【QOL(生活の質)】抗がん剤の副作用によるしびれの対処と生活

公開日:2016年02月29日

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 がん患者さんが悩む症状の1つが、手足などに感じる「しびれ」。これは抗がん剤の副作用で、末梢神経の障害で起こります。しびれに対処するための日常生活における注意や生活の工夫について紹介します。

症状を自覚したら医療者に相談を

 抗がん剤の副作用として、しびれという末梢神経障害が生じる場合があります。出現時期や強さには個人差がありますが、抗がん剤投与後約2〜3週間後から手指や足底に感じることが多いようです。こうした副作用がいつまで続くのかという点にも個人差があり、抗がん剤治療終了後、症状が改善するまで数カ月から長いときは1年以上かかる場合もあるといわれています。

抗がん剤によるしびれの出現メカニズムについては、残念ながらはっきりとはわかっていません。しかし、しびれを起こしやすい抗がん剤として知られているものがいくつかあり、神経細胞が障害を受けることが原因だと考えられています。

しびれを感じたら、主治医に伝えましょう。患者さんの中には症状を自覚しても我慢してしまうケースや、治療中断への不安から主治医に伝えないケースも少なくありません。確かに、症状が悪化すると抗がん剤の減量や治療中止となるのが一般的です。しかし、症状が悪化してからこうした対応をすると完全に回復するのが難しくなる恐れもあるのです。

しびれのような末梢神経障害の症状は、我慢をしても回復はしません。また、目には見えない症状なので、患者さん自身にしかわからない苦痛です。自分一人で抱えないで、必ず患者さんを支援する主治医をはじめとする医療者に伝えてください。薬で症状を軽減する対症療法が奏効する場合もあります。患者さん一人ひとりの症状に応じた解決策を医療者と共に探しましょう。

なお、末梢神経障害は、抗がん剤の副作用以外の原因でも起こることがあります。したがって、適切な対応につなげるためにも、抗がん剤治療中にしびれの症状を自覚したら、まず主治医など医療者に相談することが大切です。

危険な事故予防のためのセルフケア

 手や足にしびれを感じると、しびれのために「物が持てない」「つまずきやすい」など、日常生活にも支障が生じ、転倒などの事故にもつながりかねません。また、指先がしびれて鈍くなっていると、刃物を使うときにけがをしがちです。このほかにも、しびれていると、熱さや冷たさも感じにくくなるので、火傷や凍傷にも注意なければなりません。しびれとうまく付き合いながら暮らしていく必要があります。

歩いて移動する際には、つまずかないように、足元をよく確認しましょう。注意すべき危険なポイントは、階段やちょっとした段差のほか、玄関マットやじゅうたんなどの敷物なども要注意。また、足がしびれていると、立ち上がるときに力が入りにくいことがあるので、転倒しないようにゆっくり立ち上がるように心がけましょう。脱げやすいスリッパやサンダルも転倒の原因になります。ヒールが高い靴は転びやすいので避けましょう。

歩きにくい場合は、杖や手すりを使って慎重に一歩ずつ。足だけではなく手のしびれもある場合は、車椅子の利用をはじめ移動の介助を依頼するといいでしょう。無理をせずに、あなたの周りにあるサポート資源を最大限に活用しましょう。療養生活を支える社会制度やサービスを利用すると、福祉用具の購入やレンタルができます。

症状軽減のためのセルフケア

 日常生活の工夫で症状を軽減しましょう。正座をすると足に体重がかかりすぎて、足がしびれてしまうのはよく知られています。しびれの症状がある時期は、床や畳に座る生活より、可能なら椅子に腰かける生活にしましょう。

手足が冷えると血行が悪くなるので、症状が強くなる場合があります。夏でも素足は避けて靴下をはいたり、手袋をしたりして、冷えないようにしましょう。ただし、足首のゴムがきつめの靴下は避けてください。

血行促進のためには、入浴も有効なセルフケアです。シャワーで済まさずに、湯船にゆっくり浸かって体を温めると、血行が良くなります。また、適度な運動も循環を促します。症状のある手足の筋肉を曲げたり伸ばしたりする運動や、湯船に浸かりながら手足の指先を動かすのもいいでしょう。ただし、いずれも無理のない範囲で運動を行い、転倒などしないように注意してください。

暑い時期にはエアコンの冷気や扇風機の風に直接当たらないようにする工夫も大切です。また、冷えた缶などを直に手で持つと、しびれを強く感じることがあります。冷たいものはマグカップや水筒などに移し、飲みすぎて体を冷やさないようにご注意を。

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しびれがあるときの役立ちグッズ

 便利な道具の活用など、ちょっとした工夫でけがや事故から身を守ることができます。調理などの際には、包丁で手を切らないように、ピーラーやフードプロセッサーなどを使用するといいでしょう。また、肉や魚は購入時に店で用途に合わせてカットしてもらえばいいですし、野菜はすでにカットされた状態のものが売られているのでそうしたものを利用すると便利です。

洗面や手洗いなど可能な限り温水を使用し、炊事や洗濯時は厚めのゴム手袋を着用しましょう。箸が持ちにくい場合は、スプーンやフォークを代用します。爪を切るときには、爪切りより爪ヤスリを使用したほうが安全です。

ペットボトルや缶のふたなどが開けにくい場合は、ゴム手袋や指サックを使うと、すべらないでふたが開けやすくなります。飲料水を携行する場合には、ペットボトルよりもワンタッチでふたが開く携帯容器のほうが使いやすいでしょう。

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