【最新医療 】新たに承認されたがん治療薬情報

公開日:2014年04月30日

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標準的治療が困難な進行・再発の結腸・直腸がん適応の経口剤が承認

治療薬イメージ

 3月24日、厚生労働省は、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ®配合錠T15・T20」(一般名:トリフルリジン、チピラシル塩酸塩、開発企業:大鵬薬品工業株式会社)について、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果として、国内での製造・販売を承認しました。

 標準的な治療が困難な場合と言われているのは、5-FU(一般名:フルオロウラシル)、エルプラット(一般名:オキサリプラチン)、カンプト(一般名:イリノテカン)、アバスチン(一般名:ベバシズマブ)、アービタックス(一般名:セツキシマブ)、スチバーガ(一般名:レゴラフェニブ)ほか、大腸がんの標準的な治療薬すべてに耐性ができた場合となります。

 同薬は、国内第Ⅱ相臨床試験において、進行・再発の結腸・直腸癌に対する有効性及び安全性が確認され、日本が全世界で最初の製造販売承認となります。現在は、進行再発結腸・直腸がん患者を対象とした国際共同臨床第Ⅲ相試験(試験名:RECOURSE)が実施されています。

 トリフルリジン(以下、FTD)を主成分に、チピラシル塩酸塩(以下、TPI)を配合した同薬は、経口のヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤です。FTDはがん細胞のDNAの複製時にチミジンの代わりとして直接DNA鎖に取り込まれ、DNAの機能障害を引き起こすことで抗腫瘍効果を発揮すると推測されています。

 また、TPI はFTDの分解に関与するチミジンホスホリラーゼを阻害することで、FTDの血中濃度を維持する働きを担っています。

 用法・用量は、通常、成人の場合、初回投与量(1回量)を体表面積に合わせて、朝食後及び夕食後の1日2回、5日間連続経口投与したのち2日間休薬、これを2回繰り返したのち14日間の休薬を1コースとして投与を繰り返します。また投与の際は患者さんの状態により医師の判断にて適宜減量します。

がん疼痛治療の新たな選択肢となる経口の持続性オピオイド鎮痛剤が承認

 同じく3月24日、ヤンセンファーマ株式会社の持続性癌疼痛治療剤「タペンタ®錠25mg、50mg、100mg(以下「タペンタ®錠」、一般名:タペンタドール塩酸塩)」の日本における製造・販売が、厚生労働省により承認されています。

 厚生労働省と日本医師会の監修による「がん緩和ケアに関するマニュアル」によると、がんの痛みは、進行がんの患者さんでは3 人に2 人以上について発現しているとの報告がなされています。

 また、痛みの程度は50%が強い痛み、30%が耐え難いほど強い痛みとの報告があり、がん患者さんの約8割が痛みによって日常生活に影響を受けるなどQOLを低下させる大きな要因となっています。痛みの軽減は緩和ケアにおける大きな役割の一つです。

 同剤は、海外と比較して日本では種類が少ないとされている「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」を効能効果とする、経口の医療用麻薬(持続性オピオイド鎮痛剤)です。主に脳や脊髄、消化管などにおいてオピオイド受容体を活性化することにより、脳や全身への効果を発現します。さらに、脳内でのノルエピネフリンの再取り込みを阻害することから、長時間の鎮痛効果が得られると考えられています。

 Grunenthal社(ドイツ)で創製された同剤は、2008年11月にアメリカFDA(食品医薬品局)にて承認がなされており、2013年11月現在、すべてのEU加盟国ならびに北米(カナダ、アメリカ)をはじめとする37の国と地域において承認されています。

 用法・用量は、通常、成人については、タペンタドールとして1日50~400mgを2回に分けて経口投与し、症状により適宜増減します。

今後の承認が期待されるがん治療薬

 現在、国が推し進めている成長戦略のひとつである「国家戦略特区」ですが、3月末時点で東京圏、関西圏の大都市圏2ヵ所と、新潟市、兵庫県養父市、福岡市、沖縄県の計6ヵ所を特区に指定することを決定しています。特区が担う役割は、医療、雇用、教育、農業などの分野において、規制緩和など特例的な措置を講ずることで、世界と戦える国際都市の形成や国際的イノベーション拠点の整備推進となっています。

 医療分野においては、医療水準の高い国で承認されている国内未承認薬の併用による混合診療を、先進医療制度の枠組みを活用して行うにあたり、従来よりも迅速に評価が可能な体制を構築し、申請から承認・実施までの期間短縮が図られます。

 こうした政策により、今後は、より早く、海外の新薬が利用できる機会が増えることが期待されています。

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