がんの転移 最新の研究レポート1

公開日:2012年02月01日

目次

がんの転移

原発巣の”がん”が違う箇所に新しく”がん”を形成することを転移といいます。転移したがん細胞は元々の原発巣の病変と同一種類のものになります。例えば、乳がんが他の箇所に転移した場合には、転移性乳がんと呼ばれ、乳がんの細胞によって他の箇所に”がん”が形成されることになります。がんの種類によって、転移しやすい箇所の傾向がある程度分かっています。例えば、前立腺癌は骨に転移しやすく、大腸癌は肝臓に転移しやすい傾向があります。原発巣付近に転移するものを局所転移といい、原発巣より離れた遠隔部位に転移するものを遠隔転移といいます。

転移したばかりのがん細胞は小さすぎるので、なかなか診断をすることが難しいです。診断ができない状態ですので、手術をすることもできませんし、治療を開始する時期の判断も難しい状態です。転移したがんに対しての治療は基本的に化学療法(薬物療法)が中心となることが多いです。化学療法の他には、放射線療法や免疫療法、乳がんなどではホルモン療法が行われます。また切除できるような”がん”には外科手術が行われることもあります。治療法の選択は、原発巣の種類や、がんのサイズ、転移した場所や数、患者さんの意思や健康状態などを考慮して決定されます。

再発に関する研究は進められています。

国内には様々な学会や研究機関があります。日本癌治療学会(Japan Society of Clinical Oncology (JSCO) 日本における癌の予防、診断及び治療に関わる調査・研究が目的)や、日本臨床腫瘍学会(Japanese Society of Medical Oncology (JSMO) がんの医療に関する国内外の情報の調査研究、普及啓発を行い、がんに対する診療技術の向上を促進・振興が目的)など“がん”に関する大きな学会が存在しています。これらの学会では様々な演題が発表されていますが、再発にテーマを絞ったものも発表されています。また癌腫に絞った学会もあります。

日本乳癌学会(The Jpanese Breast Cancer Society 乳癌に関する基礎的ならびに臨床的研究を推進し、社会に貢献するとともに、社員及び会員である医師等の乳癌の研究、教育及び診療の向上を図ることを目的とする。)や日本肺癌学会(The Japan Lung Cancer Society この法人は、肺癌及びこれに関する領域の研究の進歩ならびに知識の普及をはかり、もって患者をはじめ広く人類の健康と福祉の増進に寄与することを目的とする。)などはそれぞれの癌種に特化した演題が多い中、再発に関するテーマも発表されています。

学会の中でも日本がん転移学会では、「がんの転移による死亡率を減少させる」ということを目的に掲げて、再発にテーマを絞った活動をしています。癌の転移、診断・治療に関するガイドラインの作成も学会としての活動テーマに掲げられているようです。日本がん転移学会は、日本がん転移研究会が基盤となって2000年に学会に組織改定しています。“がん”転移に関する研究を軸にして、転移に関する診断や治療の進歩普及に貢献することを目的としています。日本がん転移学会によると「設立当初より、転移の分子基盤の解明とその制御に向けて多くの成果を挙げてきました。転移制御遺伝子の単離や、血管新生や微小環境を含む宿主要因の解析、マイクロRNAや がん幹細胞の解析などを通して、がん転移の本態に迫っています。」とあります。再発に関する研究は今後も着実に進められるでしょう。






体内の様子を可視化して、がん細胞の動きを捕まえる ~三重大学の研究~

三重大学の研究グループの発表によると、2光子レーザー顕微鏡という個体が生きたままの状態で観察できる特殊な顕微鏡を使って、生きたマウスの体内の変化を観察できる新しい検査方法を開発しました。2光子レーザー顕微鏡は高価な機械であって、性能が安定していないデメリットがありましたが、固定した金属製円盤と振動吸収アダプターを用いることで、安定して体内を観察することに成功したそうです。(このシステムは特許申請されています。)三重大学の発表によると、このシステムを用いることにより、病気の発生、進展、現象の推移および治癒の過程が細胞レベルで観察が可能になるそうです。

現在の検査では、内視鏡検査にて体内の様子を観察しているのに対して、このシステムを腹腔鏡に連動させることによって病態の範囲、程度がより分かりやすくなるそうでうす。手術室にて検査と手術が行えることとなり、術前の重複する検査を省略することも可能になるかもしれないとしています。また、特殊な方法を用いて”がん”が血液にのって転移をしていく動画の撮影にも成功したそうです。病気の発生、進展、推移や治っていく過程が細胞レベルで観察可能となることで、薬の効果がすぐに評価できることになります。これによって、新薬開発スピードを大幅に早めることに期待が持たれています。

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