【最新医療】新しいがん治療 注目されるウイルス療法

公開日:2013年12月30日

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がん治療の新しいアプローチ方法 ウイルス療法とは

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 がん治療の分野において、いままでとは違うアプローチ方法のウイルス療法(oncolytic virus therapy)が注目を浴びています。ウイルス療法とは、がん細胞だけで増殖するによう改変したウイルスをがん細胞に感染させて、ウイルスにがん細胞を攻撃させる治療法です。

 一般のウイルスへのイメージといえば、インフルエンザやHIV、がんの領域だと肝がんや子宮頸がんなどが思い浮かぶと思います。これから人の身体に悪さをするものですが、このウイルスの性質を利用してがん細胞を攻撃しようというのが基本的なコンセプトとなっています。

 ウイルス療法は手術療法、化学療法、放射線療法のがん3大療法とも併用が可能であることも報告されています。研究が進み、臨床現場で使われるようになることが期待されています。

ウイルスを遺伝子操作してがん細胞で増殖させる

 平成25年度では厚生労働科学研究費のサポート受けて「健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト がん関係研究分野」として東京大学医科学研究所教授の藤堂具紀先生が「希少がんに対するウイルス療法の実用化臨床研究」を進めています。この研究は脳腫瘍の一種である膠芽腫(こうがしゅ)を対象として臨床試験を医師主導で実施し、最終的には薬事承認を目指しています。藤堂先生らはG47Δという単純ヘルペスウイルスを改良したものを使用しています。

 G47Δウイルスは、G207という第一世代前の遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型を基にして改良を加えられたもので、第三世代の遺伝子組換えヘルペスウイルスと呼ばれています。遺伝子操作によって、γ34.5、ICP6、α47という三つのウイルス遺伝子が働かないようにしています。

 これらの操作によって、がん細胞の中だけでウイルスが増殖する効果と免疫細胞に見つかりやすくする効果を狙っています。東京大学医科学研究所付属病院腫瘍外科が公開している情報によってもG47Δウイルスは、がん細胞に感染すると、リンパ球に発見されやすくなると報告されています。免疫療法との相乗効果が期待できることが示唆されています。

ウイルス療法の臨床研究が進んでいる

 今年の5月に東京大学医学部付属病院が再燃前立腺がん患者を対象にしたウイルス療法の臨床研究を開始することを発表しました。この研究にも藤堂先生らが開発した第三世代のがん治療用単純ヘルペスウイルスⅠ型の G47Δが使われています。この研究では手術を受けていない且つ、ホルモン療法が効かなくなってきた患者さんが対象となっています。

 安全性を調べることが目的の医師主導の臨床研究となっています。再燃してしまった前立腺がんに関しては、ホルモン療法の効果がなくなった場合に抗がん剤治療が選択されますが、延命効果が平均で数ヶ月となっているのが現状のようです。このような領域にとっては、いままでとは違った新しい治療法が待ち望まれているでしょう。

 また、同じ東京大学医学部付属病院では「進行性嗅神経芽細胞腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究」も進められています。嗅神経芽細胞腫とは脳神経の一つで、臭覚を司っている部分です。いままでだと放射線治療(最近では陽子線治療)などが選択されることが多かったようです。

 しかし、東京大学医学部付属病院の公表している情報によりますと、「再発・進行例の多くは腫瘍が鼻腔周囲にある眼窩や脳内にも潜り込んでいくため、再切除や再照射などが難しく、有効な治療法がありません。東京大学医科学研究所附属病院では進行性嗅神経芽細胞腫対する新たな治療法を開発するため、がん治療用単純ヘルペスウイルスI型のG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究を実施します。」と報告されています。いままで治療法がないと言われていた方にとっては待ち望んでいた治療法になるかもしれません。

 新しい薬が保険適用されるためには臨床研究から治験に進み、効果を確認しなければいけません。研究段階では患者さんとって期待される結果がでない可能性もありますが、標準治療がなくなった患者さんにとっては臨床試験に参加することのメリットはあるでしょう。患者さんにとって希望の持てる治療が開発されることが望まれます。

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