【医療情勢】患者参加で防ぐ医療事故

公開日:2013年12月30日

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 皆さんは医療事故と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。ニュースなどで話題になった事例を思い浮かべるかもしれません。過去には、乳がんで手術中の患者さんの麻酔器が外れて一時意識不明の重体となる事故がおきました。事故が起きた病院では、事故調査委員会を立ち上げて原因の究明と再発防止に努め、内容を公表しています。

 患者さんは非常に辛い思いをされたでしょう。病院側は謝罪をしています。回復にも全力を尽くしたことでしょう。こういった医療事故が起きた時に、事実をなるべく外に出さない体質の病院があるとすれば、事故を調査し、内容を真摯に公表する行為は、患者さんや家族の納得性も高まりますし、再発防止にも役立ちます。とても重要なことなのです。

 厚生労働省リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会「リスクマネージメントマニュアル作成指針」によると、医療事故は次のように定義されています。このような事故を防ぐために、最近では医療従事者だけの責任として考えるのではなく、患者さん自らが医療事故の予防に参加して、医療の質を向上させる取り組みがでてきています。

 医療に関わる場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故で、以下の場合を含む。なお、医療従事者の過誤、過失の有無を問わない。
 ア 死亡、生命の危険、病状の悪化等の身体的被害及び苦痛、不安等の精神的被害が生じた場合。
 イ 患者が廊下で転倒し、負傷した事例のように、医療行為とは直接関係しない場合。
 ウ 患者についてだけでなく、注射針の誤刺のように、医療従事者に被害が生じた場合。

 アメリカでは、米国医学研究所(Institute of Medicine:IOM )という機関が「To Err is Human:building a safer health system(日本では”人は誰でも間違える―より安全な医療システムを目指して”として翻訳された)」というアメリカ国内の医療事故に関するレポートを刊行しました。

 このレポートの中で、投薬ミスや医療従事者の過労による※医療過誤で、年間44,000 ~ 98,000人もの入院患者が死亡していると報告されました。医療過誤による死亡者数が交通事故や特定のがん腫で亡くなる方よりも多いという調査結果は国内外にインパクトを与えました。

※医療過誤  医療過誤(いりょうかご)とは、医療行為をしている最中の過誤によって患者さんに被害が発生することをいいます。厚生労働省のリスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会が作成した「リスクマネージメントマニュアル作成指針」による  と、「医療事故の一類型であって、医療従事者が、医療の遂行において、医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為」とも定義されています。

 日本でもこうしたアメリカの動きを受けて、2001年度より厚生労働省が全国の病院から医療事故の情報収集(医療事故の情報収集:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/jiko/index.html)を始めています。

 実際に収集されたデータは医療事故情報収集等事業というホームページで検索することもできます。情報公開の目的は「本ページによる事例公表は、医療安全の推進を目的として行っています。」として定義されています。医師・医療従事者のミスということで済ませるだけでは、問題が解決しないこともあります。

 医療事故を反省し安全認識を考える時には、医療を受ける立場の患者さん自身も考えて予防行動することが大切となってきます。医者・医療従事者に完全に治療を任せて判断をしなくなったり、遠慮や諦めなどがあってはいけません。

 一つの事例ですが、大阪大学医学部附属病院では2010年から患者さんと医療者とのパートナーシップを深めるために「いろはうた」をつくり院内でのコミュニケーションアップに取り組んでいます。7つの句とイラストを入院患者さんに配り、看護師さんから説明をするそうです。

 抗がん剤の治療を行っている場合ですと、ご自身が投与されている薬の名前は覚えておきましょう。「タキソテール = ドセタキセル」、「タキソール = パクリタキセル」などは非常に名前が似ています。間違って投与されないように、薬剤の名前や形状を覚えてしまうのも良いかもしれませんね。

 い 今いちど 自分の名前を 伝えましょう。
 ろ 廊下は意外にすべります スリッパやめて夜も安心
 は 歯を外したら 入れ物へ 大事な身体の 一部です
 に 二度 三度 たずねることも遠慮なく 治療の主役はあなたです
 ほ ホッとする 相手に話そう 不安な気持ち
 へ 変だな? と思った時は 確認を くすりは正しく 飲みましょう
 と とっても 大切 次の診察 いつですか

 ( 大阪大学医学部附属病院 参考 )

 また、2001年にさかのぼりますが、厚生労働省が「安全な医療を提供するための10の要点(PDF:722KB)」 を公表しています。この中でも「安全高める患者の参加 対話が深める互いの理解」という項目で「患者参加」について書かれていますが、全体としては医療従事者向けのメッセージでした。ここの時点からすでに10年経っていますこれからは患者さん自身が医療への意識を高めていくことが自らの健康を守ることにつながっていくと考えることができるでしょう。

厚生労働省

 今年にはいり、厚生労働省は「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」について意見をまとめました。第三者機関を活用して病院側と患者さん側が納得いくような形で調査が行われるように改善が進められています。議論された中ででてきた「医療の安全と医療の質の向上を図る」ことは、医療者と患者さんの共通目的であります。

 また第三者機関の在り方として「独立性、中立性、透明性、公正性、専門性を有する民間組織を設置する」と記述がありますので、是非そのような組織構築の実現に向けて進められるよう期待されます。

simuki

厚生労働省資料から「医療事故調査制度における調査制度の仕組み(PDF:208KB)

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