【最新医療 II】再発の胃がんにおける治療法

公開日:2014年06月30日

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胃がんにおける転移の基本的な考え方

 胃がんは胃の内側にある細胞から発生すると考えられています。はじめは目に見えないほどの小さな細胞ですが、時間をかけて数ミリほどに成長して、発見が可能になります。大きくなったがん細胞は増殖し、転移などをしていくと考えられています。

 胃がんの転移とは、がん細胞が最初に発生した場所から、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパ液の流れに乗って別の臓器や器官へ移動し、そこで増えることをいいます。胃がんの転移で多いのは、リンパ液の流れが集まるリンパ節へ転移するリンパ行性転移、肺や肝臓、脳、骨など血液の流れが豊富な場所への転移する血行性転移、がんが進行して胃壁をつきやぶった際、お腹のなかにがん細胞が散らばり、ほかの臓器に転移する腹膜播種性転移です。

 胃がんが局所にとどまっている場合には、手術による根治を目的とした治療が有効ですが、転移がある場合などは、抗がん剤を用いた進行を遅らせることを目的とした化学療法が行われます。胃がんの自覚症状として起こるものは、腹痛、吐き気(嘔吐)、食欲不振、体重減少、黒色便(下血)などが挙げられます。

 

転移のある胃がんにおける化学療法

 転移が認められる胃がんの治療では主に、薬による化学療法が行われます。内服薬または点滴などで薬剤を投与し、がん細胞を攻撃させます。

 現在、胃がん治療に使われている薬剤は5-FU、マイトマイシンC、メソトレキサート、シスプラチン、イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセルなどがあります。これらの薬剤はがんの進行状況(フェーズ)に合わせて、単剤で使用したり、いくつかを組み合わせて使用します。

 化学療法は日々進歩しており、根治が難しいとされている場合でもQOL(生活の質)を維持しながら進行を遅らせる研究が進められています。抗がん剤を使った治療は副作用もありますので、個人の体力や調子に合わせて、医師が様子を見ながら治療を進めていきます。

 

腹膜藩種性転移における先進医療

 腹膜播種における治療は化学療法が中心となっています。最近では先進医療という位置づけにおいて、「パクリタキセル腹腔内投与及び静脈内投与並びにS-1内服併用療法」が行われています。適応症としては「腹膜播種又は進行性胃がん(腹水細胞診又は腹腔洗浄細胞診により遊離がん細胞を認めるものに限る。)」とされています。

 先進医療とは、厚生労働省(厚生労働大臣)から承認された高度で最先端の医療技術を用いた医療行為のことを意味し、放射線の一種である陽子線を病巣に照射する「陽子線治療」や、放射線の一種である重粒子線(炭素イオン)を病巣に照射する「重粒子線治療」などが代表的なものとして挙げることができます。

 先進医療は保険診療との併用が認められており、保険適用とされている治療については保険の範囲内で治療費を負担できます。通常ですと混合診療となってしまい、保険適用とされる治療も自己負担となるのですが、これが免除されるような仕組みです。厚生労働省によると、下記のように明記されています。

1、「先進医療に係る費用」は、患者が全額自己負担することになります。「先進医療に係る費用」は、医療の種類や病院によって異なります。
2、「先進医療に係る費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。
つまり、一般保険診療と共通する部分は保険給付されるため、各健康保険制度における一部負担金を支払うこととなります。

※厚生労働省のHP( http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/

 

放射線を用いた緩和照射

 放射線治療には治癒を目的とした根治照射と、がんによって引き起こされる症状を緩和するために行う緩和照射があります。緩和照射は転移性のがんも対象になります。胃がんの場合ですと、がんが原因となって下血が起こる場合があります。緩和照射では止血にも有効とされています。また、がんが骨に転移した場合には痛みがでてきますが、これらに照射することで、骨の部分のがんを消失させ、痛みを和らげることができます。

 

免疫療法は胃がんにも効果があるのか

 胃がんに対する免疫療法については、全身的に転移が広がり、手術療法ができなかった胃がん患者さんに対して、局所の樹状細胞ワクチン療法と低用量の経口抗がん剤TS-1を併用したところ、効果が認められた症例などがあります。症例実績も年々増えていますが、今のところ標準治療(手術・化学療法・放射線治療)に比べてエビデンス(科学的根拠)が乏しく、保険適用にはなっていません。そのため、全額自己負担となります。

 免疫療法は標準治療との併用も可能なので、主治医とよく相談をして治療選択を行うことが大切です。

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