【最新医療 】新たに承認されたがん治療薬

公開日:2014年02月28日

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去勢抵抗性前立腺がんに適応した経口剤が今年2月に承認

saishin_201403_01 2月3日、厚生労働省は、昨年5月の申請以来審議を行っていた、去勢抵抗性前立腺がんを適応とする経口アンドロゲン受容体阻害薬「イクスタンジンカプセル40mg(一般名:エンザルタミド、開発企業:アステラス製薬)」に対し国内での製造・販売を承認しました。

 同薬は、前立腺の腫瘍組織において、アンドロゲン(男性ホルモン)の、アンドロゲン受容体(以下、AR)への結合を競合的に阻害することで、ARを介するシグナル伝達を阻害し、腫瘍増殖を抑制するとされています。

 設定された効能・効果は「去勢抵抗性前立腺がん」で、アンドロゲン産生を行う精巣を摘除する「外科的去勢術」、あるいはホルモン療法など「内科的去勢術」に抵抗性を持つ患者に使用されます。用法・用量は、通常、成人で1日1回160mgを経口投与です。

 進行した転移性前立腺がん患者を対象としたアンドロゲン除去療法による第Ⅲ相臨床試験の結果、エンタルザミド群は、プラセボ群と比較して統計学的に優位な全生存期間の延長が認められたほか、死亡のリスクを29%低下させたと、アステラス製薬のニュースリリースで報告されています。

 同薬の開発・商品化はアステラス製薬と米国のメディベーション社が共同で進めてきましたが、米国では2012年8月に、欧州では2013年6月に承認されており、2013年10月時点で35の国または地域で承認済みとなっています(欧米での製品名:XTANDI®)。

ベバシズマブ製剤に「卵巣がん」に対する効能・効果が追加

 昨年11月には、中外製薬の抗がん剤である抗VEGFヒト化モノクローナル抗体製剤「アバスチン®点滴静注用100mg/4mL、同400mg/16mL(一般名:ベバシズマブ)」が、厚生労働省により、「卵巣がん」に対する効能・効果追加による製造・販売が承認されています。

 同剤は、がん細胞の増殖・転移に必要な血管新生を促進する糖たんぱく質のVEGFに特異的に結合し、血管新生を阻害する抗体医薬品です。2004年2月、米国での「転移性の結腸・直腸がんの治療薬」としての承認以来、多くのがん腫の治療ガイドラインにおいて標準治療薬の一つに位置付けられてきました。

 例えば、欧州では、進行期の乳がん・大腸がん・非小細胞肺がん・腎がん・卵巣がんの、米国では、大腸がん・非小細胞肺がん・腎がん・再発膠芽腫の適応症で、それぞれ承認を受けています。また、卵巣がん(初回治療)に関わる効能・効果は、2013年8月7日現在で、EU 28ヵ国を含む110の国または地域で承認されています。

 国内では、2007年に「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」の効能・効果で厚生労働省より承認を受け、以降、今回までに、2009年に「扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」、2011年に「手術不能または再発乳がん」、2013年には「悪性神経膠腫」が効能・効果として追加承認されています。

 同社のニュースリリースによれば、初回治療の卵巣がん患者さんを対象とした臨床試験(第Ⅲ相)で、標準化学療法のカルボプラチン・パクリタキセル療法に同剤を併用し、標準化学療法終了後も同剤を継続維持投与することの有用性を検討したとあります。

 その結果、標準化学療法のみの卵巣がん患者さんに比べ、主要評価項目の無増悪生存期間が統計学的に有意に延長することが示されたとか。また、安全性についても、これまでに同剤で報告されている範囲内であり、忍容性も確認されたとのことです。

今後の承認が期待されるがん治療薬

 欧米に比べて新薬の承認が遅れることで生まれる「海外では使えるのに、日本では使えない薬」、いわゆる「ドラッグ・ラグ」の問題に対し、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の開催など、様々な措置が取られてきました。

 例えば、今回紹介した「アバスチン」も、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発促進を目的とした同会議の審議結果に基づき、中外製薬が厚生労働省から開発要請を受領した上で、効能・効果追加の承認申請を行っています。

 現在、日本製薬工業協会の公開情報によると現在、厚生労働省へ承認申請中のがん治療薬は6製剤となっています。中には、米国での臨床試験の成績から、米食品医薬品局(FDA)にBreakthrough Therapy(画期的治療薬)に指定されたALK 阻害剤「アレクチニブ塩酸塩」も含まれています。加えて、第Ⅲ相臨床試験まで進んでいるがん治療薬は30製剤にも及んでいます。今後の承認が期待されます。

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