がん治療認定医が語る膵臓がん治療

公開日:2011年02月26日

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自覚症状が乏しく、発見が遅れやすい

膵臓は体の一番背中側の奥にあり、がんの発見が遅れやすい臓器です。多くの場合、背中の痛みや黄疸などで医療機関を受診し、がんが見つかりますが、それらの症状が表れる頃にはかなり進行していて、治療も難しい状況になっています。

膵臓は、「頭」「体」「尾」の3つに分かれた形をしており、頭の部分には胆管と膵管があり、十二指腸につながっています。この部分にがんができた場合は黄疸が表れます。しかし、「体」「尾」にがんができた場合は痛みしか症状が出ないため、非常に見つけにくいのです。

以前、「胃が痛い」と受診した40代男性の患者さんがいらっしゃいました。血液検査や内視鏡検査では異常がなく、念のためにエコーによる検査を行ったところ、大きな膵臓がんができていました。腫瘍マーカーを調べたら、数値も跳ね上がっている。それまでは全く普通に生活をしていたのに、急遽、入院しがん治療を始めることになりました。

膵臓がんは、エコーやCT、MRIなどを用いた丁寧な検査が重要なのです。

膵臓がんの転移形式とは

膵臓がんは、周囲の血管や神経に沿って転移し、高い確率で再発する特性があります。もっとも多い転移形式はリンパ節転移で、次が局所再発(元々の病巣のごく近くに再発)、肝転移、腹膜播種となります。腹膜播種とは、膵臓の表面からこぼれ落ちたがん細胞が、腹壁や横隔膜、腸の表面などで増殖することを言います。ちょうど甕が壊れて中の水がこぼれる様な転移形式です。肝転移や腹膜播種は、広範囲にわたってがん細胞が散っていますから、手術による原発巣の切除は難しいとされています。そのため、膵臓がんの再発・転移の治療は、往々にして化学療法が中心になります。前述の40代男性の患者さんのケースも、がん細胞が動脈に食い込んでしまっていたため手術は難しく、化学療法による治療になりました。もしも、肝転移や重要な血管、リンパ節への転移がない場合であれば、手術をすることも可能です。がんができた部位によって、膵頭十二指腸切除や、膵体尾部切除といった手術を行いますが、いずれも切除範囲が大きく、複雑な手術です。6〜8時間もの長時間に及ぶ大手術となることも多く、患者さんへの身体的負担は重くなります。また、一度は手術をしたものの病巣を完全に取り除くことができず、早い時期に再発してしまうこともあります。手術をしてから2~3カ月ほどでCT を撮り、肝臓や肺への転移が見つかることは珍しくないのです。

もっとも確立された治療は抗がん剤「ジェムザール」

膵臓がんの化学療法で、もっとも確立している薬は「ジェムザール」という抗がん剤です。

「ジェムザール」は、がんの増殖を押さえる作用があり、従来の抗がん剤より効果が強く、副作用が少ないと注目されています。点滴による投与が標準的で、週1回の点滴を3回繰り返したのち、1回休薬するという方法をとります。医療機関によっては、外来でも治療を受けられます。

「ジェムザール」単独の治療もありますが、手術と併用することもできます。予後が悪いと言われる膵臓がんですが、手術で病巣を取り除き、さらに補助療法として「ジェムザール」を使うことでよい方向に向かうというエビデンスもあります。「ジェムザール」のほかには「シスプラチン」という抗がん剤を使ったりします。

効果が期待できそうな「フサン」

最近では「フサン」という薬による治療も注目されてきました。「フサン」は、もともと人工透析に用いる抗凝固剤です。東京慈恵会医科大学の研究によると、フサンはヒト培養膵臓がん細胞におけるNF-κB活性を抑制し、同時にカスパーゼシグナル伝達を活性化することで、膵臓がん細胞のアポトーシスを誘導する作用があることが分かっています。さらに「フサン」は正常細胞に対する細胞毒性が少ないことも分かってきました。臨床に向けて基礎実験が行われている状況ですが、膵臓がんに対する標準治療薬であるジェムザールとの併用療法も膵がん治療のひとつの方法として期待できるかもしれません。

「フサン」は動脈から投与するため、患者さんの脚にポートを埋め込んで動脈に直接投与することになります。医師とよく相談し、症状や進行度に合った治療法を選んでください。

取材にご協力いただいたドクター

医療法人社団 トラストメディスン 城山ヒルズクリニック 院長  北 嘉昭先生

奈良県立医科大学卒業 医学博士
大阪大学医学部、東京大学医学部、JR東京総合病院、自冶医科大学、東京慈恵会医科大学を経て現在に至る。
外科専門医 がん治療認定医 消化器外科専門医 消化器病専門医 肝臓専門医 日本医師会認定産業医

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