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【医療情勢】患者向けガイドラインを使いこなそう~乳がん編~
目次
正しい情報を、的確に得るために
乳がんの早期発見や検診の大切さをPRする「ピンクリボンキャンペーン」は、ご存知の方も多いのではないでしょうか。町のあちこちにピンク色のポスターなどが貼られ、乳がんの予防に関する基本的な情報は広く知られるようになりました。では、乳がんにかかったあとは、どのような情報を頼りにするとよいのでしょうか? 世の中にあふれる玉石混交の情報のうち、もっとも信頼性の高いものの1つが各学会のガイドラインです。がんのガイドラインというと、通常は医師が治療選択のために使うものですが、学会によっては患者向けにやさしい言葉を使ったものも用意されています。
2012年9月、日本乳癌学会は『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』を3年ぶりにリニューアルし、WEBサイトまたは書籍(金原出版)で公開しました。
再発・転移に関する疑問に答える
日本乳癌学会の患者向けガイドラインは、患者さんが知りたい情報を見つけやすいようにQ&A方式でまとめられています。作成段階では、実際に患者さんの疑問をアンケートで集め、厳選した66個の質問についてガイドライン作成委員会のメンバーが回答しています。
今回のリニューアルでは、再発に関する情報が充実しました。 例えば、「Q47.再発・転移治療の考え方を教えてください」という項目では、再発の治療に使う薬の使い方についてフロー図を用いて解説しています。「ホルモン感受性があるか」→「ある人は、ホルモン剤を使用」「HER2陽性の人は、トラスツズマブ(ハーセプチン)を使用」「それ以外の人や、ホルモン療法が効かなくなった人は抗がん剤を使用」という流れを、多くの人が理解できるように明快に示しています。
骨転移や脳転移についての情報も充実しています。「Q50.骨転移について教えてください」という項目では、痛み、骨折、脊髄圧迫、高カルシウム血症といった症状について、一つひとつ解説しています。治療についても詳しく、「骨折が起こりそうな場合は放射線療法や整形外科的な手術を行う場合がある」「高カルシウム血症の治療の治療には、ゾレドロン酸の点滴が有効であること」などと書かれています。
「Q51.脳転移について教えてください」という項目では、脳転移がほかの臓器で見られる転移と異なることについて記載されています。転移する時期が様々で、初期治療から1年後のときもあれば、10年後の時もあること。転移巣が現れた場所によって症状が異なる(手を動かす指令を出す部位の場合は、手のしびれなどが表れる)ことなどが書かれています。脳転移の場合は、放射線療法がよく用いられますが、「全脳照射」と「定位手術的照射」の違いや、副作用についても解説されています。
乳がんで発生頻度の高い骨転移は、多くの患者さんが心配するテーマだと言えます。また、脳転移については、骨転移ほど発生頻度が高くはないもの、身体機能への影響などが気になる問題です。漠然とした不安を感じる患者さんも多いのではないでしょうか。そうした時、あらかじめ転移後の症状や治療について情報を得ておくことは、気持ちの整理につながる場合があります。具体的に知りたい情報を探すためだけでなく、がんと闘うための武器となる情報を得る目的にも、ガイドラインは役立つものなのです。
療養生活の素朴な疑問を科学的観点で解説
の他では、再発と生活習慣、または食生活の関連についても詳しく解説されています。例えば、「53-1.肥満は乳がん再発リスクと関連がありますか」という項目では、「すべての乳がん患者さんで、適切なカロリー摂取と適度な運動によって肥満を避けることが強く勧められます」と明記しています。また、「53-3.アルコール飲料の摂取は乳がん再発の危険因子になりますか」という項目では、「飲酒により乳がん発症リスクが高くなることはほぼ確実」としながら、「再発リスクとの関係は研究が少ないため、結論が出ていない」と客観的な事実を記載しています。
このように、乳がんになった人が特に知りたい疑問について、きめ細やかに対応できているのは、ガイドラインの作成委員会に患者会が含まれているためです。委員会は、医師や看護師、薬剤師といった医療者だけでなく、乳がんの患者会では国内最大の「あけぼの会」のメンバーも所属しており、医師が書いた解説文について意見を述べています。医学的妥当性の羅列でなく、患者さんの気持ちを汲み取った内容にするためです。
よく、がんの悩みは患者会へ行くと良いといわれますが、症状や気分によってはとても外出が難しいことも多いはずです。そうした時は無理をせず、それでもあきらめないための拠り所として、ガイドラインを開いてみてはいかがでしょうか。
カテゴリー再発転移のがん治療を知る, 治療法の基礎知識
タグ2012年11月
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