- 再発転移がん治療情報
- 再発転移のがん治療を知る
- その他治療
- 【最新医療 II 】癌の予後判断に有用な免疫力測定
【最新医療 II 】癌の予後判断に有用な免疫力測定
目次
からだの免疫力は、がんの発生や進行に大きな関連があることが分かっています。
今回の記事は、血液中のリンパ球を用いて免疫力を定量的に測定し、健康維持に必要な科学的情報を提供する、賛助会員 健康ライフサイエンス様よりご提供いただきました。
免疫系と癌
平成25年度の日本人の死亡数は約127 万人で、死因の第1位は癌で、約36万人が亡くなっている。癌は遺伝子異常により起こるが、全てが臨床的にみつかる癌になるわけではない。癌細胞は遺伝子異常があるから、正常とは異なる物質を細胞表面に発現するので、その異常を免疫系の細胞が認識し、癌がまだ芽の状態にあるうちに、除去する。この癌の芽を異常細胞として察知・除去するシステムを免疫監視機構と呼んでいる。
免疫系の加齢変化
しかし、癌の察知・除去という重要な役割を果たしている免疫系は、思春期をピークにして機能低下し始める。免疫機能のレベルはピークと比べると40歳代で50%、70歳代で10-20%に低下する人もいるが、低下の程度は個人差が大きい。免疫機能の低下の大きい人では、免疫監視機構の機能低下により、癌を察知する能力も低下し、その網の目を潜り抜けたものが、癌として成長する可能性が大きくなる。厚生労働省の死因統計でみると、癌による死亡は20歳を過ぎる頃から増え始め、50~60歳代でピークとなる。
癌患者さんで低下する免疫機能
我々は癌患者さんの免疫系について調査し、次の4つのことを明らかにした。
第1は、癌患者さんにおける免疫機能の低下である。
第2は、この免疫機能の低下が、癌の発生早期の状態で既に起こっていることである。このことは、癌の発症に免疫機能の低下が関連することを示唆するものである。
第3は、上述したように、免疫機能のレベルは健常人でも、癌患者さんでも個人差が大きいことである。
そして第4は、癌の進行と共に、免疫機能の低下が進むことである。
言い換えると、癌患者さんの予後・経過を知るためには、免疫機能の測定が有用である。実際に癌患者さんの免疫機能の経過を追ってみると、治療により癌が治ると免疫機能は回復し、再発により機能低下が起こる。
免疫機能の定量的測定
免疫機能は異なるいろいろな細胞の働きからなり、測定する免疫パラメーターは多種類からなる。これら多種類の免疫パラメーターをまとめて、誰でも分かるようにするには、工夫が必要である。 われわれの長い間の研究で、免疫パラメーターの中で加齢やストレスで変化しやすいものに注目してきた。それがT細胞とその亜集団、及びNK細胞である。従って、これらの細胞の数や機能を中心に測定すれば、免疫機能の変動レベルの指標になる。
多種類の免疫パラメーターを包括的に表現するには、標準化というデータ処理が必要である。そこで、年齢の異なる数千人規模の健常人について多種類の免疫パラメーターを測定し、まずデータベー スを作成した。個々の測定値をデータベースと照合して、統計的に高いものは3、中程度なら2、低いものは1というスコアを与えた。このように、種類も基準値も異なるデータをスコア化することにより、それらのデータをまとめて統計的に処理することができる。
表-1に8項目の免疫測定項目のデータとスコアを並べてある。データを見だけではレベルの判断が難しいが、スコアの点数でレベルが分かる。それらのスコアを加えたものが免疫力スコア15/24となり、免疫力グレードではⅢとなる。5段階の免疫力グレードでもやや分かりにくいので、年齢と相関性の高いパラメーターを用いて、免疫機能のレベルを免疫力年齢や、Tリンパ球年齢として表現する方法も確立した。免疫力年齢は実年齢より若くなる場合もあれば逆に上になる場合もあるが、直感的に理解しやすいことが利点である。
図-1にレーダーグラフを使った測定例を示す。56歳の男性であるが、免疫力年齢は59~62歳に相当し、実年齢より少し上となる。免疫力スコアは17/24.免疫力グレードはⅢで、要観察圏と判定された例で、レポートには免疫力を上昇させる必要があるというコメントを付してある。
このように免疫力を誰でもわかるように表示すれば、健康レベルの判断、病気や癌の進行程度を判断する上で、有用なマーカーとなるものと信じている。
(連絡先:ホームページ http://www.h-ls.jp/ Eメール info@h-ls.jp )
記事提供:「賛助会員 健康ライフサイエンス 様」
カテゴリー再発転移のがん治療を知る, その他治療
タグ2014年6月
関連記事
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。