【学会レポート 1 】外来化学療法の現状と課題

公開日:2016年08月31日

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外来化学療法の現状と課題

 従来、抗がん剤によるがん治療(がん化学療法)は入院して行うことが一般的でしたが、新しい薬剤が開発され、あるいは副作用が軽減され、今では外来でも安全にがん治療を受けることができるようになりました。

7月28日から30日まで神戸市で開催された第14回日本臨床腫瘍学会学術集会(会長:神戸大学大学院医学研究科腫瘍・血液内科教授)では各医療機関での外来化学療法の取り組みが報告され、その現状、課題が浮き彫りになりました。

先を見越したアドバンスケアプランニングを

 外来化学療法を受けるがん患者さんは病気の進行や急性症状、副作用などで緊急入院することがあります。筑波大学附属病院看護部では、通院治療中に緊急入院した患者さんの実態調査を行いました。電子カルテの情報から、直前の全身状態(パフォーマンス・ステータス:PS、注1)、治療内容、入院の原因、転帰などを分析し、その対応について検討しました。

2014年6月から2015年5月までに外来化学療法を受けた912人(平均年齢約62歳)のうち204人(22%)が緊急入院しました。消化器がん、肺がん、婦人科がんが多く、患者さんの入院直前の状態はPS2以下が半数を占め、PS3が3割、PS4は1割弱だったといいます。

入院の理由は、原病の増悪が6割以上を占め、感染症、有害事象(注2)がそれぞれ約1割でした。また、感染症は肺炎、蜂窩織炎、敗血症などでした。

こうした結果から、同看護部の入江佳子さんは「PS不良患者が緊急入院のリスクが高く、治療の早い段階から病状の変化に応じて先を見越したアドバンスケアプランニングを積極的に取り入れていく必要があります。また、医療スタッフが病状の悪化を予測してリスクに応じた準備を整え、患者や家族の治療に伴う不安を軽減する対応が必要です」と報告しました。

スクリーニングシートの改良が課題

 長崎大学病院外来化学療法室では2015年7月から外来化学療法室に通院中の患者さんに対し、身体・精神症状の苦痛スクリーニングを開始しました。同年8月までに外来化学療法室を利用した患者さん266人を対象に、苦痛スクリーニングシートとカルテの記載内容から苦痛の実態を解析しました。

苦痛スクリーニングシートは、「最も困っている症状」「気になっていること」「痛み」「つらさと支障の寒暖計(注3)」「他部門への紹介希望」などの項目で構成されています。

解析の結果、患者さんの記入率が最も高かった「つらさと支障の寒暖計」(85%)と、最も低かった「他部門への紹介希望」(3%)の間にばらつきが見られましたが、介入率はどの項目も60%を超えました。「最も困っている症状」はしびれが最も多く、ほかにだるさ、疲労、下痢、口内炎などで患者さんが悩んでいることが明らかになりました。

同化学療法室の土屋暁美氏は、苦痛スクリーニングシートを導入したことで患者さんの苦痛と希望する支援が明確となったと評価する一方で、「苦痛があり介入を希望する患者さんへの介入率をさらに上げるようなシステムが必要であり、記入しやすい質問項目の検討と簡易に把握できるような用紙の検討も必要。今後、介入が有効であったかどうかを検証するためにチェック欄を設けるなどスクリーニングシートと記録の改善が必要になります」と指摘しました。

薬剤師の継続的な面談が必要

 三重大学医学部附属病院では2009年4月に化学療法部が開設され、薬剤師も外来化学療法関連業務に携わるようになりました。当初は、薬剤師の業務は抗がん薬の調整が主体で、人員不足のために患者指導・教育に関してはほとんど関与できなかったといいます。その後、外来化学療法の件数の増加に伴って、2015年5月から外来化学療法部が増床されました。薬剤師も増員され、業務が拡大しました。

同病院薬剤部では、外来化学療法において薬剤師が毎回患者と面談し、継続してフォローアップすることで得られる効果について検証しました。その結果、増床前後で指導した患者の割合は2.7%から79.1%に増加しました。薬剤師が行った薬学的介入(疑義照会〈注4〉、処方・検査等の提案)の数も有意に増加し、介入に対する医師の応諾率は55.7%から80%に有意に増加しました。

さらに、薬剤師の処方提案によって化学療法に関連する有害事象は半数で症状の改善が認められました。薬剤部の日置三紀氏は「今回の調査結果から、薬剤師が外来化学療法に伴う有害事象の軽減に貢献できる可能性が示唆されました。薬剤師は継続的に患者に関わることで有害事象の予防や軽減に尽力する必要があります」と締めくくりました。

注1 パフォーマンス・ステータス(performance status:PS) 全身状態の指標の1つで、患者さんの日常生活の制限の程度を5段階で示す

  1. 0 まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える
  2. 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。例:軽い家事、事務作業
  3. 2 歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
  4. 3 限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
  5. 4 まったく動けない。自分の身のまわりのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす

注2 有害事象 治療・処置で生じたあらゆる好ましくない症状、徴候、臨床検査値の異常で治療との因果関係は問わない。一方、副作用は薬剤の作用のうち主要な作用以外の作用(有益な作用、有害な作用)。有害事象と副作用は厳密には異なる

注3 つらさと支障の寒暖計 がん患者さんの心の状態を測定する簡便な方法で、適応障害やうつ病をスクリーニングすることが目的

注4 疑義照会 医師の処方せんに疑問や不明点がある場合、薬剤師が処方した医師に問い合わせて確認すること

■第14回日本臨床腫瘍学会 ポスター

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