【特集記事】肝臓・胆道・膵臓がん治療の最近の傾向

公開日:2012年10月01日

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セカンドオピニオンを上手に活用する

納得できる治療のためには、セカンドオピニオンをとるのもいいでしょう。ただ、標準治療はガイドラインになって決まっていますので、セカンドオピニオンによって見解が分かれることは非常に少ないと思います。したがって、もう一度確認する意味か、その施設独自の工夫を聞いてみるのもよいでしょう。たとえば先ほどの手術前治療では「うちでは抗がん剤のみ」という施設もあれば,「+放射線療法」というところもあるでしょう.

あるいは、患者さんと医師の相性もありますから、「ちょっと主治医の先生には聞きにくいな…」という場合は、セカンドオピニオンの医師の意見を聞いて理解を深めることも有効です。私のところにも、「実はすごく怖い先生で何も聞けなくて」とセカンドオピニオンに来た患者さんがいましたよ。じっくり話をしたら、「そういうことなんですか」と納得して帰られていましたね。

ただし、気をつけなくてはならないのは、標準治療から逃げないということです。セカンドオピニオンでは足りずに、サードオピニオンをとるなどドクターショッピングを行う行為は、ただ単に自分の意見に合う医師に探しに行くだけだからです。手術を最初に勧められたのにイヤだからとセカンドオピニオンをとり、そこでも手術を勧められて、その次に行く。そこで「手術がイヤだったらこれをやりなさいよ」と言われて治療法が本当に手術より優れているのか。よくよく説明を受けて納得するならまだしも、「これしかない」とばかりに導入するようでは、結局、がんは良くならないわけです。

肝胆膵を専門とする外科医はそれほど人数が多くないので、あるところでは「手術はできない」と言われて、別のあるところで「うちでは切れますよ」と言われることはそう多くありません。地方だったり、病院の規模が小さかったりすると専門医がいないために「手術ができない」というケースはあるでしょうが、一定規模以上の病院の治療レベルはほとんど変わりません。

むしろ、ほかの病院では勧めない特定の治療法だけを推してくる医師にあたったとしたら、少し注意したほうがよいでしょう。ある特定の代替治療に見受けられるのですが、「とにかく何が何でもこの治療法をしなさい」という医師は、患者さんとの信頼関係も築くことができません。そうではなく、患者さんがこれまで受けてきた治療をいろいろ聞いたうえで、「まだ手術してないのだから、まずは手術したほうがいいですよ」とか、「がんのステージからいって、この抗がん剤を使わない方法はありませんよ。そちらを使ってからうちにこちらに来てください」というふうに言ってくれる医師やクリニックは信用できます。

 

取材にご協力いただいたドクター

慈恵医大 外科学講座 准教授 慈恵医大 附属第三病院 外科部長 岡本 友好(おかもと ともよし)先生 日本消化器外科学会認定医 消化器外科専門医 日本肝胆膵外科学会評議員日本消化器病学会認定医 日本体育協会公認スポーツドクター 日本外科学会指導医 日本臨床外科学会評議員 外科専門医 日本消化器病学会関東支部評議員 消化器病専門医 日本消化器病学会指導医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本がん治療認定医機構暫定教育医 日本外科学会代議員 日本がん治療認定医 日本胆道学会評議員 日本肝胆膵外科学会高度技能指導医 日本胆道学会認定指導医

1985年3月 東京慈恵会医科大学卒業 1985年4月 虎の門病院外科レジデント 1990年4月 東京慈恵会医科大学第二外科学教室診療医員 1991年1月 町田市民病院派遣 1992年1月 東京慈恵会医科大学第二外科学教室助手 1993年11月 ネブラスカ大学医学部外科にresearchfellowとして派遣 1996年7月 東京慈恵会医科大学外科学講座第二講師 同附属病院消化器一般外科医長 2001年6月 東京慈恵会医科大学付属病院肝胆膵外科診療医長 2001年9月 東京慈恵会医科大学付属第三病院外科診療医長 2007年4月 東京慈恵会医科大学付属第三病院外科診療部長代行 2008年4月 東京慈恵会医科大学付属第三病院外科診療部長 2008年12月 東京慈恵会医科大学外科学講座准教授 2010年4月 東京慈恵会医科大学付属第三病院副院長

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