がんの成長を阻止し、コントロールするホルモン療法

公開日:2011年02月26日

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がんの栄養源を枯渇させるホルモン療法

がん細胞の中には、その成長にホルモンを必要とするものがあります。
ホルモン療法とは、がん細胞特有の性質を利用して、成長に必要なホルモンとは反対の作用をするホルモンを投与して、がん細胞の成長・増殖を妨げます。がん細胞を死滅させるわけではなく、がんの成長を阻止してコントロールしていくのが特徴となります。ホルモン治療はその治療における補助的な役割を担う場合も多くあり、放射線などと組み合わせて使用されることもあります。

ホルモン療法はほかの抗がん剤治療と比べると副作用が少なくてすみ、QOLを保ったまま治療を続けることができるといわれています。ただ長期治療になっていく場合には副作用も含めた治療における正しい理解が必要です。治療の対象となる主ながん種は、乳がん、子宮体がん、前立腺がんなどです。

乳がんにおけるホルモン療法 副作用は比較的少ないですが、徐々に現われます。

乳がんにおけるホルモン療法とは、女性ホルモンの作用を効かなくさせる、またはホルモンの産生を抑制することにあります。体内の女性ホルモン濃度を下げ、女性ホルモンをエネルギーとしているがん細胞の栄養源を絶ち、死滅においやります。

乳がんの再発の場合は、治癒という目的ではなくがんの進行をできるだけ遅らせることが中心となってきますので、症状を緩和して痛みや苦痛をできるだけ少なくし、副作用を最小限にとどめて、QOLを保つことが大事です。局所再発には初回の手術での取り残しの可能性と、再発の一症状として現れた場合が考えられます。取り残しの場合には初回治療と同様の手術や、放射線治療が考えられます。

再発の一症状として現れた場合は遠隔転移として扱われ、ほかの転移状況を考慮した治療方法が選択されます。肺や骨などのどこかに転移があれば、リンパ節や血管を通り、全身に回っている可能性があります。この場合には化学療法やホルモン療法を用いた全身療法が選択されます。QOLの維持向上を目的とする場合は、ホルモン・レセプター(細胞がホルモンをキャッチし、探知する分子)が陽性で適用のある患者様であれば、副作用が少ないとされるホルモン療法が優先される場合が多いでしょう。

ホルモン療法は、女性ホルモンを制御することから、ホルモン濃度の低下による副作用がおきるのが特徴です。ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)や発汗、気分の落ち込みといった更年期障害に似た症状が代表的です。ホルモン療法における副作用は投与開始時から始まる急性のものではなく、徐々に体調が変化してくるという特徴があります。
閉経前と閉経後かでホルモン療法の種類は異なります。さらに詳しくはお知りになりたい方は、「再発・転移性乳がんを生きるための100の質問」に記載されておりますので、本をご覧ください。

子宮体がんにおけるホルモン療法 化学療法の補助的な役割で使用します。

子宮体がんにおけるホルモン療法は、子宮内膜異形増殖症や早期に発見されたがんで、妊娠・出産の希望があり子宮を残したいと希望する若い女性の場合に適応される場合に多く選択されています。
ただし、子宮体がんの再発には、子宮やそれに続く腟や骨盤内に発生する局所再発と、遠隔転移(肺や肝臓など)再発があります。局所再発の場合は放射線療法が行われる場合が多く、遠隔転移の中でも複数の転移がない場合、特に肺転移に対しては外科療法が行われることもあります。
多くの転移が認められる場合には、ホルモン療法や化学療法が行われています。化学療法の効果が不十分な場合や全身の状態があまりよくなく化学治療を行うのに適さない場合に、化学療法の代替治療として選択される場合があります。

また、痛みの緩和を目的とした、腸閉塞解除の外科療法や、骨転移に対する放射線療法などを行う場合もあります。子宮体がんの治療は、患者さんごとに対応が異なる場合があるため、治療方針については医師などとよく相談することが必要です。

前立腺がんにおけるホルモン療法 効果を最大限にするために薬物療法と組み合わせ

前立腺がんでは、局部のみの再発であるなら放射線治療が選択される場合が多いですが、前立腺あるいはその周辺への放射線治療をすでに受けている場合は、同一部位に放射線治療を施すことはできません。
がんの他部位への散らばりがある可能性が最初から予見される場合、放射線治療後に検査での数値上昇が生じるなどして、前立腺の外部に微小転移がある可能性が感じられる場合は、ホルモン療法が適用される場合があります。前立腺がんは、骨やリンパ節への転移が多いですが、ほかの部位にがん細胞が転移している場合であっても、前立腺がんの性質をもっている場合にはホルモン療法が効果をみせることがあります。
前立腺がんのようなに、がん細胞が男性ホルモンをエネルギー源にしているような症例では、ホルモン療法の有効性が高いと言われています。ただし、ホルモン療法だけでは完治は難しく、長く続けることで効用が薄れ、再びがんが進行することもあります。効果をみながら、薬物療法に切り替えることが必要になるでしょう。
骨転移などの場合には、放射線治療によって骨の痛みを緩和することもできるでしょう。前立腺がんのホルモン療法に反応しない症例に対して、ドセタキセルという成分の抗がん剤療法が有効であるとエビデンスがでています。

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