【QOL(生活の質)】知っておきたいがん関連医療用語

公開日:2017年02月28日

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  がんの治療では医師をはじめ、看護師、薬剤師などさまざまな職種の医療従事者から説明を受けます。医療従事者の間で当たり前のように使われる専門用語は聞き慣れないものが多く、肝心なところがわからないと納得のいく治療を受けることが難しくなります。患者さんが自分の治療について理解を深め、また医療従事者とのコミュニケーションをより円滑にするためにも知っておくと便利と思われるがん関連医療用語をご紹介します。

エビデンス、EBM

  EBMはEvidence Based Medicine(エビデンス・ベースド・メディスン)のことで、科学的根拠(エビデンス)に基づく医療という意味です。最も科学的根拠の高いエビデンスレベル1から科学的根拠の低いエビデンスレベル6に分類されます。

科学的根拠としては、臨床試験の方法の1つであるランダム化比較試験を統計的に解析した結果が最もエビデンスレベルが高いとされています。ランダム化比較試験とは、被験者を、新たな治療薬の効果を検証したいグループと、(たとえば従来の治療薬を使う)比較対照グループに無作為(ランダム)に割り付けて、データが偏らないように行う試験のことです。

緩和ケア

 がんの患者さんの体や心のつらさを和らげ、その人らしさや日常生活を大切にする医療、ケアのことです。ホスピスなどでがん末期の症状を軽減することだけが緩和ケアではありません。早期がんの人も含め、がんと診断された時から緩和ケアは始まります。

国のがん対策推進基本計画では、「がん患者とその家族が可能な限り質の高い生活を送れるよう、緩和ケアが、がんと診断された時から提供されるとともに、診断、治療、在宅医療など様々な場面で切れ目無く実施される必要がある」となっています。

【関連・参考記事】

■がんの痛みを上手に伝えるために(2015年9月号)
/medical_contents/column/55756/

■緩和医療はがんと診断されたときから始まる(2015年1月号)
/medical_contents/column/50849/

生存率

 生存率は、がんと診断され治療が開始されてから一定期間経過して生存している人の割合のことで、治療効果を判定する最も重要かつ客観的な指標です。部位別生存率を比較する場合やがんの治療成績を表す指標として、5年生存率がよく用いられています。

国立がん研究センターが2月16日に公表した集計によると、全部位全臨床病期の5年相対生存率は69.4%でした。1997年の62.0%から徐々に改善している傾向がみられ、化学療法、放射線治療や早期発見技術の進歩が貢献していると考えられます。

奏効率、奏効期間

 抗がん剤など薬物療法の効果がみられた割合(奏効率)と期間(奏効期間)のことです。治療を実施した後にがん細胞が縮小もしくは消滅した患者の割合を示したもので、治療法の評価の基準として用いられます。治療後のがん細胞の状態は、次の4段階で評価されます。

CR(Complete Response):完全に腫瘍が消失している状態で、完全奏効ともいう
PR(Partial Response):腫瘍の大きさの和が30%以上縮小した状態で、部分奏効ともいう
SD(Stable Disease):腫瘍の大きさが変化しない状態
PD(Progressive Disease):腫瘍の大きさの和が20%以上増加かつ絶対値でも5mm以上増加した状態、もしくは新病変が出現

奏効率はあくまで治療効果の程度を示したものであり、治癒する確率ではありません。

播種

 播種とは、種がまかれるように体の中にバラバラとがんが広がることです。がん細胞が臓器の壁を突き破って、腹膜に広がることを腹膜播種といいます。腹膜播種が起きると、ステージ分類としては最も進展した状態と考えられます。腹膜にがん細胞が付着するといたるところに小さな転移巣が作られます。そのため、手術で取り除くことは困難で、抗がん剤による治療が基本となります。腹膜播種は胃がん、大腸がんなどでよく見られ、腹水がたまることもあります

免疫療法

  がんの三大療法(手術・放射線治療・化学療法)に加えて、「第四のがん治療」として注目されているのが免疫療法(免疫細胞療法)です。私たちの体には本来、がん細胞やウイルスなどの異物と戦う免疫能が備わっています。免疫療法は、免疫細胞の機能を高めてがん細胞を攻撃させる治療法です。がんを攻撃する免疫細胞を人工的に増やしたり、がんの目印を与えることで攻撃率を高めたりする方法があります。

最近では、がんによってブレーキがかかった免疫の攻撃力を回復させる「免疫チェックポイント阻害剤」も注目されています。免疫療法は、放射線治療や化学療法など他の治療と併用して受けることも可能で、全身状態の良い早い段階で治療することでより効果が期待できます。また、免疫療法は自身自身の免疫細胞を使って治療するので、副作用はほとんどなく、QOL(生活の質)の面でも期待されます。

臨床試験、治験

  臨床試験はヒトを対象に、新しい薬剤や治療法の安全性、有効性などを確認するために行われるテストのことです。治験は新薬の開発を目的として、これまで患者さんに使われたことのない新しい薬や、その病気では使われたことのない薬の安全性や有効性を調べるために行われる臨床試験のことです。

新薬として厚生労働省から承認を得ることを目的として、主に製薬企業によって行われます。これに対して医師が主体的に行う治験は医師主導型治験です。治験は患者さんにとっていち早く新しい治療法が受けられるというメリットがある半面、予期しない副作用が現れる可能性もあります。

【関連・参考記事】

■がんの臨床試験(2015年8月号)
/medical_support/clinical/55241/

セカンドオピニオン

 文字通り「第二の意見」という意味で、診断や治療法について、主治医以外の医師の意見を聞くことです。別の医師の意見を聞くことで、現在受けている治療が適切なのか、他に良い治療がないのかなど、患者さんがより納得のいく治療を受けることが可能になります。

セカンドオピニオンを聞いた後は、その意見を参考に主治医と改めて治療法について話し合うことが大切です。病院を替えるためにセカンドオピニオンを聞くことは本来の目的ではありません。また、主治医が外科医なら、放射線治療医や腫瘍内科医にセカンドオピニオンを求めることで、専門の異なる医師の見解を得ることができます。

標準治療、診療ガイドライン

 標準治療とは、臨床試験の結果など科学的根拠に基づいた観点で検討された、現時点で利用できる最良の治療法であり、一般に推奨される治療を意味します。また、最先端の治療が必ずしも最も優れているとは限らず、臨床試験で評価され、標準治療より優れていることが証明されれば、新たな「標準治療」となる可能性があります。標準治療を踏まえて、各学会などで作成された診療の指針が診療ガイドラインです。がんの種類によっては一般の方向けに診療ガイドラインを解説したものもあります。

分子標的薬

 がん細胞の表面にあるたんぱく質や遺伝子をターゲットとして効率よくがん細胞を攻撃する薬が分子標的薬です。最近、がん細胞が増殖や転移をするのは、異常な遺伝子からできた物質が影響を及ぼしていることがわかってきました。

分子標的薬は、ゲノム・分子レベルでがん細胞の特徴を認識し、がん細胞の増殖や転移に関与する特定の分子だけをピンポイントに攻撃するので、正常な細胞へのダメージが少なくなっています。従来のがんの治療薬に比べて副作用も少なく、患者さんの負担もより軽くなっています。

 

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