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【医療情勢 】診療報酬改定でがん治療にも変化
目次
診療報酬改定は「医療の適正化を図る政策」
今年4月、診療報酬改定が行われます。2年に一度実施されるこの改定は、今後、重点を置きたい医療分野の点数(簡単に言えば医療機関の報酬)を調整することを目的として行われます。今回、改定の柱となったのは「医療機関の機能分化」であり、そこから「在宅医療の推進」へとつなげる連携の強化が根底にあります。
団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、急を要する患者さん(急性期)から、回復期、慢性期、在宅医療・介護まで、患者さんの状態に合わせた医療を充実させていくための個々の改定項目が多く盛り込まれています。
がん治療などの今後の患者数増が予測される疾患に対しては「充実が求められる分野」として、「適切な評価を行っていく」と基本方針の中で明記されています。がん治療に関する医療はどのようになっていくのでしょうか。以下、具体的な改定項目を挙げながら、説明を加えていきます。
がん治療における心理的、費用的な負担の軽減を図る
がん治療に関する改定項目には「緩和ケアを含むがん医療の推進」の中で、「がん患者さんへの指導などの充実」があります。これは、精神的なケアや抗がん剤の副作用などに対する指導・情報提供の重要性が高まっていることを踏まえた上での改定となります。
これまでは、医師と看護師が共同で治療方針などについての話し合いを行い、その内容を文書等で提供することへの評価のみでしたが、改定後は「医師または看護師による心理的不安を軽減するための面談」「医師または薬剤師による抗がん剤の必要性に対する文書を用いた説明」が新たに評価の対象として盛り込まれました。
この改定により、今後は、がん治療における患者さんのメンタルケアや、抗がん剤に対する情報提供がしっかり行われることが期待されています。
がんを告知された直後は、強い不安を感じるのは当然です。特に告知直後は大きな衝撃から立ち直れない状態が数日間続くと言われています。「どのような治療をされるのだろうか」、「治るのだろうか」、「治療費はどのくらいかかるのだろうか」「仕事は辞めなければいけないのか」など、さまざまな不安があるでしょう。
医療機関の中にはあまりこういったことに対応する機能を持っていないところもあったようです。点数をつけることで、広く多くの医療機関にもメンタル面のケアに対応してもらおうというのが狙いでしょう。
また、「先進医療からの保険導入」では、優先的に保険適用すべき医療技術のひとつに「腹腔鏡下子宮体がん根治手術」が挙げられています。同手術は開腹に比べ、術中の出血や術後の疼痛が非常に少なく、回復も早いため、結果的に早期の退院が可能です。
2014年2月の時点で、全国42の医療施設での実施が承認されており、現状では混合診療が適用され、手術費用で60万円前後かかりますが、4月以降は保険適用となるため、費用負担は大幅に減額されることが予想されます。
「平成26年度診療報酬改定の概要 平成26年2月12日版<未 定 稿 >(PDF : 2.42MB) より」
在宅医療が強化され、自宅でのがん治療の不安を軽減
今回の重点課題のひとつである「医療機能の分化等」では、「在宅医療の促進」が挙げられています。この中で「機能強化型在宅療養支援診療所等の評価」に対する見直しが行われました。
在宅医療を担当する常勤医師が3名以上確保されていない医療施設でも、「十分な緊急往診および在宅での看取りの実績を有する場合」について、「在宅がん医療総合診療」「緊急、夜間または深夜の診療」「ターミナルケア」などの「在宅療養実績」に対する評価が新しく設けられることになりました。いままで地域のために頑張っていた医師が少ない在宅系の診療所が評価されるのです。
「実績に応じた適切な評価を行う」という考えに基づいたこれらの改定により、在宅医療が強化されていくことで、これまで以上に「地域とのつながりを持ち続けながら治療に取り組める環境」が構築されていくことが期待されます。また、「住み慣れた自宅で最後を迎えたい」と望まれる方への理解と配慮も推進されていくことと思われます。
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, 医療制度・社会制度の活用
タグ2014年3月
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