薬品局)に承認されたという。

「米国で承認されたのはCTLA-4抗体であるイピリブマブという抗がん剤です」と、その作用のメカニズムをこう説明する。
「CTLA-4は免疫を抑制する機能をもつ物質です。制御性T細胞(Treg)の表面にも存在していて、制御性T細胞の免疫抑制作用のひとつを担っている。CTLA-4抗体を投与するとCTLA-4と結合し、CTLA-4の働きを邪魔することで免疫抑制作用を起こさせなくするのです」

現在、米国では切除不能の後期メラノーマ(転移性悪性黒色腫)の治療薬としてイピリブマブの使用が認められている。また、イピリブマブと同じくCTLA-4をターゲットにした別の薬(トレメリムマブ)も臨床試験まで進んでいるという。
一方、日本国内でも免疫抑制に着目したDTA-1という抗体薬を用いた試験が行われているという。

このように免疫抑制の解除を目指した研究が新薬企業や大学等の研究機関で盛んに行われている。ただ、これらの新薬が順調に開発されていったとしても、幅広い種類のがん治療の臨床現場で使われるようになるのは、まだまだ難しいのが現状だ。

「医薬品は基本的に臨床試験を実施した疾患でしか使用が認められません。仮にイピリブマブが日本で承認されたとしても、がん患者の中でも非常に限られた種類のがん患者さんにしか使用することができません。誰もが医薬品を用いて免疫抑制細胞の働きを制御できる状況ではないのです」

しかも、現時点ではイピリブマブの治療費は1コース分で12万ドル(日本円で900万円超)といわれている。たとえ新薬の種類が増えても、がんの適用対象が拡大されたとしても、使用には超高額の医療費が大きなハードルになることは間違いなさそうだ。

注目される食品成分”シイタケ菌糸体”の免疫力増強効果

「免疫抑制を解除させる医薬品」の使用が難しい現状において、誰もが幅広く安全に使用できる免疫抑制を解除させる食品成分のような物質はないのか。
その課題について、永山名誉教授は有力な物質として「シイタケ菌糸体の抽出物が注目されている」と食品成分の名をあげる。

シイタケ菌糸体とは、シイタケの胞子が成長してできる菌糸細胞が増殖したもので、子実体(シイタケの通常食べる部分)のもとになる根の部分を抽出してエキス粉末にしたものだという。

「シイタケ菌糸体抽出物には、βグルカンの他、αグルカン、アラビノキシランといった免疫を活性化する免疫調節物質が含まれていることが分かっていて、この抽出物とがん免疫に関する臨床研究は、これまでも大学や医療機関で数多く実施されてきています。動物実験では、マウスに腫瘍を移植した島根大学医学部と小林製薬の共同研究によって、シイタケ菌糸体を与えたマウスでは、免疫抑制細胞の異常な増殖が抑えられ、それに伴って腫瘍の増殖が抑えられたこと(2011年Cancer Science誌に報告)がすでに確認されています。」

永山名誉教授らも、がん患者を対象に行った研究でシイタケ菌糸体によるがん免疫力改善の有効性を確認(研究結果1を参照)し、米国癌学会にて報告しているという。

















さらに注目したいのは、代表的な免疫療法である”ペプチドワクチン療法”の効果をシイタケ菌糸体抽出物が増強させることを動物実験(マウス)で確認した島根大学医学部の最新の研究結果(研究結果2を参照)である。
今後は、がん患者に対する免疫療法とシイタケ菌糸体併用の有効性を調べる臨床研究の実施にも期待が寄せられている。















がんに対するシイタケ菌糸体の有用性について、永山名誉教授は「シイタケ菌糸体には人の免疫抑制細胞を減少させ、同時に免疫力を高める作用があることが考えられる。免疫ががん細胞を攻撃できる状態に体を整えてくれるので、シイタケ菌糸体単独の摂取でも十分に有用であると考えられます。加えて、体に優しい食品成分という点のメリットも非常に大きい」と話している。

シイタケ菌糸体についての詳しい情報はこちら
http://www.ganmen-kobayashi.jp/index.html

イピリブマブについての詳しい情報はこちら
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201103/519119.

取材にご協力いただいたドクター

福岡大学名誉教授 医学博士 永山在明

1962年九州大学医学部医学科卒業。米国ニューヨーク市公衆衛生研究所研究員、九州大学助教授、佐賀医科大学教授、福岡大学教授(微生物・免疫学講座)を経て現在に至る。

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