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骨髄バンク、移植期間短縮化を実施【トピックス】

白血病をはじめとする血液がんの治療では、血液のもととなる細胞を移植する治療法があります。現在も2,000人を超える患者さんが移植を希望していますが、移植までの期間が長いことが長年の課題でした。しかし、移植に必要不可欠なドナーの協力もあり、その期間は年々短くなっています。移植を受けるときの注意点や、移植を希望する患者さんとドナーを仲介する骨髄バンクの近年の取り組みについてご紹介します。
目次
血液がんの治療法「骨髄移植」「末梢血幹細胞移植」とは?
血液は「血球」と「血漿(けっしょう)」という細胞成分から成り立っており、血球には、白血球、赤血球、血小板の3種類の細胞があります。血球は、骨の中心部にある「骨髄」という組織で作られており、骨髄の中で血球を作り出しているもとになる細胞を「造血幹細胞」といいます。
白血病や悪性リンパ腫をはじめとする血液がんなどでは、この「造血幹細胞」が腫瘍化するなどして、正常な血液を作れなくなる病気です。「骨髄移植」や「末梢血幹細胞移植」は、血液のもととなる造血幹細胞を患者さんに移植し、造血機能を回復させる治療法です。
骨髄移植
「骨髄」は骨の中心部に存在し、血液細胞(赤血球・白血球・血小板など)を作り出している組織で、中は骨髄液で満たされています。骨髄移植とは、血液がんなどにより正常な血液が作られなくなった場合に、健康な人(ドナー)から提供された骨髄液を患者さんに点滴で注入し、患者さんの悪くなった造血幹細胞を健康な造血幹細胞と入れ替え、病気を根本的に治療することを目的とした治療法です。小児の患者さんや血液細胞が減少する再生不良性貧血などで選択される傾向があります。
末梢血幹細胞移植
通常、血液には造血幹細胞がほとんど含まれていませんが、白血球を増やす薬を注射すると血液にも流れ出すことがあります。末梢血幹細胞移植とは、血液に含まれた造血幹細胞をドナーから採取して患者さんに注入する治療法です。高齢の患者さんや進行期白血病の場合によく選択されます。
移植までの流れ
骨髄・末梢血幹細胞移植を受けることになったら、まずは血縁者から提供者(ドナー)を探します。移植は誰からでもできるわけではなく、患者さんとドナーで白血球の型が一致している必要があります。
組み合わせは数万通りもあり、きょうだい間では4分の1程度の確率で一致する可能性がありますが、親子間で一致することは稀です。血縁者に一致したドナーがいない場合は、骨髄バンクを通してドナーを探します。非血縁者の場合、一致する確率は数百~数万分の1と極めて低く、そのため、骨髄バンクでは広く一般からドナーを募っています。
骨髄バンクへ登録後、1人以上のドナー候補が見つかる確率は2018年時点で95.8%(※)となっています。ドナー候補が見つかったら、骨髄バンクでドナー本人やそのご家族の意思確認などを行いますが、ドナーの都合や健康問題、ご家族の反対などで辞退される場合もあります。
主治医は一度に10人までのドナーに対し同時にコーディネートを進めることができます。ドナー候補の中からより患者さんに適合したドナーを主治医が選び、1人に絞られたドナーの最終同意を経て、骨髄または末梢血幹細胞の採取に至ります。
2019年3月末現在で移植を必要としている患者さんは2,139人、対して509,263人がドナー登録しています。非血縁者間での移植は毎月100例前後行われており、3月は93例(骨髄移植74例、末梢血幹細胞移植19例)実施されました。また、新規のドナー登録者数は毎月3,000人程度ですが、昨今の報道などで社会的な関心が高まったためか、2月は11,662人、3月は7,174人となりました。
※日本赤十字社/造血幹細胞移植情報サービスより
http://www.bmdc.jrc.or.jp/data/tekigou.html
移植のリスクについて
移植はリスクもあります。移植前に抗がん剤で体内のがん細胞を叩くため、口内炎、下痢、膀胱炎、肝機能の異常などの強い副作用が出ることがあります。また、処置によって一時的に白血球が著しく減少するため、さまざまな病気に感染しやすくなります。
そのため、前処置の段階から無菌室(クリーンルーム)に入るのが一般的です。移植後も、患者さんの免疫細胞がドナー由来の細胞を異物と認識して攻撃する「拒絶反応」や、逆にドナー由来の免疫細胞が患者さんの体を攻撃する「移植片対宿主病(GVHD)」が起こることがあります。
移植後6~30日頃に発症する急性のGVHDは皮膚の発疹、下痢、黄疸が主な症状です。移植後3カ月以降に発症する慢性のGVHDでは、口内炎、肺炎、肝障害、下痢など全身にさまざまな症状が起こります。日常生活に支障が出ることもあります。
移植期間を短縮し、患者にとってのベストなタイミングでの移植を
「骨髄バンクの取り組みについて」
公益財団法人日本骨髄バンク広報チーム 小島 勝さん
日本骨髄バンクでは、患者さんにとって最適なタイミングで移植を受けられるよう、さまざまな取り組みを行っています。例えば、ドナー候補に対し一度に打診できる人数は、以前は5人まででしたが、2018年から10人に増やしました。
さらに、これまでは移植日を第3希望まで出して調整していましたが、よりよいタイミングで移植するため第2候補までにし、ドナー側にもこれまで以上に患者さんの希望に合わせた調整をお願いしています。
ドナーになると、数日間の入院や検査、面談などでの通院が必要であるため、企業に「ドナー特別休暇制度」の導入を求めるなど環境づくりにも取り組んでいます。このような取り組みを進めた結果、移植までの期間短縮化につながりました。今後もさらなる改善を進めます。
ポイントまとめ
- 「骨髄移植」や「末梢血幹細胞移植」は、血液のもととなる細胞を患者さんに移植し、血液を作る機能を回復させる治療法。
- どちらの移植方法も、移植前の処置や移植後の合併症によるリスクがある。
- 骨髄バンクでは、移植を早めるための取り組みとして、打診人数の増加、移植候補日の縮小、企業へのドナー休暇制度推進などを実施している。
コラム:さまざまな白血病の種類
骨髄バンクの登録患者さん(累計)は、2019年3月末現在で44,158人です。白血病の患者さんは約75%を占めています。
移植希望者の大半を占める白血病は「急性」「慢性」、さらに「骨髄性」「リンパ性」の4つのタイプに分けられます。「急性」は、がん化した細胞が急速に増殖し、病状の進行が速いため早期診断と迅速な治療の開始が重要です。「慢性」は、がん化した細胞がゆっくりと増殖するため初期症状が乏しく、健康診断などで偶然見つかる場合が多くなっています。「急性」「慢性」はそれぞれが、主に骨髄で増殖する「骨髄性」と、リンパ節などリンパ組織で増殖する「リンパ性」に分かれます。
カテゴリー再発転移のがん治療を知る, その他治療
タグ2019年5月
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