【最新医療】医療への応用が期待される3Dプリンター

公開日:2013年10月01日

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期待の3Dプリンター、医療への応用は?

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 今年に入ってから3Dプリンター(スリーディープリンター)がメディアを賑わせることが増えました。今までのプリンターは、普通の紙に平面的に印刷する方法ですが、3Dプリンターは立体的な3次元データを基にして、断面形状を印刷によって積層していくことで立体物を作ることができます。

 家電量販店などに足を運んでも、すでに20万円くらいの機械が販売されていますが、すでに固形の素材を削り取っていくの方式も存在していて、そのようなものは、3Dプロッター(スリーディープロッター)と呼ばれています。現在は、業務用のものとしては、製造業を中心として主に建築や工業の現場で使われることが増えてきています。

 今まではパソコンの画面で確認していたものや、手づくりで造形していたものが置き換わろうとしています。そして、この技術が医療にも応用されようとしています。どのような応用が考えられているのでしょうか。

3Dプリンター海外での事例

 海外の事例ではありますが、アメリカの外科医であるアンソニー・アタラ氏は、
TED(http://www.ted.com/talks/lang/ja/anthony_atala_printing_a_human_kidney.html)というプレゼンテーション番組にて生体材料と細胞をつかって患者さんに移植することができる臓器の印刷にチャレンジしています。

 プレゼンテーションの中では「体内で長期間使える素材の開発」、「肝細胞や神経細胞などの患者から取り出して生育できない細胞の存在」、「再生した臓器や組織が生きられるための血液を提供する脈管の開発」が、臨床が進まない原因だと述べられています。このような課題を解決するために、あらゆるテクノロジーを使って実用化に向けて研究が進められています。

 アタラ氏が研究している技術によって手術を受けた患者さんも登場して、術後の様子を語っています。患者さんは二分脊椎症(にぶんせきついしょう)という先天的に脊椎骨が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害で悩まされていました。これによって腎臓と膀胱が機能していなかったと語っています。アタラ氏らは患者さん自身の細胞によって膀胱を作りだして、移植を行いました。10年前の症例ですが、患者さんは現在も元気に生活を続けていると語っています。

日本では外科医の手技向上に応用されている。

 日本のドクターではいち早く神戸大学大学院医学研究科の杉本真樹先生が3Dプリンターの可能性を示唆しています。CTスキャンを行った患者さんの生体データから臓器の内部構造を積層式3Dプリンターで出力します。出力された本人と同じ形をした臓器を使うことによって、手術前にシミュレーションをおこない、精度を高める試みがされています。

 画像などによって切る場所を特定するよりも、臓器の特徴をつかみやすくなり、執刀する場所の周辺への影響なども予想しやすくなると言われています。いままではゴムチューブなどで手術の練習をしていた外科医などは、今後3Dプリンターで印刷された臓器を使って、よりリアルに近い感覚で手技を磨くことができるようになるでしょう。もちろん、がん治療における手技も磨かれていくことでしょう。

 また、イラストや2次元の画像で、臓器の内部構造を説明するよりも、本人と同じ形をした臓器模型を使って手術の説明をすることで、患者さんは自分のどの部分が悪いものであると認識しやすくなり、手術の方法やリスクを理解しやすくなるといった効果も期待されています。

経済産業省が支援に乗り出す。

 経済産業省の「平成26年度 経済産業政策の重点のポイント」の内容にも、「日本産業再興プランの中で次世代3Dプリンター開発等によるものづくり産業の強化」が明示されて、これから汎用化へ向けて、コストダウンが図られていくと思われます。

 特許庁の方でも、「平成25年度特許出願技術動向調査実施テーマ」の中で3Dプリンターを調査対象と位置付けており、調査結果の公表を平成26年4月頃としており、3Dプリンターへの期待は高まっています。

 行政と民間企業の連携がうまくいくことで、より技術開発が促進することが期待されます。 患者さんの生体データをうまく利用できれば、臓器の出力だけでなく、人口骨への応用も期待できるでしょう。がんの手術によって、骨を含む広範囲な切除があった場合などは、人工骨移植にも期待が寄せられます。スピーディーな研究促進が求められている分野です。

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