再発肝腫瘍に対する治療法

公開日:2011年02月26日

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原発巣を縮小させてから、切除を行うダウンステージングのための動注療法

動注療法とは、動脈から直接がんの組織に抗がん剤を注入する治療のことを言い、動注化学療法とも呼ばれます。抗がん剤を直接がんに注入することができるので、通常の抗がん剤を使った治療よりも、濃度の高い抗がん剤を使用することができます。 また、通常の薬物療法のように全身に抗がん剤を使用するよりも、副作用が少ない(他の細胞への影響を抑えることができるため)ことも特徴の一つです。動注療法は、がんに薬を到達させるための太い血管が必要なため、肝臓や腎臓などの、太い動脈を持つ臓器への治療で多く実施されています。患部への投与方法は、リザーバーという器具を足の付け根の皮膚の下に埋め込み、カテーテルを入れる方法が多くとられます。集学的治療方法が行われるようになり、進行が進んでいるがんに対しては、動注療法も他の治療方法と組み合わせで治療を行うケースも研究されています。手術での切除が適当とならない症例に対して、動注療法を用いた化学療法を施行して、原発巣の縮小があったところで、切除を行う「Down-staging therapy ダウンステージング セラピー」と呼ばれるものも検討されているうちの一つです。また、新たな抗がん剤や分子標的薬、各種併用療法のエビデンスも増えてくるでしょう。

適応の広い肝動脈塞栓療法 再発にも有効

肝動脈塞栓療法では、まずは足の付け根から肝臓の動脈までカテーテルを挿入します。造影剤を注入しながら、カテーテルを目的地まで到達させます。がん細胞周辺の動脈にたどり着くことができたら、最初に抗がん剤を送り込み、その後にがん細胞に栄養を運んでいる動脈を塞いでしまう薬を注入します。がん細胞を兵糧責めにする治療法と言われています。肝臓における正常細胞は動脈以外のところからも栄養を受けている場合が多いのですが、肝がん細胞は肝動脈からの栄養補給に頼っている場合が多いのです。がん細胞を小さくすることができ、時には完全に壊死させることもできます。肝動脈塞栓術の適応範囲は広いので、術後に再発したときにも行われます。しかし、肝機能が悪く正常細胞の栄養補給も動脈に頼っている患者さんなどは慎重に対応しなければならないでしょう。主治医との相談が必要です。動脈を塞ぐ薬を入れている時に、みぞおち周辺(場合により肩から首)に痛みやハリを感じることがあります。治療前に痛み止めの薬を投与しながら治療を行います。治療後の1週間程はみぞおち周辺に痛みを感じたり、発熱や食欲不振などが見られる場合があります。肝機能も一時低下するために、肝臓保護を目的とした点滴・注射をする場合があります。また、感染予防を目的とする抗生剤投与も行います。1週間程度の経過後に、治療効果を確認するためにCT検査を行い、治療終了や追加治療の方針を決定していきます。

新たな治療法 凍結融解壊死療法

最近の新しい治療で、凍結融解壊死療法(冷凍療法)というものがあります。がん細胞に対して、凍結と融解を行うことで、がん細胞を死滅させる新しい方法です。ラジオ波焼灼では血管の近くにあるがん細胞を焼くのは困難でしたが、凍結療法は冷やす治療のために血管の近くでも治療をすることができます。また、凍結によりがん細胞周辺の末梢血管が充血状態となるために、抗がん剤の局所到達性と停留性が高まると考えられています。 さらに,がん細胞の凍結壊死物質が抗原刺激となって、特異的にがんに対する免疫を誘導する可能性があることも報告されています。多発性の肝転移の場合でもあっても治療の成果がでると期待されています。治療法は、がんの中心部に対して、がんを凍結させることができるアルゴンガスと呼ばれるガスを流すことができる針を刺します。針の中にある穴から高圧でアルゴンを放出して、マイナス度まで一気に冷却します。その後、ヘリウムガスでプラス温度まで加温します。がんを急激に凍結させた上でゆっくり融解させて壊死させる方法です。現在はまだ保険適用外ですが、日本では数施設で実施されています。

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