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【QOL(生活の質)】認知症がん患者さんのケア
目次
高齢のがん患者さんは認知症を伴っている場合が少なくありません。認知症があると、がんの治療や闘病生活にさまざまな支障が出てくることが想定されます。認知症のがん患者さんを支えるために必要な視点と、具体的なサポート方法をまとめます。
65歳以上の約15%が認知症
65歳以上の認知症高齢者はおよそ462万人で、正常と認知症の中間にある軽度認知障害(MCI)は約400万人と言われています。これは65歳以上の約15%、つまり約7人に1人が認知症であることを示します。さらに2025年には約700万人に増加し、5人に1人が認知症になると予測されています。
一方で、日本人の2人に1人はがんになる時代です。認知症罹患率とがん罹患率の両者が上昇していることから、認知症を伴う高齢のがん患者さんは決して少なくないことがわかります。
認知症の患者さんは、理解力や判断力などの低下により、検査・診断や治療に支障を生じる恐れがあります。そのため、適切な治療が受けられるように周囲がサポートする必要があります。また、近年は外来で抗がん剤治療を受けるケースが多く、通院や副作用の対処などの支援も不可欠です。
患者さんの意思を尊重する支援
積極的な治療を行うのか、それとも痛みを抑えて残された時間を穏やかに過ごすことを優先するのか、どちらを選択するかは、患者さんにとって「生き方の選択」でもあります。だからこそ、患者さん本人の意思を尊重することが何よりも重要だと言えます。
ところが、認知症を伴うがん患者さんの場合、意思の尊重が難しい場合があります。では、どのように工夫すれば、認知症でも、一人の人間としての尊厳を失わないように支援ができるでしょうか。
軽度の認知症の場合には、適切な支援があれば患者さん本人の意思決定を尊重することができます。医師から説明を聞く際には家族など普段からサポートする人が同席し、患者さんが理解できるように援助しましょう。
例えば、簡単な言葉や馴染みのある表現を使って説明を繰り返し、文字や図で伝えると理解の一助になります。また、意思決定を聞くときには選択肢を二つに絞り、患者さんが「はい」または「いいえ」で答えられるようにしましょう。
認知症の症状が進むと、患者さん本人の代わりに家族が判断しなければならないケースも少なくありません。検査や治療についてわからないことがあれば、医師や看護師などに説明を求め、病状だけではなく、それぞれの選択肢のメリットとデメリット、選択後の予測なども含めて、しっかりと理解しましょう。
その上で、家族の介護力なども考慮しながら、患者さんが以前から話していたことや過去に残したメモ、周りの証言などをもとにして、できる限り患者さん本人の望みに添った決定を行うことが大切です。
認知症がん患者さんの服薬支援
近年は外来通院でがん治療を受ける人が増えていますが、服薬管理や治療に伴う副作用などのケアが求められます。認知症によって指示通りに服薬できないと、治療の効果が期待できなくなってしまいます。
確実に服薬するためには、「同じタイミングで飲む薬は一包化する」「“服薬ボックス”や“おくすりカレンダー”“服薬チェック表”などを使う」「訪問介護利用時に服薬、または服薬確認をする」などの方法があります。
また、あまり知られていませんが、在宅で療養し、通院困難な患者さんの場合には、医療保険を使った訪問薬剤指導を利用する方法もあります。実は、医療保険には、主治医の指示により、薬剤師が自宅に訪問する制度「在宅患者訪問薬剤管理指導」があるのです。
これは、薬剤師が患者さんの自宅に薬を配達する際に、残薬などを調べて服薬状況を把握し、きちんと薬が飲めているかどうか、副作用は出ていないかなどの確認をする制度です。問題がある場合には適切に服薬できるように指導し、こうした一連の結果は医師に報告します。
認知症がん患者さんの服薬問題を家族だけで解決しようと無理をしないで、主治医に相談して制度を利用することや、薬の専門職の力を借りることも大切です。
また、認知症のがん患者さんは、副作用があってもその苦痛を伝えられない恐れがあります。あらかじめ服用する薬にはどんな副作用の症状があるのかをサポーターが理解し、きめ細かな観察を行いましょう。患者さんから副作用の状況について聞きとる場合には、簡単な言葉や馴染みのある表現を使い、患者さんが「はい」または「いいえ」で答えられるように質問するなど、聞き方を工夫します。
緊急時の対応も重要な支援課題です。例えば「熱が出たら主治医にすぐ連絡をする」と指導されていても、認知症の患者さんはそうした判断や緊急対応が難しい場合があります。患者さんを支える家族や周囲の人が、あらかじめ主治医に緊急対応が必要な症状を聞き、具体的な対応策について指導を受けておきましょう。
がん患者さんの認知症治療
認知症の治療には、進行を遅らせる薬物療法があります。認知症と診断され、薬物療法が必要な場合に「アリセプト」「レミニール」などを処方されます。これらの認知症治療薬は、がんの治療に悪影響を与える可能性や、抗がん薬との相互作用などで問題が起きる可能性は少ないといわれています。
なお、認知症とすでに診断を受けている患者さんの場合には、がん治療の主治医にもその旨を伝えておきましょう。また、「もの忘れがひどい」「判断・理解力が衰えた」「場所・時聞がわからない」「人柄が変わった」「不安感が強い」「意欲がなくなった」などの症状がある場合は認知症が疑われます。
がん治療中の病院に「もの忘れ外来」などの認知症専門外来や、がんに関わる心の病気を診る「精神腫瘍科」があれば、そこで認知症について受診してください。通院先の病院で対応できない場合は、認知症に取り組む他院の精神腫瘍科に紹介してもらうのも1つの方法です。がん治療の妨げにならないように、認知症の確認をして早期治療につなげましょう。
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タグ2017年06月
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