正しくがんを知ろう-再発・転移性肺がん ガイドライン解説

公開日:2011年07月04日

目次

がんの治療方法の選択は、患者さんと医師が話し合って決められます。その際、“案内役”として活用されるのが、がん関連学会が作成しているガイドラインです。肺がんの場合は、日本肺癌学会の「肺癌診療ガイドライン」に沿って、患者さんに適した治療が選ばれます。 ガイドラインを理解するには、まず、自分の身体の状態を正しく把握しておくことが大切です。ここでは、あらためて肺がんの広がり方、標準的な治療そして新しい治療法まで解説していきます。

肺がんの再発・転移の分類

肺がんにおける再発・転移

がんは、放っておくと徐々に広がっていく病気です。近くの臓器に直接がん細胞が広がっていくことを「浸潤」、手術のあと再びがんができることを「再発」といいます。再発には、もともとがんがあった臓器に再びがんができる「局所再発」と、離れたところにあるほかの臓器にがんができる「遠隔再発」があります。遠隔再発は、いわゆる「転移」と同じ意味で、手術で取りきれなかったがん細胞が、リンパ液や血液に乗って全身に運ばれたり、臓器を包む膜を突き破って身体のなかに散らばったりします(表1参照)。 肺がんは、がんのなかでも再発や転移が起こりやすく、特に骨や脳、肝臓、副腎、リンパ節などに転移しやすいといわれます。

表1 肺がんが転移する4つのルート

・リンパ行性転移
がん細胞がリンパ節に入り込み、リンパ液にのって全身に運ばれ、遠くの臓器のリンパ節に転移する。
・血行性転移
がん細胞が血管に入り込み、血液にのって全身に運ばれ、遠くの臓器に転移する。
・播種性転移
進行したがん細胞が胸膜を突き破って身体のなかに散らばり、ほかの臓器に転移する
・気腔転移
がん細胞が、肺胞上皮(肺胞を囲む膜)からはがれおちるように散らばり、空気の通り道に広がる

図1 肺がんのタイプ分類                       図2 肺がんが転移するルート

肺がんは、がんのできた場所やかたちなどによって、「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の2つに分類されます。非小細胞がんは肺がん全体の85〜90%にあたるタイプで、さらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」に分けられます。一方、小細胞がんは、その名の通り小さな細胞が集まったがんです。非常に進行が早く、転移が起こりやすい特徴があります。

表2 肺がんのタイプ分類と特徴

◎非小細胞肺がん(85〜90%) ○腺がん ・肺の奥のほうに発生する
・肺がんのなかでもっとも多く、半数以上を占める
○扁平上皮がん ・肺門(肺の入口付近)や、肺の中心部に発生しやすい
・腺がんに次いで多い
○大細胞がん ・肺の奥のほうに発生する
・はっきりとした特徴のない、大きい細胞のがん
◎小細胞肺がん(10〜15%) ・比較的小さながん細胞が密集して広がっている
・がん細胞が増えるスピードが速く、転移しやすい
・肺門や、縦隔(左右の肺の中心にあり、心臓や動静脈血管や気管、食道などが集まる部分)のリンパ節が腫れて見つかることが多い

図3 肺のイラスト

 

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。