【医療情勢 II 】がん患者さんが利用できる介護保険サービス

公開日:2014年10月01日

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がん患者さんのケアは介護保険の対象

 2025年頃には日本の高齢化率が非常に高くなると予測されています。人口動態に伴って医療制度の方針でも、ベッドでケアをする方向から、在宅で住み慣れた自宅で在宅ケアをする方向に進もうとしています。

「がん治療で入院しているのだけど、自宅療養に切り替えたい。介護保険をがんの治療中に使うことができるの?」そう疑問に思う方は多いことでしょう。介護保険は高齢者の介護に使うものといったイメージが強いと思われますが、2010年から、がんの患者さんの在宅療養でも介護保険を使うことができるようになっています。医師の診断で、がんの症状が進行したいわゆる末期状態と診断された方が対象となっています。

介護保険を利用すれば、訪問介護サービスや訪問看護サービスが1割負担で利用できるようになります。自宅で療養を考えている方にとっては知っておいた方が良い制度です。

通常、介護保険制度のサービスを受けるためには、要介護認定が必要となっています。この要介護認定には審査過程があり、申請してからサービスを受けるまでに少し時間がかかります。進行がんの患者さんですと、申請を待っている間に容体が悪化してしまうケースもあり、問題となっていました。こういった問題点を解決するために、厚生労働省から介護事業者に対して指導がされています。

現在は、要介護認定を申請した場合には、暫定ケアプランを作成してもらえることになっています。暫定ケアプランとは、実際の要介護認定を受けてサービスを開始する前に、暫定的なケアプランをスピーディーに作成してもらい、すぐに介護保険のサービスを開始できるための措置です。特に、入院している進行がんの方が、退院後に在宅に拠点を移す場合、入院中からの切れ目のないサービス提供を行えるように制度が整備されようとしています。

今年の7月に行われた第44回がん対策推進協議会では、進行がんの方などで、迅速な対応が必要と判断される方から要介護認定の申請があった場合には、その日の内に認定調査員が調査開始を実施し、ケアマネジャーが暫定ケアプランを作成して、すぐに介護サービスを開始するよう再度促されました。また通常のケアプランについても、同日のうちに認定調査を実施して、直近の介護認定審査会で二次判定を行って、要介護認定を迅速に行うことを促した資料が再提示されました。

 

末期がん等の方への要介護認定等における対応について

【第44回がん対策推進協議会の資料から(PDF:48.7MB)】

 

24時間体制で介護サービスを受けられる場合も

 通常の介護サービスは日中の時間帯に限られていますが、介護保険利用者の方が夜間でも自宅で安定した生活を送れるように、24時間体制でサービス提供が行われるように整備が進められています。このような制度を夜間対応型訪問介護といいます。

夜間対応型訪問介護には、「定期巡回」と「随時対応」と言われる2種類のサービスがあります。定期循環では、夜間の時間帯に定期的な訪問を受けることができます。排泄の介助や安否確認などが主なサービスです。

随時対応では、夜間に急に体調が悪くなった時などに、訪問介護のスタッフを呼んで介助を受けることができます。医療サービスが必要だった場合には、救急車の手配などをしてもらえるでしょう。 厚生労働省が運営する 介護事業所検索システム で、夜間に対応できる介護事業所を探すことができます。

 

介護保険は早めに申請しましょう

 がんの患者さんが介護保険を申請するためには、地域にある地域包括センターか、市区町村の介護保険担当課に申請が必要です。介護保険を利用するためには、主治医が作成する「主治医意見書」が必要になります。 暫定プランの作成を行う制度があるとは言え、なるべく早めに主治医に相談をしておき、地域包括支援センターの窓口にコンタクトをとっておくことで切れ目のない行政サポートを受けるための準備ができるでしょう。

入院している病院によっては、地域連携室などがあってソーシャルワーカーなどに相談できる場合もあると思います。地域連携室では、ケアマネジャーを紹介してくれることもあります。 現在、医療・介護を含む社会保障費は増大しています。現在の社会保障費は税収で賄えているわけではなく国債を発行してその負担を未来に先送りしています。この状態を解決するために社会保障・税一体改革が提唱されています。

医療・介護の分野では、「地域ごとに、医療、介護、予防に加え、本人の意向と生活実態に合わせて切れ目なく継続的に生活支援サービスや住まいも提供されるネットワーク(地域包括ケアシステム)の構築」の実現が提唱されています。いままでのような病院完結型から地域完結型へのシフトが始まっており、今後はより地域で支え合う仕組みが強化されていくでしょう。

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