【トピックス】オプジーボ、一部の食道がん患者に対し全生存期間を有意に延長

公開日:2019年12月26日

患者数が増えているといわれる食道がん。小野薬品工業株式会社は10月1日、食道がん患者に対する臨床試験で、免疫チェックポイント阻害薬の一つニボルマブ(製品名:オプジーボ)が、化学療法と比較して全生存期間を有意に延長したと発表しました。

目次

オプジーボの有効性や安全性を検証

今回、小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ社が行ったのは、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む併用療法(いくつかの抗がん剤を組み合わせて用いる治療)で効果が見られなかったり、治療の継続が難しくなったりした、切除不能な進行・再発食道がんの患者419例を対象とした、ATTRACTION-3試験という第3相臨床試験※1です。

※1 臨床試験は、通常3つのステップ(相)を踏んで進められ、3つのステップを経たデータをまとめ厚生労働省に承認申請を行います。最終段階の第3相試験では、100~1000人規模の患者を対象に、標準治療などとの比較を行い、有効性と安全性を検証します。

この試験では、オプジーボ群と化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)を比較し、有効性および安全性の検証を行いました。

オプジーボ群(210例)には、「オプジーボ240mg」を2週間ごとに静脈内投与し、化学療法群(209例)には、「ドセタキセル75mg/㎡」を3週間ごとに静脈内投与、または「パクリタキセル100mg/㎡」を6週間・1週間ごとに静脈内投与、その後は2週間休薬し、比較検証を行いました。

その結果、オプジーボ群は化学療法群と比べ、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を示し、死亡リスクでは23%低減となりました。また、オプジーボ群は化学療法群に比べ、生活の質(QOL)においても有意な改善を示しました。

食道がんにおける治療の可能性を拡大

食道がんは、食道の内面を覆っている粘膜に生じる悪性腫瘍で、腫瘍の進行とともに外側の組織へ広がっていきます。主に扁平上皮がん※2と腺がん※3の二つに分類され、国内の患者の多くが扁平上皮がんといわれています。

食道がんに対する標準治療で効果が見込めなくなった場合に、有効な治療の選択肢になりうる治療薬として注目されてきたのがオプジーボです。

※2 食道などの内部が空洞になっている臓器の内側の粘膜組織から発生するがん。

※3 腺組織とよばれる上皮組織から発生するがん。

免疫細胞は活性化して病原体やがん細胞と戦いますが、免疫が高まり過ぎると健康な細胞も傷つけてしまう場合があるため、私たちの体は免疫細胞の働きにブレーキをかけて(この役割を免疫チェックポイントといいます)免疫のバランスを維持しています。

がん細胞はこのブレーキ機能を逆手にとって、免疫細胞ががん細胞を攻撃しようとするときにブレーキをかけ、免疫細胞から逃れようとします。オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫細胞から逃れて生き延びようとする(ブレーキをかける)のを阻止し、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。

オプジーボは、国内において2014年に悪性黒色腫(メラノーマ)への治療薬として承認されて以来、肺がん(小細胞肺がん)、腎細胞がん、頭頸部がん、胃がんの一部などに適応を広げています。現在、食道がんのほかにも、肝細胞がん、膀胱がん、卵巣がん、大腸がんなどを対象とした臨床試験が行われており、がん治療におけるさらなる貢献が期待されています。

オプジーボなど、免疫チェックポイント阻害剤(薬)に関する過去のトピックスは、以下をご覧ください。

■2016年1月29日
【最新医療】がん治療の可能性を広げる免疫チェックポイント阻害薬 ニボルマブの効能・効果「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」で追加承認
■2016年8月31日
【学会レポート 2 】免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理
■2016年11月30日
【学会レポート I】第54回日本癌治療学会学術集会 「がん免疫療法:特に免疫チェックポイント阻害薬」
■2017年1月31日
【最新医療】免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の薬価改定 2月1日から半額に
■2017年3月31日
【特集記事】研究進む、免疫チェックポイント阻害薬

ポイントまとめ

  • 切除不能な進行・再発食道がん患者を対象とした臨床試験で、オプジーボが全生存期間・死亡リスク・QOLが有意に改善
  • オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫から逃れて生き延びようとするのを阻止する薬
  • オプジーボの臨床試験は食道がん以外でも行われており、さらなる効果が期待されている

コラム:男性に多い食道がん。喫煙・飲酒でリスクが上昇

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によると、食道がんと新たに診断される人数は、男性では1年間に10万人あたり31.0人、女性では5.6人と、圧倒的に男性が多くなっています。年齢別でみると、50歳代から増加を始め、70歳代でピークを迎えます。

食道がんの主な要因は、喫煙と飲酒で、特に日本人に多い扁平上皮がんは、喫煙・飲酒と強く関連するといわれています。飲酒により体内に生じるアセトアルデヒドは発がん性の物質であり、アセトアルデヒドの分解に関わる酵素の活性が生まれつき弱い人はリスクが高くなることが報告されています。また、喫煙、飲酒の両方の習慣がある人はさらにリスクが高まることが指摘されています。

関連記事

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。