パープルリボン2011 in東京 市民公開講座「すい臓がんに光をあてる」取材レポート

公開日:2011年06月27日

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去る6月11日、東京・新宿で行われた市民公開講座「パープルリボン2011 in東京『すい臓がんに光をあてる』」に取材して参りました。主催のNPO法人パンキャンジャパンは、国内で唯一の膵がんの患者団体です。この患者団体は、患者さんやご家族からの電話相談や、新薬承認の働きかけのほか、今回のような市民公開講座を各地で開催しています。
同講座は、膵がんの現状から最新の治療法まで、専門医が分かりやすく解説しておりました。この日、会場を訪れた患者さんやそのご家族は約130名、皆さん熱心に聞き入っていました。 本コンテンツでは、同講座のなかから、再発転移にかかわる最新の情報をピックアップしてお届けします。

主催:NPO法人パンキャンジャパン、共催:日本肝胆膵外科学会、協力:NPO法人cancerネットジャパン、協賛:日本イーライリリー(株)、後援:日本膵臓学会、読売新聞東京本社

膵がんの現状 ~手術から集学的治療へ

東京医科大学消化器外科准教授の土田明彦先生より、がんの部位別死亡率のグラフを示されました。現在もっとも死亡率の高いがんは肺がんで、次いで胃がん、大腸がん、膵がんは4番目でした。膵がんの死亡率は1970年代頃から徐々に増加し、なかでも女性の割合が高くなっているそうです。一般に、がんの治療は早期発見が何より大切と言われますが、膵がんは初期段階の自覚症状が乏しいという特徴があります。医学的にも診断が難しく、見つかったときは既に進行し、手術が難しい場合が多いのが現状です。膵がんは、がんのなかでも難敵と言わざるを得ないことがわかります。

膵がんの進行度はステージⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳa、Ⅳbの分類で表しますが、ステージⅠ〜Ⅲ(場合によってはⅣaも含む)であれば手術が可能です。しかし、膵がん全国登録調査報告(1999年度症例の要約)のデータによると、切除手術ができた症例は36.1%に過ぎず、この数値は現在でもあまり変わりません。診断がついた時点で6割近い人たちが、手術ができないくらい進行しているとうことです。また、手術ができたとしてもほとんどが3年以内に再発してしまいます。ステージⅢまたはⅣaなど進行した状態で手術を行った場合は、特に早く再発することが分かっています。

もともと膵がんの手術は難しく、ほかのがんに比べて広い範囲を切除しなくてはなりません。膵臓の周辺にある血管や、ほかの臓器も含めて切除する大変な手術なのです。そのため、最近では手術だけでなく、抗がん剤や放射線による治療も合わせた「集学的治療」が標準となってきました。手術後、なるべく早く抗がん剤による補助療法を行って再発を予防することや、抗がん剤や放射線による治療を組み合わせて、がんの進行を食い止めようとするのです。

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