【特集記事】先生のご家族や 知り合いの方ががんに なったらどうしますか? III

公開日:2013年08月01日

目次

Q、先生のご家族が”がん”と診断された場合は、どのような病院や医師に治療を任せますか。

がん治療はある程度標準化されています。標準治療というものは、特定のある病院だけでしか治療できないものではなくて、一般化されています。標準治療を実施しているそれなりの病院だったら心配せずに治療を任せると思います。まれにインターネットで調べて、1例でも症例数の多い所にこだわる方がいらっしゃいますが、心配しないで一番通院に便利な所で治療をうけられるのがいいでしょう。外来で抗がん剤の投与を行っている場合なども近い方がいいでしょう。

がんと診断された場合でも落ち着いて選択なさることが大切です。がんセンターと名前がつく所以外でも、がん治療している病院はたくさんあります。がんセンターはがん治療に特化していますが、心臓が悪かったり、肺が悪かったり、他の症状が併発している場合には治療ができない場合があるようです。そういった場合、呼吸器の医師がいたり、消化器系の医師もいたり、包括的に病気を見てもらえる病院が良いでしょう。

これからは高齢者のがんがもっと増えるでしょうから、心臓の治療もしながら、肺の治療もしながら、透析をしながら、といった状況に対処できる所がよいでしょうね。自分の症状をよく分かってくれる主治医にきちんと相談しながら治療方針を決めていきましょう。信頼できる医師であれば、その病院でできないことは、必ず紹介をしてくれるでしょう。信頼できる主治医から多岐にわたったアドバイスを受けながら治療をすることができれば、患者さんも納得して治療に専念することができるでしょう。

病院には優秀な医師がいることが一番重要です。

私の勤務している亀田総合病院を含む亀田メディカルセンターは千葉県の南房総という所にありながら、全国から患者さんが集まります。立地が良いからと思っている方もいらっしゃるようですが、それは全く違います。病院には優秀な医者がいることが一番重要です。しっかりとした技術と知識、そして心を持っている医師がいて、治療をサポートするナースをはじめ、色々な職種のスタッフがいる。

みんなが一丸となって力を発揮できる様な体制が整うと、良い医療が生れるのです。そうなれば、自然と患者さんとの間に信頼関係が築かれていきます。信頼して下さった方から、他の方にも口コミで伝わっていきます。良い医療が実施されていけば、必ず結果が出てくると思っています。全ての患者さんが完治することは不可能ですが、その点もきちんとご理解いただけるようにしっかりと説明することが大切です。医療者としての真摯な姿勢に、患者さんも理解を示して下さいます。

医師でありながら大きな病気を経験

私の外科医としてのキャリアの中でも、30代の後半くらいから手術の件数が増えて、非常に忙しい毎日を過ごしていました。昼も夜もずっと手術で、その頃はほとんど休みを取りませんでした。その時に勤務していた病院の循環器内科部長から、「加納先生はそんな生き方をしていたら40代のうちに心筋梗塞で必ず死にますよ、私が保証します」と言われたのを覚えています。確かに「過労死と紙一重」という自覚もありました。その頃は自分の身体に大きな負担がかかっていました。

無理を重ねて患者さんの手術をし続け、かつ一方で学問的な仕事も大学病院の人に負けないという思いで、学会で発表するための研究も行っていました。なんとか40代を乗り切って、50歳になったとき、循環器内科部長に電話をして、「50歳の誕生日がきたけど、俺はまだ生きとるぞ」と冗談を言いました。まだ余裕があったのかもしれませんね。

それから3年後の53歳のときでした。千葉の幕張で行った研究会の後、食事会の時に胸にどーんとくるものがあって倒れました。相当大きい心筋梗塞が来たと分かりました。心の中で、彼が言っていたことは本当だったかぁと思いましたね。意識はありますので、会場のスタッフの方に「心筋梗塞だから救急車呼んでください」と告げて、救急車で運ばれることになりました。

亀田総合病院までは時間がかかるということ、容態の緊急性から、千葉県の救命救急センターに運ばれました。そこでまず心臓カテーテルをしましたが、造影したら右冠動脈が根部で途絶していました。。これはまずいなぁ、死ぬかもしれないと思いましたけれども、幸いにも血栓溶解吸引療法を行ったら、(フルではありませんが)血液が流れるようになってきました。貧血などもありましたが、それから回復方向に向かうことができました。

しかし、心筋梗塞から復帰して3ヵ月後のことです。大病が続きました。9月の終わり頃、講演のため、インドに出張していたときのことです。ちょうど帰国する日、突然激しいめまいに襲われました。歩くことができなくなり、フラフラとあちこちに身体をぶつけてしまう状態です。偶然にも私が良く知っている有名な外科医がそばにいましたので、すぐに救急車を手配してくれて、チェンナイ(マドラス)の病院に入院することができました。帰国後、亀田総合病院にて精密検査をしたところ脳腫瘍だと分かりました。これも今思い返せば自覚症状はありました。

大病したことは患者さんにもざっくばらんに話をしています。同じような体験をしていることで、患者さんと距離が縮まることもありますね。私を心配してくれる患者さんもいるくらいですよ。(笑)

患者さんの希望に沿うように治療を進めることが大切です。

健康食品の使用を患者さんから相談されることが多いのですが、厚生労働省が薬と認めたものでもなく、、保険も効かないから金額がかかることを患者さんが納得したうえであれば、使用しても問題はないと考えています。患者さんがそれを飲んだら安心できる、抗ガン剤の副作用がこちらの健康食品を飲んでいると少ないような気がするということであれば、それは患者さんの考え方ですから、それを医師が一方的に抑えるという態度は、傲慢なことだと考えています。また、混合診療に関して色々な議論があると思いますが、私は認められても良いと考えています。先進医療と呼ばれている保険適用にならないものでも、効果であると考えられるものが存在しています。

たとえば免疫療法などは効果がでている研究発表があります。しかしこれらは保険適用外ですので、当院で行うことはできません。しかし、混合診療ができるようになれば、「自分の血液から増殖させたリンパ球を当院で点滴する」などの行為が、同じ病院で管理することができるようになって患者さんにもメリットがでてくると思います。今は厚労省が薬と認めていないものでも、数年後にはその成分が実は抗ガン作用があったことが証明されて、一部を合成あるいは抽出して、抗ガン剤として保険適用になる可能性だって十分にあるわけです。科学的には、ランダム化試験をしているわけではありませんので、証明ということにはなりませんが、可能性は十分に謙虚に考えておかなければいけないでしょう。

医学研究も患者さんの治療を一生懸命行うことから始まります。

一生懸命に患者さんの治療に携わっていれば、色々なことが見えてくるものです。最善の方法を考えれば考えるほど色々なことが見えてきます。一生懸命やっていれば自然と新しいことも思いつくものです。そういった診療を続けていくことで、学会に発表できる論文になる情報が蓄積されていくのです。学会に出席すれば、また知識を得ますので、外科医としての腕も磨けますし、患者さんの治療へもフィードバックされます。

臨床の現場で患者さんの手術をすることと学術的な活動をすることは別のことではなく、相互作用で良い方向に向かっていくものです。私は若手の医師に話をする時、「論文は患者さんとの思い出作りのつもりで書きなさい」と言っています。患者さんを一生懸命治療して、医学を学ばせて頂いたことをきちんと記録して次の医療に繋げていくのです。

患者さんが笑顔になるために

患者さんが一番に望んでいることは最善の治療です。医師はこれに応えなければなりません。医師は患者さんが満足してくださるような最善の治療技術と知識を持っていなければならないと思います。いくら優しい人でもスキルを持っていない医者だったら、それはできません。医師としての責任をしっかり全うでき、かつ人間として患者さんと付き合えることが重要だと思います。私が外来で見ている患者さんは殆どががんの手術をした患者さんですが、他の科の医師などから「先生の外来診察はずいぶん楽しそうですねー、いつも患者さんとワハハと笑って話しているでしょう」と言われます。

それほど長くかからなくても、患者さんと友達になってしまうということ。その様な医師としての力を持つことが必要と思います。人間同士深く付き合える、それができる人でなければと医師としては不十分だと思うのですよ。私が病気を経験していることは患者さんにはざっくばらんに話をしています。私が患者さんに「お大事に」と言うと、患者さんから「先生こそお大事に」といった冗談を言い合うような間柄になったりします。自然と笑顔になりますよね。

取材にご協力いただいたドクター

加納宣康 先生

医療法人鉄蕉会 亀田総合病院
特命副院長 主任外科部長
内視鏡下手術センター長

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