- 再発転移がん治療情報
- 再発転移のがん治療を知る
- 遺伝子治療(がんゲノム医療)
- 【トピックス】リキッドバイオプシーによる「大腸がんRAS遺伝子変異検査」
国内で初めて製造販売承認。
【トピックス】リキッドバイオプシーによる「大腸がんRAS遺伝子変異検査」
国内で初めて製造販売承認。
シスメックス株式会社(神戸市)は、2019年8月2日、RAS遺伝子変異検出キット(製品名:「OncoBEAM RAS CRCキット」)の国内での製造販売承認を取得したと報告しました。このキットは血液中に遊離したがん細胞の微量のDNAから特定の遺伝子変異を検出し、治療薬の適応を判断するものです。がんの個別化医療の可能性がまた広がりました。
目次
血液による生検で患者さんの身体的負担を軽減する「リキッドバイオプシー」
がん細胞があるかどうかを判断するために行われる検査を生体組織検査(生検)といいます。生検は通常、手術や内視鏡検査などの際にがんが疑われる組織の一部を切り取ったり、体の外から針を刺して組織を採取したりして行われるため、患者さんの体には相当の負荷がかかります。
リキッドバイオプシーは、「血液による生検」という意味で、生検に伴う負担を回避するほか、がんの早期発見にも役立つ可能性があることから、世界中で盛んに研究開発が行われています。
白血病などの血液がんの検査では、骨髄液などを採取して検査するのが一般的ですが、肺がんや大腸がんのような固形がんの生検をどのように血液検査で行うのでしょう。
実は、がん患者さんの血液中にはがん細胞から放出された遊離DNAがわずかに含まれています。同社が開発したBEAMing(ビーミング)技術という高度な手法によって、採取した遊離DNAからRAS遺伝子※1変異を高感度に検出することができます。
それによって抗がん剤(分子標的治療薬)のセツキシマブおよびパニツムマブの大腸がん患者さんへの適応判定に役立てることができます。
RAS遺伝子変異がある患者さんでは、セツキシマブおよびパニツムマブといった分子標的治療薬を投与しても、延命したり腫瘍が小さくなったりする効果が得られない可能性が高いことが知られています。
※1 RAS遺伝子:がん遺伝子のひとつで、細胞増殖を促進するシグナルを、細胞内で伝達するという役割を持つRASタンパクを作り出す遺伝子。RAS遺伝子が変異すると、「細胞を増殖せよ」というシグナルが出され続け、がん細胞の増殖が活性化され続ける。
効果が期待できない薬による余計な副作用を回避
同社が今回承認を得たキットは、リキッドバイオプシーによる大腸がんのRAS遺伝子変異検査に用いる体外診断用医薬品としては国内初となります。
従来の生検より負担が少なく簡便で、がん組織を使った場合と同等の判定結果を得ることが可能であり、患者さんの身体的・精神的負担の軽減や検査機会の拡大、早期の治療方針確定に貢献するなど、さまざまなメリットが期待できるといいます。
遺伝子変異の有無によって用いられる大腸がんの分子標的薬治療では、まずがんの遺伝子を調べることが治療の標準となりつつあります。
肺がんでもリキッドバイオプシーの実用化が進む
2018年、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 疾患ゲノム医学研究室(加藤菊也特任教授)と大阪国際がんセンターの呼吸器内科、呼吸器外科の共同研究により、血液中に存在する微量の肺がん遺伝子の異常(変異)を検出する高感度技術が開発されました。(製品名 EGFRリキッド遺伝子解析ソフトウェア、略称 EGFRリキッド)
※奈良先端科学技術大学院大学プレスリリースより
http://www.naist.jp/pressrelease/2019/07/005874.html
承認されれば、RAS遺伝子変異検出キットに次いで二番目のリキッドバイオプシーの実用化となります。
がんの遺伝子を調べ、タイプの違いで効果が期待できる治療薬を選択することによって、治癒の確率が高まるだけでなく、効果の期待できない薬による余計な副作用を避けられるというメリットが期待できます。
患者さん一人ひとりの特徴に応じた治療を行う個別化医療(プレシジョンメディシン)は今後、実用化が進みさらに普及することが予想されます。
ポイントまとめ
- リキッドバイオプシーは、血液中に遊離したがん細胞の微量DNAから特定の遺伝子変異を検出し、従来の生検よりも負担が少なく簡便で、がん組織を使った場合と同等の判定結果が期待できる
- 大腸がんだけでなく、肺がんでもリキッドバイオプシーの実用化が進んでいる
コラム:コンパニオン診断薬
参考
https://www.sysmex.co.jp/news/2019/190802.html
関連記事
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。