【最新医療 I 】メラノーマに対する新しい治療薬「ニボルマブ」が承認申請へ

公開日:2014年06月02日

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新しい治療薬ニボルマブが承認申請される

 2013年末、新しいがんの治療薬が承認申請され話題となっています。小野薬品工業の「ニボルマブ」です。ニボルマブは、悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として承認される予定です。

 悪性黒色腫は、皮膚の色素を生産する細胞が悪性化した腫瘍と考えられており、末期になると非常に悪性度が高いことで知られています。初期においては、外科手術による切除が可能な場合もありますが、切除不能な悪性黒色腫の患者さんの予後は極めて悪いと言われています。

 また、切除不能だった場合の治療で目立った効果をあげるものがなく、新たな治療薬の開発が期待されていました。 ニボルマブは免疫の働きを利用した治療薬の一つで、完全ヒト型抗 PD-1 抗体といったリンパ球の受容体の一種に作用することで、免疫反応を増進させて、がんを攻撃する仕組みです。

 このような治療薬はこれまで認可されていませんでした。ニボルマブは、これまで治療が難しかった患者さんに対して、効果が期待されるでしょう。今度は厚生労働省による審査が行われますが、問題がなければ今年中にも良いニュースを聞くことができるのではないでしょうか。

近年は免疫を利用した研究が発展している

 昨年(2013年)は、科学の革新的な研究に送られるサイエンス誌の「科学のブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー」で、「がんの免疫療法」が選ばれました。ここ数年での免疫に関する治療の発展の背景には、大学や製薬会社が免疫療法に注目して、多くの臨床試験が行なっていることが理由として考えらます。

 免疫療法は、なぜがん治療に効果が期待されるのでしょうか。がん細胞は、リンパ球の持つ免疫作用を抑制することがわかっています。本来、異質なものが体内に入ってきたり発生したりすると、免疫細胞が攻撃をして排除してくれます。しかし逆にこの免疫系が活性化しすぎると、今度は自らの細胞まで攻撃をしてしまいます。そのため、逆に免疫の働きを抑制する物質がつくられます。

 私たちの身体は、免疫系の活性と抑制のバランスによって健康が保たれているのです。悪性黒色腫などのがんは、このシステムを悪用します。免疫系の抑制物質に働きかけ、「自分たちは敵ではない、攻撃するな」と命令を出します。がん細胞を免疫系が攻撃しないようにしているのです。

 ニボルマブはこの免疫抑制を解除させ、免疫系にがん細胞を攻撃させます。つまり、本来の身体が持つ免疫の力でがん細胞を退治してくれるのです。免疫療法薬は、免疫力を高めてがん細胞と戦わせるため、副作用の心配が少ないと言われています。PD-1抗体以外を利用した免疫療法もありますが、それらは医療保険の対象ではなく、非常に高価な治療法です。ニボルマブが治療薬として承認されると、医療保険の対象となり、安価に免疫療法を行えるようになるでしょう。

免疫療法の治療目的

 がん治療を整理してみましょう。現在のがん治療は手術、抗がん剤、放射線が3大治療として主流となっています。免疫療法は、このような治療にプラスして行われるようになってきました。いままでの治療に免疫療法をプラスすることで選択肢を広げることができるのです。もちろん、手術などができなくなってしまった場合には、免疫療法単体にて治療が行われることもあります。

 免疫療法の目的は化学療法と同じように「がん細胞を死滅させる」「術後の再発をコントロールする」「術前投与してがんを小さくしてから手術を行う」「がんの進行を遅らせる」などが挙げられるでしょう。

 今回のニボルマブが承認されれば、PD-1抗体を利用した免疫療法に効果が期待できることになりますが、その他の抗体を利用した免疫療法も様々な研究が進められています。免疫療法の研究は治療効果のデータを集めている段階と言えます。免疫療法を受ける際には医師と効果と費用など十分に相談をして進めましょう。

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