【最新医療】最新のテクノロジーの医療応用 技術の実用化へ

公開日:2016年12月30日

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 近年、テクノロジーの進歩がめざましく、医療への応用が進んでいます。国立がん研究センターは、高精細映像を映し出す「8Kスーパーハイビジョン技術」を医療に応用するプロジェクトを立ち上げました。また、人工知能(AI)を用いたがん医療システムの開発プロジェクトも始動しています。

「8Kスーパーハイビジョン技術」を医療に応用

 国立がん研究センター、NHKエンジニアリングシステムほか民間企業2社の共同研究グループは、「8Kスーパーハイビジョン技術(以下、8K技術)」を駆使した新しい腹腔鏡手術システムの開発と高精細映像データの活用を検討する研究を開始します。

医療機器の開発が進み、腹腔鏡手術の件数が近年急速に増加しています。その半面、モニターに画像を映し出して手術を進めるため、画質の良し悪しが手術に影響を及ぼしかねません。また、手術操作が制限されたり、死角が生まれたりするために、開腹手術と同等の質が担保できなくなることもあります。術中に偶発的な事故が発生するリスクもあります。

研究グループはこうした課題を解決する目的で、医療機器の技術開発に取り組みます。光学性能を改善し、カメラをさらに高感度にすると同時に小型・軽量化を図るといいます。この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が推進する「8K等高精細映像データ利活用研究事業」の支援を受けた国家プロジェクトです。日本発の次世代放送技術(NHKが開発)である8K技術を医療機器に応用する初の試みです。

8K映像は、従来のハイビジョンの16倍にあたる3,300万画素の超高精細画像で、その密度は人間の網膜に迫るといわれています。Kは画素数を表す単位で、現行の2Kテレビの画素数が約200万であるのに対し、8Kテレビの画素数は約3,300万です。

技術の実用化によって、がん手術がより精密で繊細に行えるようになり、腹腔鏡手術をはじめとする内視鏡手術の安全性と根治性を向上させることが可能になります。たとえば、従来の内視鏡とは比較にならない臨場感が生まれ、がんの治療ではさらに精度の高い手術が可能になるといいます。

また、病変、リンパ節を的確に切除することで、根治性が高まり、多くの患者さんが治癒する可能性が高まります。さらに、肉眼では見えにくい自律神経が走る術野もくっきりと鮮やかに描出されるので、排尿や性機能の温存についても手術成績の向上が期待できます。これらのメリットは、ひいては、医療経済にも好影響をもたらすなど、医療現場の大きな変革が期待されています。

プロジェクトは、平成29年度中に新しい腹腔鏡手術システムの試作品を完成させ、動物実験を経てヒトを対象にした試験を行う予定です。研究グループは「平成30年度には実用化に向けて具体的な計画を立てる」としています。

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人工知能(AI)を活用した統合的がん医療システム

 人工知能(AI)を活用したシステムを医療の現場に導入することで個別化医療の確立を目指す動きが活発になってきました。

国立がん研究センターではAIを使ってがん医療システムの開発プロジェクトを開始します。AIを活用して患者に最適な治療方法を選択するプレシジョンメディスン(精密医療)――細胞を遺伝子レベルで分析して治療するオーダーメード治療の実現に向けていよいよスタートが切られます。

同センターでは従来、世界でも有数の質の高いがん基礎研究や臨床研究、疫学研究を継続的に行ってきました。蓄積されたがんの診断データは膨大な量になり、これらを統合的に解析することで、1人ひとりの患者さんに最適化された医療を提供できると考えられています。しかしこれまで、ビッグデータを解析する手法がなく、実現には至っていません。

近年、診断に利用されるデータの電子化が進み、コンピュータや各種システムによるビッグデータの解析が可能になってきました。また、AI技術の発展によって、構造化されたデータだけでなく、構造化されていないビッグデータでも、統合解析をすることで、医療の質の向上へと繋げられる可能性が高まってきました。

構造化されたデータとは、あらかじめ決められたフォーマットをもとに、ロボットにも理解できるような構造にして記述されたデータのことです。

このプロジェクトは、同センターが産業技術総合研究所の人工知能研究センターなどと共同で、同センターに蓄積されたがんに関する臨床データなどを統合的に解析するメディカルAI技術を開発し、がんの診断や治療、創薬に応用していく構想です。最先端のAI技術を導入して、迅速かつ高精度の診断、治療、創薬システムを産・官・学が密接に連携して開発していきます。

科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業でもある同プロジェクトは、今後段階的に進められます。同センターでは、5年後(2021年度)を目処にmicroRNAと血液検査データを用いた早期がん診断システムなどの実用化を目指していくとしています。

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