2018年10月27日(土)14:00~ フクラシア八重洲(東京)にて開催 あきらめないがんセミナー

放射線治療を知る

【特集記事】放射線治療医からセカンドオピニオンを受けるメリット

最先端がん治療紹介の編集方針について

「再発転移がん治療情報」では、がん治療に精通した医師の方へのインタビューや学会、患者会ほか独自の取材を通して、新しいがん治療情報を随時ご提供しております。手術、抗がん剤、放射線治療と言った標準治療の中でも最新の治療法や、免疫療法や漢方など注目の治療法を取り上げていきます。また、このサイトでは特に進行がんやがんが再発・転移された方に有用と思われる情報を掲載していきたいと考えております。
がん治療に関するニュースや情報サイトは他にもたくさんありますが、再発・転移がんに特化したものは少なく、また、毎日更新される膨大な情報をチェックし、ご自身の治療に役立つものをピックアップしていくことは容易ではありません。
本サイトでは、再発・転移がんの治療を対象としたトピックをどなたにも分かりやすくお伝えし、治療を必要とされる患者様へ新しい選択肢をご提供したり、前向きに治療に取り組むお手伝いが出来るサイト作りを目指しております。

公開日:2018年9月28日
柏原 賢一先生
東京放射線クリニック 院長
一般社団法人あきらめないがん治療ネットワーク 理事

日本で放射線治療が普及しない理由

定位放射線治療 、強度変調放射線治療、はX線・γ線による治療方法、陽子線治療、重粒子線治療は粒子線を用いた治療、その他にも中性子とα線を用いているホウ素中性子捕捉療法、体内に放射線源を入れて照射する密封小線源治療などがあります。近年、放射線による治療は近年大きく進歩してきました。がん細胞だけに集中的に放射線を照射し、周囲の正常細胞には影響を与えないように治療ができるようになってきました。

放射線療法の治療成績は手術と同等以上といわれます。確かにそうなのですが、手術、抗がん剤治療と並んで3大治療の1つである放射線治療は、日本では十分に普及しているとはいえません。米国ではがん患者の半数以上が放射線療法を受けているのに対して、日本ではせいぜい30%程度です。

その理由はいろいろ考えられますが、日本ではがんの治療は手術が基本という考え方が浸透していることが大きく影響しているでしょう。

また、大学医学部に放射線科の教室があっても、講義は「診断」が中心で、「治療」について学ぶ機会が少ないという事情もあります。そのため、医師が意識的に知識を深めなければ、いつまでたっても馴染みのない治療法であり、縦割り組織の日本の医療機関ではさらに遠い存在になるのも不思議ではありません。医師の間でも、放射線治療の効果について十分に知られていないのです。

では、米国で放射線治療を受ける患者の割合が高いのはなぜでしょう。診療科の垣根を越えて一人ひとりの患者さんに最適な治療法を検討する環境が整っているからです。そこで重要な役割を果たしているのがキャンサーボードです。

キャンサーボードは、手術、放射線療法、化学療法の各分野から専門的な知識と技能をもった医師や医療スタッフなどが集まって、がん患者の症状、状態、治療方針などについて意見交換などをするためのカンファレンスです。

日本でも厚生労働省が2008年に「がん診療連携拠点病院の整備について」でがん診療連携拠点病院の指定要件として、キャンサーボードを設置し、定期開催をするように通知しました。キャンサーボードは、個々の患者(家族)にとって質の高いがん医療を提供することが目的ですが、日本では「診断が困難な症例、治療方針の難しい症例など」に対象が限定されてしまっているのが実情です。

前立腺がんの治療成績――強度変調放射線治療(IMRT)は重粒子線治療と同等以上

新しい放射線治療機器が次々に開発され、がんの治療技術は日進月歩で向上しています。がんに対して3次元のさまざまな方向・角度から照射できる技術や、放射線の強さを変える技術や、がんの形に合わせて高精度で照射する技術などによって、副作用を抑えて、高い治療効果を生み出すことが可能になりました。

がん治療に使われる放射線は、光子線(X線、γ線など)と粒子線(陽子線、重粒子線)の2つに大きく分けられます。がんの内部で最大のエネルギーを放出して消失する陽子線や重粒子線を使った治療法は革新的で理想的ともいえます。

現在、陽子線治療は小児の限局性の固形悪性腫瘍、骨軟部腫瘍、頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)、前立腺がんが、また、重粒子線治療は骨軟部腫瘍、頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)、前立腺がんが、それぞれ保険適用の対象になっています。

参考までに一言付け加えると、高価な最先端医療機器を使えば、それだけ医療費はかさみます。前立腺がんの治療成績については、当クリニックでも行っている強度変調放射線治療(IMRT)は他施設の重粒子線治療と同等以上です。IMRTは、さまざまな方向から放射線を照射する時に、線量に強弱をつける治療法です。

がんの形が複雑な場合や、がんの近くに正常組織が隣接している場合に、正常組織に当たる放射線の量を最小限に抑えながら、がんに多くの放射線を当てることが可能です。前立腺がん、頭頸部がん、脳腫瘍では、正常組織にも大きなダメージを与えてしまうことから、従来の放射線治療では困難でしたが、IMRTを使うことで、正常細胞へのダメージをより少なくできるようになったのです。

当クリニックでも最近は放射線治療を希望して他の医療機関の泌尿器科から紹介されてくる前立腺がんの患者さんが増えています。徐々にではありますが、放射線治療の効果とメリットが一般の方に浸透してきているのかもしれません。

免疫療法と放射線療法の併用でアブスコパル効果

周知のように、近年の抗がん剤の開発は目覚ましく、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場でオーダーメイドのがん治療が現実味を帯びてきました。これらの薬剤と放射線治療との併用が治療効果を上げることもわかってきました。肺がん、頭頸部がん、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者を対象にした米国の臨床試験で、免疫チェックポイント阻害薬と定位放射線治療の併用効果が報告されています。

いま注目されているのは、免疫療法と放射線療法の併用により「アブスコパル効果」の発現を高める治療です。放射線治療では、放射線を照射したがんだけでなく、それ以外のがんまで小さくなることがあります。こうした間接効果を「アブスコパル効果」といいます。

放射線ががんに照射されることによってがんに対する免疫が活性化し、放射線が当たってない部分で連鎖的に抗がん作用が起こることがわかっています。大腸がんが肺に転移した患者さんで、肺の転移巣一か所に放射線を照射したところ、照射していない他の肺に転移がんが消失するという例もあります。将来、術後の抗がん剤治療に取って替わることも夢ではありません。

勇気をもって意思表示。セカンドオピニオンの積極的活用を

ここまで述べてきたように、放射線治療にはさまざまなメリットがありますが、日本には放射線治療の専門医が少なく、国内のどこででも均質の医療が提供されているわけではありません。

セカンドオピニオンを聞く先や、放射線治療を受ける医療機関を選ぶ場合、厚生労働省が定める施設基準や日本放射線腫瘍学会の認定基準が目安の1つになるでしょう。

当クリニックには、他の医療機関で「放射線治療はできません」、「抗がん剤しかありません」などといわれ、治療方針に疑問を持った人がセカンドオピニオンを求めて来院します。セカンドオピニオンは、主治医以外の医師に求める第2の意見です。

患者さんの中には、セカンドオピニオンは医師を変えることと誤解している人がいますが、患者さんにとって最善となる治療を患者さんと主治医で決めるために別の医師の意見を聞くことが趣旨です。セカンドオピニオンを聞いて、その結果別の医師の治療を受けるために病院を替えることはあります。

もう1つ重要なことは、セカンドオピニオンを求める先は、主治医とは違う診療科の医師を選ぶということです。外科医を主治医に持つ患者さんが、ほかの病院外科医のセカンドオピニオンを聞くよりも、腫瘍内科や放射線科の医師の見解を聞く方が、違った視点から治療法の選択肢を知ることができるためです。

放射線科医は病理医と同様にすべてのがんに関わるため、がん全体を把握し、中立的な視点で評価できるため、セカンドオピニオンに向いていると言えるでしょう。

当クリニックでは月に15~20人がセカンドオピニオンを受けていますが、年に40人ぐらいは放射線治療に切り替わります。それは決して、私が放射線科医だから放射線治療を推薦し誘導しているということではありません。主治医の方針どおり手術を勧めることがあれば、化学療法を勧めることもあります。その方に合った治療法をニュートラルな視点からお伝えし、また、それぞれの選択肢のメリット、デメリットをお話するようにしています。それが医師の役割であると私は考えます。

主治医との関係が悪化することを懸念して、セカンドオピニオンのことを言い出しづらいという人も多くいらっしゃいますが、気になることがあれば質問して、受けたい治療を主張すればいいと思います。聞き分けのよい“優等生”である必要はありません。勇気をもって意思表示をしてください。

治療の選択肢を知る権利が、患者さんには当然あるべきなのです。