【トピックス】がん免疫療法「CAR-T細胞療法」が、白血病で承認。 保険適用が間近に

公開日:2019年02月27日
がん免疫療法「CAR-T細胞療法」が、白血病で承認。

厚生労働省の専門部会は2月20日、免疫細胞を活用して一部の白血病を治療する新型の治療薬「キムリア」(ノバルティスファーマ)の製造販売を了承したことが報じられました。免疫チェックポイント阻害剤に続く、新たながん免疫療法と位置づけられるCAR-T細胞療法。画期的な治療法として注目されています。

目次

がん種によっては根治の可能性も

細胞

各メディアの報道によると、厚生労働省はキムリアを早ければ3月にも正式承認し、5月には公的医療保険が適用される見通しです。

キムリア点滴静注(一般名:チサゲンレクルユーセル)は、「CAR-T細胞」を使ったがん免疫治療製剤で、患者さんから採取した免疫細胞(T細胞)を遺伝子操作して体内に戻し、がん細胞を攻撃する免疫療法の1つです。この治療法で先行する米国では薬価が約5000万円とかなり高額ですが、がん種によっては根治を目指せると話題になっているといいます。

今回製造販売が了承されたキムリアの治療対象は、B型細胞性急性リンパ芽球性白血病(25歳以下)とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫となっています。

患者さん自身の細胞を利用する、CAR-T細胞療法

血液細胞には、「白血球」、「赤血球」、「リンパ球(T細胞、B細胞、NK[ナチュラルキラー]細胞)」などがあり、血液細胞のがん化によって起きる病気が「白血病」です。B細胞ががん化した急性リンパ性白血病はB細胞性急性リンパ性白血病と呼ばれています。

がん化したB細胞(白血病細胞)の表面に、しばしば「CD19」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。

一方、ヒトの体内には異物やがん細胞を排除する免疫機構が備わっていて、T細胞が中心的な役割を担っています。

CAR-T細胞療法では、まず患者さん自身のT細胞を採取し、遺伝子改変技術を使って白血病細胞のCD19を特異的に認識する受容体である「CAR」(chimeric antigen receptor:キメラ抗原受容体T細胞)をT細胞に組み込みます。白血病細胞を発見することがCARの役割で、CARを組み込まれたT細胞がCAR-T細胞です。CAR-T細胞を培養し増殖させ後、患者さんの体内に投与します。

CAR-T細胞療法の流れ

患者さんが本来持っているT細胞が改変されたCAR-T細胞は、白血病細胞を認識するように設計されています。体内に戻されたCAR-T細胞は、CD19を発現している白血病細胞を発見し、攻撃します。これによって、白血病細胞を死滅させたり、増殖を抑制したりする効果が期待されます。

なお、海外で行われた臨床試験で、サイトカイン放出症候群、神経毒性などの副作用が報告されています。

キムリアは患者さん自身のCAR-T細胞が主成分の医薬品であり、患者さんごとに異なる治療薬です。個別化医療がいよいよ本格化してきました。

ポイントまとめ

  • ・キムリアの治療対象は、B型細胞性急性リンパ芽球性白血病(25歳以下)とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫。
  • ・CAR-T細胞療法とは、ヒトに備わっている免疫細胞の中のT細胞を採取し、白血病細胞を認識するように遺伝子操作したT細胞(CAR-T細胞)を体内に戻すことで、T細胞に白血病細胞を攻撃させる治療法。

【コラム】CAR-T細胞療法、固形がんの治験に向けて整備進む

1月29日、ノバルティスファーマ株式会社はCAR-T細胞療法の治験用製品の製造に関して、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(神戸市)に製造委託する技術移転を完了した、と発表しました。同社はCAR-T細胞を世界で初めて米国で実用化し、アジアでの製造は初めてです。

ノバルティスオンコロジージャパンのプレジデントのブライアン・グラッツデン氏は、「CAR-T細胞医療は、患者さん自身の細胞を用いて製造を行う革新的で高度に個別化された治療法です。複雑で繊細なCAR-T細胞の製造に関して、同機構と提携し、治験用製品製造に関する技術移転を完了できました。

同機構におけるCAR-T細胞製造の可能性は、革新的な治療法を心待ちにしている患者さんや医療従事者はもとより、日本の再生医療の発展にも大きく貢献できると信じています」などとコメントしています。

また、武田薬品工業とノイルイミューン・バイオテック株式会社(東京)は固形がんに対するCAR-T細胞療法の治験を今年中にも開始すると発表しました。治験薬はNIB-102とNIB-103で、今後2社による共同開発が進められ、NIB-102については年内に第Ⅰ相臨床試験が開始される予定としています。

関連記事

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。