パープルリボン2011 in東京 市民公開講座「すい臓がんに光をあてる」取材レポート

公開日:2011年06月27日

目次

化学療法の最前線 〜内視鏡を使って膵臓に薬剤を注入する

東京医科大学消化器内科准教授糸井隆夫先生からは、ゲムシタビンと併用で行う「自己樹上細胞腫瘍内局注療法」について説明がありました。いわゆる免疫療法の1つで、現在は切除不能進行膵がんに対して臨床研究が行われています。 具体的には、患者さんの身体から採取した未熟樹状細胞を、内視鏡を使って膵臓がんに直接注入するという治療法です。もともとは、検査のために十二指腸に入れた内視鏡で膵臓を刺し、組織を吸引する技術(EUS-FNA)でしたが、治療にも応用しようということで研究が進められてきました。がんワクチンとほぼ同じ原理で、ゲムシタビンの+α効果が期待されています。

これまでは、日本における膵がんの治療は、ゲムシタビンとS1をいかにうまく使うかがポイントとなっていました。ゲムシタビンは点滴剤で通院が必要になりますが、それが難しい場合は飲み薬のS1を選ぶ。体調が悪いときは、副作用の大きい多材治療は避けて、単材治療にするなどの対応がされてきたのです。 それが、近い将来、エルロチニブが臨床に導入され、数年後にはFOLFIRINOXも登場する可能性があります。ほかにも、HIFUや自己樹上細胞腫瘍内局注療法などの研究が進むことで、今後は少しずつ選択肢が広がっていくことでしょう。

膵がんの臨床試験情報について
現在、膵がんの治療では、FOLFIRINOXやペプチドワクチン免疫療法(OTS102、OCV101の2種類)、ゲムシタビンとT1の比較など、いくつかの臨床試験を行っています。
そうした情報は、国立がん研究センターのウェブサイト「がん情報サービス」内にある「がん関係の臨床試験(肝・胆・膵)」や「大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN)」などで検索することも可能です。
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/med_info/clinical_trial/ct0050.html
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi

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